眠れる森の星空少年~あの日のキミ

夏目奈緖

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4-1 自宅訪問

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 5月23日、水曜日。18時半。 

 今日は早瀬のマンションへ遊びに行く。美味しいものを作ってくれるらしい。待ち合わせ場所は、いつもの京橋駅だ。道沿いにあるマリーズカフェで、珈琲を飲んで待っている。

 座っている一人掛けのソファーの足元には、ギターケースを置いてある。早瀬が聴きたがっているから持ってきた。マンションは防音工事がされているから、何時でも楽器を弾いてもいいと話していた。早瀬本人もヴァイオリンを弾いているそうだ。

「夏樹、大丈夫かなー。小食だもん。俺と正反対だよ……」  

 夏樹は熱を出したから大学を休んでいる。経済と宇宙科学のノートを頼まれた。普段は俺の方が見せてもらっているから、特に綺麗に取ってある。

 テーブルには、サンドイッチの空容器が置いてある。これから晩ご飯を食べるが影響はない。大食いだからだ。何か食べておく方が、胃が活発になり、さらに美味しく食べられる。

 「何だかんだ言ってよく、会うようになったな……」 

 早瀬と会うのは、先週の金曜日から毎日だ。段ボールに挟まって助けてもらった後から、頻繁に連絡が入るようになった。いつまで続くか分からない罰ゲームと、モップ事件。こんな理由がなくても構わないと思っている。友達としては、一緒にいて楽しい人だからだ。音楽の趣味が合うし、何かやらかしても笑ってくれる。ただし、恋愛感情には応えられない。

「あー、ラインが入った。げええええっ」

 経済学部の奥村先輩からラインが入った。新入生歓迎コンパが開かれて、奥村とはそこで出会った。面倒見が良くて、話しやすい人だと思った。寮の中で話しているうちに、通学途中でも一緒になることが増えた。そして、先月末に告白をされたから断った。それなのに、逃げられると燃えると言い出して、現在に至る。毎日デートの誘いを受けている状況だ。

 先週の金曜日に、早瀬から『どうして僕に言わなかったんだ?』と聞かれた。最初は相談しようと思った。桜木さんを追いかけていたから、奥村の言動が理解できるだろうと思ってのことだ。しかし、それはやめておいた。それをネタにして、苛められるに決まっているからだ。 

「ブロックすれば逆効果なんだろうな。ああー、来た……」 

 ガラスの向こうに早瀬の姿が見えた。道路に車が横付けされている。ギターが重いからだろう。いじめっ子なのに、優しいところもある。立ち上る前に早瀬が入ってきた。そして、置いてあるトレーを持った。片づけてくれようとしている。

「自分でするよ」
「もう片付けた。重かっただろう?大学まで迎えに行ったのに」 
「持ち運びは慣れているから平気だよ。ああー、自分で持つよ」 
「いいから。行こう」
「うん……」
「それも持つよ」
「いいってば。ああー」

 肩に掛けていたバッグを奪い取られてしまった。授業で使ったものが多くて重いのに、軽々と持っている。そして、ギターケースを持ち上げた後、もう片方の手で、俺の背中を押した。どれほど力があるのかと驚いた。

 こうして、早瀬から荷物を持たれるようになった。 俺には重いものを持たせたくないと言っている。その理由を聞くと、楽器をやっている以上、手を大事にして欲しいからということだった。それなら早瀬も同じだ。それを口にすると、笑って軽くかわされてしまった。 

「はい、どうぞ」 
「自分で開けるのにー」

 助手席のドアまで開けてくれた。 乗り込んだ俺のことを見ている彼の目は、優しいものだった。
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