眠れる森の星空少年~あの日のキミ

夏目奈緖

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 テーブルの上からは良い匂いがしている。匂いを嗅いでいると、早瀬が微笑んだ。彼と話すと楽しい。危ないことを言ったり体を密着させてきたりする人だが、彼のようになりたいと思った。

「悠人君。ご機嫌になったね」
「裕理さんと話すのが楽しいよ。同級生のノリとは違っててさ。俺に話を合わせているだろ?疲れない?」
「心配してくれているのか。大丈夫だよ。話を合わせている部分はあるけど、無理はしていない」
「そっか。カッコいいね。チャラいだけじゃないもんね」 
「俺がチャラい!?」 
「チャラいよ。知らなかったの?」
「自覚がないし、言われたことがない」 
「言わないと思うよ。ネガティブなことはさ。桜木さんにコンサートチケットのことで誘っている時とか、スマホを取った時とか、強引だと思ったよ。その後で、俺をご飯に誘っただろ。2回目に告白してきたし。チャラい男そのものだよーー」 
「誤解だよ。桜木君には友達としてふざけていた。悠人君にしか、こういう事をしていない」
「ふうん。そうなんだー?」

 このチャラらを、直して欲しいと思っている。イケメンぶりが半減しているからだ。珍しく、早瀬が焦っている。

「あ……」

 ペスカトーレをフォークで巻き付けていると、トマトソースが跳ねて指に付いてしまった。ナプキンで拭こうとすると、早瀬の手に遮られた。そして、テーブル越しに手を握られた。そして、指先が温かいものに包まれた。早瀬の口に中に含まれたからだ。驚いて離れようとすると、軽く噛みつかれた。

「……ええ?」
「悪い子にはお仕置きだ。俺は本気だ。また疑ったら、今のように噛みつくぞ」
「やめろって……」
「分かったか?返事は?」 
「分かったよ!」 
「返事は『はい』だ」 
「は、はい……」 

 早瀬の怒った顔を初めて見た。彼からすれば真剣だから、傷ついたことが分かった。しかし、ここまですることはない。恨みがましく睨みつけると、早瀬が小さく吹き出した。いじめっ子のような顔に変わっている。

「怖かっただろう」
「えー?」 
「たまには、こういうのもいいだろう?怖がっている君は可愛かったよ」 
「げええええっ」
「料理が冷めるから食べよう。早くしないと、コーヒー風呂が逃げるぞ?」
「この変質者!」
「また噛みつくぞ」
「ああ……」 

 あんなことをされたくないから、さっさと食べることにした。その後は普通に会話が出来て、コーヒー風呂へ向かうことが出来た。 
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