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ふと、体が硬直した。そして、唇が触れるか触れないかの距離にいる早瀬の体を押しのけて、後ずさりをした。椅子を後ろに引いて立ち上がったから、ガタンと音が立った。当然ながら早瀬に驚かれたが、心配そうな顔もされた。
「いきなり、ごめん!」
「いいよ、気にしなくて。怖かった?」
「違う!そんなんじゃないから」
怖くないから否定した。このままだと傷つけてしまう。どうしようかと思った。感情のコントロールができない。 墓穴を掘りまくって後悔しそうだ。
「今日は帰るよ。晩ご飯、ご馳走さま。後片付けしなくてごめん!次はちゃんとやるからね」
「帰さないよ」
「だって……」
このままここに居れば、何を口走るかも分からない。 早瀬のことを傷つけたくない。自分だって傷つきたくない。好きなのか?怖いのか? 寂しさからではなく、好きなのだと思う。
告白すればハッピーエンドを迎えるのに躊躇っているのは、出会ってからの期間が短すぎるからだ。こんなに早くに人を好きになるわけがない。寂しさを和らげてくれた人への勘違いだ。きっとそうだ。
(ループになって答えが見つからない。もう嫌だ。帰りたくない。終わりにしたくない。裕理さん……。助けて……)
キッチンから出ようとしているのに、それ以上、前に進まなかった。背後から抱きしめられているからだ。
「悠人君。こんな時間だ。今夜はここにいようね」
「ううん、帰るよ」
「どうして?俺のことは怖くないんだろう?」
「うん、怖くないけど……」
「だったら帰せない」
体に回された腕が一層、強くなった。背中からも腕からも体温が伝っている。温かくて居心地がいいから、いつまでも感じていたい。お互いの心臓の鼓動が伝わってくる。
それぞれが違うリズムを刻んでいたのに、だんだん同じになった。パニックになっている原因なのに、この人が一緒なら平気だと思ってしまった。矛盾している。
「落ち着いてきたようだね」
「うん。ゆ、ゆう……」
「今の俺は、君と同じように怖がっている。傷つけたからだ」
「裕理さん……」
「もう怖いことはしない」
どうやって、早瀬の顔を見ればいいだろう。俺は今、みっともない顔をしていると思う。こんなところを見せたくない。好きだと伝えているようなものだ。
早瀬から、自分もパニックになったのだと言われた。俺と同じなのだと分かり、胸が痛くなった。俺は早瀬の胸にすがった。小学生の頃、近所の子に苛められたのだと、祖母の胸にすがって泣いた時のように。あの時、祖母が言っていた言葉を思い出した。
(ゆっくり大きくなりなさい。苛めた子も同じなの。苛められた分だけ、人の痛みが分かる大人になれるのよ、か……)
すると、早瀬の体が小刻みに揺れているのが分かった。まさか泣いているのか? 心配になって振り向くと、吹き出して笑い出された。
「何で笑うんだよ!?」
「困った子だからだ」
怒っている俺にはお構いなしに、早瀬が笑い続けている。 なんだか馬鹿にされたような気分だ。こっちは戸惑っているのに、大人の余裕を見せつけられたからだ。
「なんだよ……」
「もう目が離せないよ」
今度は優しい力で腕の中に包み込まれた。すると、ささくれ立った心が治まり、心臓の鼓動まで静まった。そして、早瀬の手が俺の頭に触れた。 そして、ゆっくりと抱き寄せられて、頭を撫でられ始めた。メトロノームのような一定のリズムだ。1分間に何回刻むのだろう? そんなことを考えていると、大きく頭を撫でられた後、体を離された。
「悠人君はいい子だよ。そのままでいいからね。落ち着きがなくてもいい。実は繊細で真面目なことも分かっている。それが君だから。そんな悠人君のことが好きになったんだよ」
「うん……」
「明日はギター教室に参加するんだろう?早めに寝ておこう」
「うん……」
何も伝えることなく、早瀬の優しさに甘えた。そして、普段通りの賑やかな空気に戻された後、キッチンの後片付けを手伝って、同じベッドで寝転がった。
「いきなり、ごめん!」
「いいよ、気にしなくて。怖かった?」
「違う!そんなんじゃないから」
怖くないから否定した。このままだと傷つけてしまう。どうしようかと思った。感情のコントロールができない。 墓穴を掘りまくって後悔しそうだ。
「今日は帰るよ。晩ご飯、ご馳走さま。後片付けしなくてごめん!次はちゃんとやるからね」
「帰さないよ」
「だって……」
このままここに居れば、何を口走るかも分からない。 早瀬のことを傷つけたくない。自分だって傷つきたくない。好きなのか?怖いのか? 寂しさからではなく、好きなのだと思う。
告白すればハッピーエンドを迎えるのに躊躇っているのは、出会ってからの期間が短すぎるからだ。こんなに早くに人を好きになるわけがない。寂しさを和らげてくれた人への勘違いだ。きっとそうだ。
(ループになって答えが見つからない。もう嫌だ。帰りたくない。終わりにしたくない。裕理さん……。助けて……)
キッチンから出ようとしているのに、それ以上、前に進まなかった。背後から抱きしめられているからだ。
「悠人君。こんな時間だ。今夜はここにいようね」
「ううん、帰るよ」
「どうして?俺のことは怖くないんだろう?」
「うん、怖くないけど……」
「だったら帰せない」
体に回された腕が一層、強くなった。背中からも腕からも体温が伝っている。温かくて居心地がいいから、いつまでも感じていたい。お互いの心臓の鼓動が伝わってくる。
それぞれが違うリズムを刻んでいたのに、だんだん同じになった。パニックになっている原因なのに、この人が一緒なら平気だと思ってしまった。矛盾している。
「落ち着いてきたようだね」
「うん。ゆ、ゆう……」
「今の俺は、君と同じように怖がっている。傷つけたからだ」
「裕理さん……」
「もう怖いことはしない」
どうやって、早瀬の顔を見ればいいだろう。俺は今、みっともない顔をしていると思う。こんなところを見せたくない。好きだと伝えているようなものだ。
早瀬から、自分もパニックになったのだと言われた。俺と同じなのだと分かり、胸が痛くなった。俺は早瀬の胸にすがった。小学生の頃、近所の子に苛められたのだと、祖母の胸にすがって泣いた時のように。あの時、祖母が言っていた言葉を思い出した。
(ゆっくり大きくなりなさい。苛めた子も同じなの。苛められた分だけ、人の痛みが分かる大人になれるのよ、か……)
すると、早瀬の体が小刻みに揺れているのが分かった。まさか泣いているのか? 心配になって振り向くと、吹き出して笑い出された。
「何で笑うんだよ!?」
「困った子だからだ」
怒っている俺にはお構いなしに、早瀬が笑い続けている。 なんだか馬鹿にされたような気分だ。こっちは戸惑っているのに、大人の余裕を見せつけられたからだ。
「なんだよ……」
「もう目が離せないよ」
今度は優しい力で腕の中に包み込まれた。すると、ささくれ立った心が治まり、心臓の鼓動まで静まった。そして、早瀬の手が俺の頭に触れた。 そして、ゆっくりと抱き寄せられて、頭を撫でられ始めた。メトロノームのような一定のリズムだ。1分間に何回刻むのだろう? そんなことを考えていると、大きく頭を撫でられた後、体を離された。
「悠人君はいい子だよ。そのままでいいからね。落ち着きがなくてもいい。実は繊細で真面目なことも分かっている。それが君だから。そんな悠人君のことが好きになったんだよ」
「うん……」
「明日はギター教室に参加するんだろう?早めに寝ておこう」
「うん……」
何も伝えることなく、早瀬の優しさに甘えた。そして、普段通りの賑やかな空気に戻された後、キッチンの後片付けを手伝って、同じベッドで寝転がった。
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