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ぼーっとしていると、オーナーが微笑みながらスマホの写真を表示させて、植本さんと桜木さんに見せた。それは、俺と早瀬の自撮りだった。頬へキスをされた写真まであり、慌てて画面を手で覆い隠した。
「わあっ。これは!冗談で撮ったやつで……」
「早瀬君と悠人君は、付き合っているんだよ」
「違います!」
「照れなくてもいいよ」
オーナーのことを、初めて人が悪いと思ってしまった。桜木さんの反応が気になり視線を向けると、苦笑していた。またいじめられたのかと言いながらだった。しっかり俺のことをフォローしてくれた。気遣ってくれたのが分かり、申し訳なくなった。そういう優しさに触たことが嬉しい。でも、よりにもよって、こんな理由だなんて恥ずかしかった。すると、桜木さんが言った。
「悠人君のこと、早瀬さんは最初から好きだったんですよ」
「ええ?桜木さん……。最初って?モップだから……、わわっ」
「悠人君がバイトを始めた頃から、気になっていたそうだよ。それでも俺に声を掛けてきたからね、気が多い人だよ」
「やっぱり、何かあったんですね!」
俺の桜木さんが早瀬の毒牙に掛けられたのは、間違いなかったのか。そして、早瀬のことを庇っていたのだと知り、だんだんと早瀬に対して腹が立ってきた。それなのに、桜木さんには俺の気持ちが伝わらない。微笑まれてしまった。
「ヤキモチを妬かなくていいよ。ただの冗談だから。今は悠人君にゾッコンだし」
「いや、俺はその気は……」
ここで否定をしておかないと、面倒くさいことになってしまう。しかし、諦めずに否定し続けているのに、3人は笑っているだけだ。
「みんな、信じてくださいっ」
「ははは~」
「緑川さん。ユーリは良かったですね」
「ああ、そうだね」
「ユーリと佐久弥が別れた時は……、あいつが……」
(別れたって?あいつって?何か……)
空気が重くなったのは一瞬で、植本さんが言い終わらないうちに、オーナーが植本さんの肩を叩いた。そして、植本さんがハッとした表情になり、オーナーが軽く頷いた。
「そろそろお開きにしよう」
「悠人君、ごめん!ユーリと付き合っているのは冗談かと思っていたんだよ。あの2人は5年前に別れていて、今は関係がないはずだから……」
「え?」
「実はね……。悠人君と桜木君には話しておくよ……」
「ええ?」
オーナーと植本さんが、早瀬と佐久弥の話をしてくれた。そして、なんと、早瀬と佐久弥が付き合っていたことを知ってしまった。早瀬がバンドを脱退した時に別れたそうだ。植本さんと世間話が出来たことを喜ぶべきなのに、それが出来なかった。聞かされた意外な過去への戸惑いが大きいからだ。 早瀬がバンド活動をしていて、プロへの誘いを断ったことにも驚いた。しかしそれよりも、元恋人の存在を知ったことの戸惑いの方が大きい。
12歳も年上の人だから、過去に付き合った相手がいるに決まっている。おかしなことではない。それなのに、ショックを受けてしまった。佐久弥という人が、桜木さんと似ているからだ。だから桜木さんに声を掛けていたのかも知れないとまで思った。
佐久弥と桜木さんの外見のイメージが重なる。どちらも落ち着いた雰囲気だ。佐久弥のインタビュー動画を見た時も、似ていると思ったぐらいだ。頭の中で彼らを思い浮かべて、胸がチクチクと痛んだ。
(どうして俺のことを好きになったんだろう?佐久弥とは正反対なのに。桜木さんなら納得できるのに……)
自分の性格は自覚している。桜木さんとは真逆のタイプだ。好きだと伝えられる度に、疑問に思っていたことだ。それが証明されたようなものだ。やっぱり好きなタイプは違うはずだと思った。
「悠人君。大丈夫か?」
「早瀬さんは悠人君のことが大好きなんだよ?大丈夫だよ」
「あ……、すみませんでした」
いつの間にか無言になっていたことに気づいた。3人は嫌な顔をせずに、首を振っていた。 ホッとしていると、オーナーが3階の窓から外を覗いた。誰か下に居るらしい。
「そろそろ出よう。早瀬君が迎えに来ているよ」
「そうなんだ……」
早瀬の顔を見たくない。なんだか気まずい。でも、植本さんが早瀬に会いたがっているから、一緒に下へ降りて行った。
「わあっ。これは!冗談で撮ったやつで……」
「早瀬君と悠人君は、付き合っているんだよ」
「違います!」
「照れなくてもいいよ」
オーナーのことを、初めて人が悪いと思ってしまった。桜木さんの反応が気になり視線を向けると、苦笑していた。またいじめられたのかと言いながらだった。しっかり俺のことをフォローしてくれた。気遣ってくれたのが分かり、申し訳なくなった。そういう優しさに触たことが嬉しい。でも、よりにもよって、こんな理由だなんて恥ずかしかった。すると、桜木さんが言った。
「悠人君のこと、早瀬さんは最初から好きだったんですよ」
「ええ?桜木さん……。最初って?モップだから……、わわっ」
「悠人君がバイトを始めた頃から、気になっていたそうだよ。それでも俺に声を掛けてきたからね、気が多い人だよ」
「やっぱり、何かあったんですね!」
俺の桜木さんが早瀬の毒牙に掛けられたのは、間違いなかったのか。そして、早瀬のことを庇っていたのだと知り、だんだんと早瀬に対して腹が立ってきた。それなのに、桜木さんには俺の気持ちが伝わらない。微笑まれてしまった。
「ヤキモチを妬かなくていいよ。ただの冗談だから。今は悠人君にゾッコンだし」
「いや、俺はその気は……」
ここで否定をしておかないと、面倒くさいことになってしまう。しかし、諦めずに否定し続けているのに、3人は笑っているだけだ。
「みんな、信じてくださいっ」
「ははは~」
「緑川さん。ユーリは良かったですね」
「ああ、そうだね」
「ユーリと佐久弥が別れた時は……、あいつが……」
(別れたって?あいつって?何か……)
空気が重くなったのは一瞬で、植本さんが言い終わらないうちに、オーナーが植本さんの肩を叩いた。そして、植本さんがハッとした表情になり、オーナーが軽く頷いた。
「そろそろお開きにしよう」
「悠人君、ごめん!ユーリと付き合っているのは冗談かと思っていたんだよ。あの2人は5年前に別れていて、今は関係がないはずだから……」
「え?」
「実はね……。悠人君と桜木君には話しておくよ……」
「ええ?」
オーナーと植本さんが、早瀬と佐久弥の話をしてくれた。そして、なんと、早瀬と佐久弥が付き合っていたことを知ってしまった。早瀬がバンドを脱退した時に別れたそうだ。植本さんと世間話が出来たことを喜ぶべきなのに、それが出来なかった。聞かされた意外な過去への戸惑いが大きいからだ。 早瀬がバンド活動をしていて、プロへの誘いを断ったことにも驚いた。しかしそれよりも、元恋人の存在を知ったことの戸惑いの方が大きい。
12歳も年上の人だから、過去に付き合った相手がいるに決まっている。おかしなことではない。それなのに、ショックを受けてしまった。佐久弥という人が、桜木さんと似ているからだ。だから桜木さんに声を掛けていたのかも知れないとまで思った。
佐久弥と桜木さんの外見のイメージが重なる。どちらも落ち着いた雰囲気だ。佐久弥のインタビュー動画を見た時も、似ていると思ったぐらいだ。頭の中で彼らを思い浮かべて、胸がチクチクと痛んだ。
(どうして俺のことを好きになったんだろう?佐久弥とは正反対なのに。桜木さんなら納得できるのに……)
自分の性格は自覚している。桜木さんとは真逆のタイプだ。好きだと伝えられる度に、疑問に思っていたことだ。それが証明されたようなものだ。やっぱり好きなタイプは違うはずだと思った。
「悠人君。大丈夫か?」
「早瀬さんは悠人君のことが大好きなんだよ?大丈夫だよ」
「あ……、すみませんでした」
いつの間にか無言になっていたことに気づいた。3人は嫌な顔をせずに、首を振っていた。 ホッとしていると、オーナーが3階の窓から外を覗いた。誰か下に居るらしい。
「そろそろ出よう。早瀬君が迎えに来ているよ」
「そうなんだ……」
早瀬の顔を見たくない。なんだか気まずい。でも、植本さんが早瀬に会いたがっているから、一緒に下へ降りて行った。
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