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いつの間にか寝ていたようだ。目が覚めると、早瀬が俺の顔を覗き込んでいた。慌てて起き上がり、周りをキョロキョロと見回した。俺は淡いグリーンのカバーが掛けられているソファーで寝ていた。大きなテラス窓からは庭の木々が見える。ウサギとネコのぬいぐるみがあり、足元にはアンがいた。どこから見ても、夏樹の家だ。
「裕理さんのマンションじゃないよね?」
「黒崎家だよ」
「なんでここにいるんだよ?」
「迎えに来たんだ。さあ、帰るよ」
「嫌だよ!」
すぐに抵抗したのに、あっさりと捕まってしまった。おまけに抱き上げられて、荷物のように肩に担ぎあげられた。
「連れ去り!なつきー!」
「夏樹君は玄関にいるよ」
「どうして担ぐんだよ。降ろせよ!」
「この抱き方ならどう?」
「ひいいいっ」
腕の中で体制を変えられて視界が揺れた。思わず体を固くした後で安定した。恐る恐る目を開けると、早瀬から呆れ笑いをされていた。こんな顔をされる覚えはない。
「だめだだめだーー!」
「何もしないよ」
「一人で帰る!」
「初めての場所なのに?」
「地図アプリがあるから平気だよ」
「ははは」
何か言えば言うほど墓穴を掘ってしまう。それでも無言を貫くわけにはいかない。車に乗せられてしまえば、都合よく扱われるに決まっているからだ。
「はいはい。笑ったから怒ったんだね。いい子にしていたら笑わないよ」
「そうさせないのは誰だよ?」
「話がしたい。謝らせてくれ」
「あ……」
「悠人。好きなんだ」
「えーっと……」
どうしよう。胸がキュンとして痛くなった。俺のことを迎えに来てくれたから嬉しい気持ちと、苛立ちが混ざっている。早瀬が俺を抱いたままで器用に玄関を開けると、夏樹が荷物を持って待っていた。
「悠人君。悪い子にはお仕置きが必要だ。帰ってからしてあげるよ」
「離せよー」
さっきは大人しく帰ろうと思ったのに、その考えを変えた。お仕置きすると宣言されたからだ。どんなことをされるのか分かったものじゃない。
外に出た。深い色の車の近くに早瀬の黒い車が停まっていたから、往生際の悪さを披露した。ジタバタと暴れて門に縋りついた。背の高い柵だから、登るには時間がかかりそうだ。早瀬から抱きかかえられたが、柵に掴まって持ちこたえた。
「やだーっ」
「その門は機械式だよ。リモコンで作動する。観念しなさい」
「いやだ、乗らない」
「乗ってくれ。話がしたい」
「俺には話がないもん」
「悠人君にはなくていい」
「一人で帰るから。夏樹、門から出してよ」
「悠人、ここは大人になろうよ。早瀬さんの車に乗って出ないと、門は開けないよ」
夏樹が両腕を組んで、門の前で仁王立ちをしている。ここを通さないよ!と言われてしまい、泣きそうになった。
「なつきー、ひっく……」
「ゆうとー。俺は……」
「夏樹君。今は心を鬼にしてほしい」
「そうだね。そうするよ。……悠人、そういうことだから。ちゃんと2人で話し合おうね」
夏樹から抱きかかえられて、ズルズルと引きずられて、早瀬に引き渡された。こういう時こそ、おっとりして欲しいのに。さらに俺の体を早瀬から押さえ込まれてしまった。彼がいじめっ子の顔をしている。ちっとも優しくない。
「やだってば。行かない。帰る!」
「保育園児が嫌がっているように見えるよ?保育園の門の前で保育園児の子が、『行きたくない、帰る』って、駄々をこねている光景を見かけたことはないか?」
「あああ……」
本当にその通りだ。このままでは、柵の外から人に見られてしまう。迷惑にならないようにしないといけない。そんな俺のことを早瀬は理解しているから、さらに追い打ちを掛けられた。
「ゆうとくーん。恥ずかしいよね?お友達の前だよ?笑われるよー?」
「早瀬さん!?」
夏樹が驚いて目を丸くさせた。こういう意地悪な言い方をする早瀬を見るのは珍しいと言った。しかし、夏樹は切り替えが早いから、すぐに驚きを胸に納めて、俺の荷物を早瀬に渡した。
「夏樹君、ありがとう」
「どういたしまして、じゃあね~」
「あああ……」
俺は観念して、早瀬の車に乗り込んだ。パタンッ。恐ろしい音を立ててドアが閉まり、門が開いた。そして、俺達を乗せた車が発進された。
「裕理さんのマンションじゃないよね?」
「黒崎家だよ」
「なんでここにいるんだよ?」
「迎えに来たんだ。さあ、帰るよ」
「嫌だよ!」
すぐに抵抗したのに、あっさりと捕まってしまった。おまけに抱き上げられて、荷物のように肩に担ぎあげられた。
「連れ去り!なつきー!」
「夏樹君は玄関にいるよ」
「どうして担ぐんだよ。降ろせよ!」
「この抱き方ならどう?」
「ひいいいっ」
腕の中で体制を変えられて視界が揺れた。思わず体を固くした後で安定した。恐る恐る目を開けると、早瀬から呆れ笑いをされていた。こんな顔をされる覚えはない。
「だめだだめだーー!」
「何もしないよ」
「一人で帰る!」
「初めての場所なのに?」
「地図アプリがあるから平気だよ」
「ははは」
何か言えば言うほど墓穴を掘ってしまう。それでも無言を貫くわけにはいかない。車に乗せられてしまえば、都合よく扱われるに決まっているからだ。
「はいはい。笑ったから怒ったんだね。いい子にしていたら笑わないよ」
「そうさせないのは誰だよ?」
「話がしたい。謝らせてくれ」
「あ……」
「悠人。好きなんだ」
「えーっと……」
どうしよう。胸がキュンとして痛くなった。俺のことを迎えに来てくれたから嬉しい気持ちと、苛立ちが混ざっている。早瀬が俺を抱いたままで器用に玄関を開けると、夏樹が荷物を持って待っていた。
「悠人君。悪い子にはお仕置きが必要だ。帰ってからしてあげるよ」
「離せよー」
さっきは大人しく帰ろうと思ったのに、その考えを変えた。お仕置きすると宣言されたからだ。どんなことをされるのか分かったものじゃない。
外に出た。深い色の車の近くに早瀬の黒い車が停まっていたから、往生際の悪さを披露した。ジタバタと暴れて門に縋りついた。背の高い柵だから、登るには時間がかかりそうだ。早瀬から抱きかかえられたが、柵に掴まって持ちこたえた。
「やだーっ」
「その門は機械式だよ。リモコンで作動する。観念しなさい」
「いやだ、乗らない」
「乗ってくれ。話がしたい」
「俺には話がないもん」
「悠人君にはなくていい」
「一人で帰るから。夏樹、門から出してよ」
「悠人、ここは大人になろうよ。早瀬さんの車に乗って出ないと、門は開けないよ」
夏樹が両腕を組んで、門の前で仁王立ちをしている。ここを通さないよ!と言われてしまい、泣きそうになった。
「なつきー、ひっく……」
「ゆうとー。俺は……」
「夏樹君。今は心を鬼にしてほしい」
「そうだね。そうするよ。……悠人、そういうことだから。ちゃんと2人で話し合おうね」
夏樹から抱きかかえられて、ズルズルと引きずられて、早瀬に引き渡された。こういう時こそ、おっとりして欲しいのに。さらに俺の体を早瀬から押さえ込まれてしまった。彼がいじめっ子の顔をしている。ちっとも優しくない。
「やだってば。行かない。帰る!」
「保育園児が嫌がっているように見えるよ?保育園の門の前で保育園児の子が、『行きたくない、帰る』って、駄々をこねている光景を見かけたことはないか?」
「あああ……」
本当にその通りだ。このままでは、柵の外から人に見られてしまう。迷惑にならないようにしないといけない。そんな俺のことを早瀬は理解しているから、さらに追い打ちを掛けられた。
「ゆうとくーん。恥ずかしいよね?お友達の前だよ?笑われるよー?」
「早瀬さん!?」
夏樹が驚いて目を丸くさせた。こういう意地悪な言い方をする早瀬を見るのは珍しいと言った。しかし、夏樹は切り替えが早いから、すぐに驚きを胸に納めて、俺の荷物を早瀬に渡した。
「夏樹君、ありがとう」
「どういたしまして、じゃあね~」
「あああ……」
俺は観念して、早瀬の車に乗り込んだ。パタンッ。恐ろしい音を立ててドアが閉まり、門が開いた。そして、俺達を乗せた車が発進された。
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