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早瀬のことが好きだ。目の前に居る優しい人が手を差し伸べてくれた。寂しいから好きになったのだろうか。それでは失礼だ。しかし、寂しさからではないと分かっている。そして、それが分かった今、彼に自分も好きだと伝えたいと思った。しかし、やっぱりいつか居なくなるかも知れないという思いがよぎり、言葉に出せなくなってしまった。すると、早瀬が言った。
「君と同じ話をした人がいるよ」
「え?」
「その人は子供の頃に喘息で入院しても、両親が見舞いに来なかったそうだ。小さな手の甲に点滴の針を刺して待っていたのにね。もう刺すところが無かったからだよ。大人になった後は、沢山の人とデートしたのに、恋人を作らなかった。自分の前から居なくなるのが怖いから、遠ざけていたんだよ。でも、寂しがり屋だからね。誰かと一緒に居たくて、デートしていたんだ」
「今はどうなってるの?」
「幸せになっているよ。好きな子と恋人同士になれたけれど、最初の頃は心を開かなかった。それで、相手の子がノックするようにして、彼の心のドアを開けたんだ。お互いに勇気を出した結果、今は森の中の一軒家に暮らしている。お菓子の甘い匂いが漂っている家だよ。おとぎの国の世界みたいな家でも、現実だよ」
「そんな家があるわけ?」
「さっき君が眠っていた家のことだよ。悪い魔法使いと男の子が住んでいる家だ」
夏樹と黒崎さんのことだと思った。喘息で入院していた子は黒崎さんのことで、心のドアを開けたのは夏樹だ。あの家は居心地が良くて、温かい空気に包まれていた。彼らと比べて、俺はどうなんだろう。いつも中途半端な自分がいる。何をやっても挫折した。褒めてもらえなくて足掻いていた。やっと父親から褒められたのが、大学へ合格した日だった。大嫌いな人なのに、褒めてもらいたいと望んでいた。こんな矛盾だらけでは、何も出来ない。早瀬のことを好きになる資格がない。
「努力して今の家があるんだね……。俺には出来ないよ」
「悠人君」
「できないよ」
「俺を家族にしてくれないかな?朝起きた時に寝顔がある。一緒に食事をして、寝る時もそばにいたい」
「家族?」
「そうだよ。恋人同士が嫌なら家族だ」
「……っ」
「俺も寂しがり屋だよ。初めて楽器店で会った時から、気になっていた。駅で、君に似た子を見かけたことがあった。違う子だったのに、その駅を使っているのかと思って、探したこともあった。こんな事をしたのは初めてだ」
「裕理さん……」
「がっかりさせない。大事にする」
「俺は落ち着きないよ?」
「そういうところも好きだ」
どうしよう。めちゃくちゃ嬉しい。しかし、YESという返事がしたいのに、涙と鼻水が邪魔している。そして、何度目かの信号に差し掛かり、また赤信号で車が停車した。早瀬が俺の涙を拭いてくれた。その間、みっともないぐらい嗚咽が漏れている。鼻水まで垂れてきてしまった。すると、笑い声を立てた早瀬が、ティッシュを差し出してくれた。
「ありがとう。ひっく、うぇ……っ」
「拭いてあげるから、こっちを向いてごらん」
「汚いから……」
「家族だから平気だ。そうだろう?」
「うん……」
心臓の鼓動をバクバクさせながら頷いた。もっと近づきたいのに、シートベルトが邪魔している。信号もいつ変わるか分からない。すると、早瀬が言った。
「キスしたいけど、ここじゃ怒るよね?」
「怒らないよ」
「本当に?」
「泣いているけど……、それでもいいなら」
「喜んで……」
早瀬の唇が近づいて来たが、もう逃げない。ドキドキしていると、優しく重なった。そして、ほんの少しだけ離れた後、至近距離で見つめられた。
「次の場所を探せない。悠人君を俺の居場所にしてほしい」
「うん……。あああ……」
恋人であり、家族になりたい。それを俺はOKした。するとその時だ。ビビーッ!後ろの車からクラクションを鳴らされた。フロントガラス越しに見える信号が青に変わっていた。
照れくさくなって笑い合った後、早瀬が運転席へ戻った。そして、今夜のデートの場所へ向かった。好きだと伝えないままだった。
「君と同じ話をした人がいるよ」
「え?」
「その人は子供の頃に喘息で入院しても、両親が見舞いに来なかったそうだ。小さな手の甲に点滴の針を刺して待っていたのにね。もう刺すところが無かったからだよ。大人になった後は、沢山の人とデートしたのに、恋人を作らなかった。自分の前から居なくなるのが怖いから、遠ざけていたんだよ。でも、寂しがり屋だからね。誰かと一緒に居たくて、デートしていたんだ」
「今はどうなってるの?」
「幸せになっているよ。好きな子と恋人同士になれたけれど、最初の頃は心を開かなかった。それで、相手の子がノックするようにして、彼の心のドアを開けたんだ。お互いに勇気を出した結果、今は森の中の一軒家に暮らしている。お菓子の甘い匂いが漂っている家だよ。おとぎの国の世界みたいな家でも、現実だよ」
「そんな家があるわけ?」
「さっき君が眠っていた家のことだよ。悪い魔法使いと男の子が住んでいる家だ」
夏樹と黒崎さんのことだと思った。喘息で入院していた子は黒崎さんのことで、心のドアを開けたのは夏樹だ。あの家は居心地が良くて、温かい空気に包まれていた。彼らと比べて、俺はどうなんだろう。いつも中途半端な自分がいる。何をやっても挫折した。褒めてもらえなくて足掻いていた。やっと父親から褒められたのが、大学へ合格した日だった。大嫌いな人なのに、褒めてもらいたいと望んでいた。こんな矛盾だらけでは、何も出来ない。早瀬のことを好きになる資格がない。
「努力して今の家があるんだね……。俺には出来ないよ」
「悠人君」
「できないよ」
「俺を家族にしてくれないかな?朝起きた時に寝顔がある。一緒に食事をして、寝る時もそばにいたい」
「家族?」
「そうだよ。恋人同士が嫌なら家族だ」
「……っ」
「俺も寂しがり屋だよ。初めて楽器店で会った時から、気になっていた。駅で、君に似た子を見かけたことがあった。違う子だったのに、その駅を使っているのかと思って、探したこともあった。こんな事をしたのは初めてだ」
「裕理さん……」
「がっかりさせない。大事にする」
「俺は落ち着きないよ?」
「そういうところも好きだ」
どうしよう。めちゃくちゃ嬉しい。しかし、YESという返事がしたいのに、涙と鼻水が邪魔している。そして、何度目かの信号に差し掛かり、また赤信号で車が停車した。早瀬が俺の涙を拭いてくれた。その間、みっともないぐらい嗚咽が漏れている。鼻水まで垂れてきてしまった。すると、笑い声を立てた早瀬が、ティッシュを差し出してくれた。
「ありがとう。ひっく、うぇ……っ」
「拭いてあげるから、こっちを向いてごらん」
「汚いから……」
「家族だから平気だ。そうだろう?」
「うん……」
心臓の鼓動をバクバクさせながら頷いた。もっと近づきたいのに、シートベルトが邪魔している。信号もいつ変わるか分からない。すると、早瀬が言った。
「キスしたいけど、ここじゃ怒るよね?」
「怒らないよ」
「本当に?」
「泣いているけど……、それでもいいなら」
「喜んで……」
早瀬の唇が近づいて来たが、もう逃げない。ドキドキしていると、優しく重なった。そして、ほんの少しだけ離れた後、至近距離で見つめられた。
「次の場所を探せない。悠人君を俺の居場所にしてほしい」
「うん……。あああ……」
恋人であり、家族になりたい。それを俺はOKした。するとその時だ。ビビーッ!後ろの車からクラクションを鳴らされた。フロントガラス越しに見える信号が青に変わっていた。
照れくさくなって笑い合った後、早瀬が運転席へ戻った。そして、今夜のデートの場所へ向かった。好きだと伝えないままだった。
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