86 / 126
7-15
しおりを挟む
20時30分。
湾岸線沿いをドライブした後、レストランで食事をしている。さっき車の中で、早瀬と恋人同士になったばかりだ。友達から聞いたことがあるデートの話を思い出した。参考になる話はあるだろうか。デートで何を話せば良いのか分からない。俺は女の子とのデートを想像して話を聞いていたから、現実は勝手が違う。
(男とのデートは分からないんだよ。どうしよう……)
今夜はフレンチだ。今、肉のローストを口に運んでいる。早瀬の唇が開くたびに、視線が釘付けになってしまう。
(あの唇とキスをしたんだ。この先、もっとされるんだよね。唇以外にも。わわわっ。何を想像してるんだよ……)
恋人同士だから、そういう展開が訪れる。覚悟を決めているし、男同士の場合の知識について、多少は持っている。さっき車の中で、ネットで調べておいた。しかし、デートでの振舞い方は載っていなかった。女の子が彼氏にもたれ掛かる等、そういうものなら載っていて読んだ。しかし、俺達には当てはまらない。年の差カップルについてのページもあったが、まだ読んでいない。
「どうしたんだ?食欲がない?」
「たまにはゆっくり味わって食べようと思って……」
和牛のグリルにフォークを刺した。口に運んでも金属の感触しかない。まさかと思い視線を下げると、何も刺さっていなかった。必死に誤魔化してフォークに刺そうとすると、付け合わせのアスパラに当たって、テーブルの下に転がりそうになった。まるで、デートの失敗談の見本のようだ。
「悠人君。落ち着かないね」
「恋人ができるのは初めてなんだよ。どうしていいのか分からないよ」
「いつもと同じでいい」
「裕理さんは変わらないよね。恋人になったのに。どうして?」
「一緒に過ごすことには、変わりがないからだよ」
「どうして?俺は受け入れたのに。嬉しくないわけ?」
「嬉しかったよ」
「どうして、アッサリしているんだよ?」
「どうしてだろうね~?」
早瀬が肩を揺らして笑い始めた。なんだかイラついてきた。せっかく前に進んだのに苛められるのは変わりないからだ。イチャつくものだと思っていたのに。俺は苛立ちを隠すために、食べることに集中することにした。このままだと、カッコ悪いところを見せるだけだ。
「大人しいね。その野菜は嫌いだったのか?」
「ううん。美味しいよ。嫌いなのは、ラディッシュだけだよ」
「それなら元気を出そう」
「元気だってば」
「しかたないな」
早瀬の腕が伸びて来て、俺の左手を取った。また噛みつかれると思って、咄嗟に手を引っ込めようとしても無駄だった。早瀬の口元に手を添えられたからだ。
「噛みつくなよっ」
「そんな意地悪はしない」
俺の指が早瀬の唇に触れた。そして、痛みを覚悟していると、背中と手がゾクっと震えた。
「舐めているの!?」
「そうだよ」
「ひいいいっ」
「個室だから気にならないだろう?悠人君が望んでいる『恋人同士』のことをやっている」
「もう……っ」
「だめだよ。大人同士だ」
さらに早瀬の舌が動いた。伏せていた目を開くと、早瀬が視線を向けてきた。そして、逸らせる間もなく捕らえられて、視線が絡み合った。俺には刺激が強すぎる。恋人同士になれば平気だと思っていたのに違うと思った。関節まで舌先で舐められて、感触が変わるたびに背中がゾクっとした。
「ふえっ」
「もっと?」
「やめてよ」
「これは?」
「んん、はあっ。ええ?」
今の自分から出た声に驚き、一気に顔が熱くなった。こんな感じの声を聞いたことがあるからだ。友達に見せてもらったエロい動画だ。実際に自分がああなっているのか。
「ひいいいっ」
「ほらね。まだ大人同士は難しいだろう?」
「そうだけど……、でも……」
「恋人と家族の間ぐらいに思えばいい。ゆっくり進める。当分はキスしかしない」
「ええ?」
「悠人君が期待している展開は、お預けだ。もっと時間をかける。お互いのことを知りたいと言っていただろう?」
「恋人同士になったのに……」
「君のことを大事にしたい」
「分かったよ……」
「返事は『はい』だ」
「はい……」
しぶしぶ返事をした。触られるだけで胸がドキドキするが、もっと近づきたいと思った。否定していた気持ちを認めて受け入れたのに。覚悟を決めたのにと思った。
「そのローストを食べないのか。俺が食べるぞ」
「まだ食べているから。あああ……」
「いつも通りに振舞っている理由は、まだ君には早いからだよ。悠人君はお子様だからね~?まだ大人のことは早いですよ~?よしよし、撫でてあげようか?」
「子供扱いするなよっ」
「はいはい。検討しておくよ」
早瀬が笑った。そして、いつものような雰囲気に戻り、他愛のない話をしながら食事をした。
湾岸線沿いをドライブした後、レストランで食事をしている。さっき車の中で、早瀬と恋人同士になったばかりだ。友達から聞いたことがあるデートの話を思い出した。参考になる話はあるだろうか。デートで何を話せば良いのか分からない。俺は女の子とのデートを想像して話を聞いていたから、現実は勝手が違う。
(男とのデートは分からないんだよ。どうしよう……)
今夜はフレンチだ。今、肉のローストを口に運んでいる。早瀬の唇が開くたびに、視線が釘付けになってしまう。
(あの唇とキスをしたんだ。この先、もっとされるんだよね。唇以外にも。わわわっ。何を想像してるんだよ……)
恋人同士だから、そういう展開が訪れる。覚悟を決めているし、男同士の場合の知識について、多少は持っている。さっき車の中で、ネットで調べておいた。しかし、デートでの振舞い方は載っていなかった。女の子が彼氏にもたれ掛かる等、そういうものなら載っていて読んだ。しかし、俺達には当てはまらない。年の差カップルについてのページもあったが、まだ読んでいない。
「どうしたんだ?食欲がない?」
「たまにはゆっくり味わって食べようと思って……」
和牛のグリルにフォークを刺した。口に運んでも金属の感触しかない。まさかと思い視線を下げると、何も刺さっていなかった。必死に誤魔化してフォークに刺そうとすると、付け合わせのアスパラに当たって、テーブルの下に転がりそうになった。まるで、デートの失敗談の見本のようだ。
「悠人君。落ち着かないね」
「恋人ができるのは初めてなんだよ。どうしていいのか分からないよ」
「いつもと同じでいい」
「裕理さんは変わらないよね。恋人になったのに。どうして?」
「一緒に過ごすことには、変わりがないからだよ」
「どうして?俺は受け入れたのに。嬉しくないわけ?」
「嬉しかったよ」
「どうして、アッサリしているんだよ?」
「どうしてだろうね~?」
早瀬が肩を揺らして笑い始めた。なんだかイラついてきた。せっかく前に進んだのに苛められるのは変わりないからだ。イチャつくものだと思っていたのに。俺は苛立ちを隠すために、食べることに集中することにした。このままだと、カッコ悪いところを見せるだけだ。
「大人しいね。その野菜は嫌いだったのか?」
「ううん。美味しいよ。嫌いなのは、ラディッシュだけだよ」
「それなら元気を出そう」
「元気だってば」
「しかたないな」
早瀬の腕が伸びて来て、俺の左手を取った。また噛みつかれると思って、咄嗟に手を引っ込めようとしても無駄だった。早瀬の口元に手を添えられたからだ。
「噛みつくなよっ」
「そんな意地悪はしない」
俺の指が早瀬の唇に触れた。そして、痛みを覚悟していると、背中と手がゾクっと震えた。
「舐めているの!?」
「そうだよ」
「ひいいいっ」
「個室だから気にならないだろう?悠人君が望んでいる『恋人同士』のことをやっている」
「もう……っ」
「だめだよ。大人同士だ」
さらに早瀬の舌が動いた。伏せていた目を開くと、早瀬が視線を向けてきた。そして、逸らせる間もなく捕らえられて、視線が絡み合った。俺には刺激が強すぎる。恋人同士になれば平気だと思っていたのに違うと思った。関節まで舌先で舐められて、感触が変わるたびに背中がゾクっとした。
「ふえっ」
「もっと?」
「やめてよ」
「これは?」
「んん、はあっ。ええ?」
今の自分から出た声に驚き、一気に顔が熱くなった。こんな感じの声を聞いたことがあるからだ。友達に見せてもらったエロい動画だ。実際に自分がああなっているのか。
「ひいいいっ」
「ほらね。まだ大人同士は難しいだろう?」
「そうだけど……、でも……」
「恋人と家族の間ぐらいに思えばいい。ゆっくり進める。当分はキスしかしない」
「ええ?」
「悠人君が期待している展開は、お預けだ。もっと時間をかける。お互いのことを知りたいと言っていただろう?」
「恋人同士になったのに……」
「君のことを大事にしたい」
「分かったよ……」
「返事は『はい』だ」
「はい……」
しぶしぶ返事をした。触られるだけで胸がドキドキするが、もっと近づきたいと思った。否定していた気持ちを認めて受け入れたのに。覚悟を決めたのにと思った。
「そのローストを食べないのか。俺が食べるぞ」
「まだ食べているから。あああ……」
「いつも通りに振舞っている理由は、まだ君には早いからだよ。悠人君はお子様だからね~?まだ大人のことは早いですよ~?よしよし、撫でてあげようか?」
「子供扱いするなよっ」
「はいはい。検討しておくよ」
早瀬が笑った。そして、いつものような雰囲気に戻り、他愛のない話をしながら食事をした。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】初恋は檸檬の味 ―後輩と臆病な僕の、恋の記録―
夢鴉
BL
写真部の三年・春(はる)は、入学式の帰りに目を瞠るほどのイケメンに呼び止められた。
「好きです、先輩。俺と付き合ってください」
春の目の前に立ちはだかったのは、新入生――甘利檸檬。
一年生にして陸上部エースと騒がれている彼は、見た目良し、運動神経良し。誰もが降り向くモテ男。
「は? ……嫌だけど」
春の言葉に、甘利は茫然とする。
しかし、甘利は諦めた様子はなく、雨の日も、夏休みも、文化祭も、春を追いかけた。
「先輩、可愛いですね」
「俺を置いて修学旅行に行くんですか!?」
「俺、春先輩が好きです」
甘利の真っすぐな想いに、やがて春も惹かれて――。
ドタバタ×青春ラブコメ!
勉強以外はハイスペックな執着系後輩×ツンデレで恋に臆病な先輩の初恋記録。
※ハートやお気に入り登録、ありがとうございます!本当に!すごく!励みになっています!!
感想等頂けましたら飛び上がって喜びます…!今後ともよろしくお願いいたします!
※すみません…!三十四話の順番がおかしくなっているのに今更気づきまして、9/30付けで修正を行いました…!読んでくださった方々、本当にすみません…!!
以前序話の下にいた三十四話と内容は同じですので、既に読んだよって方はそのままで大丈夫です! 飛んで読んでたよという方、本当に申し訳ございません…!
※お気に入り20超えありがとうございます……!
※お気に入り25超えありがとうございます!嬉しいです!
※完結まで応援、ありがとうございました!
陰キャな俺、人気者の幼馴染に溺愛されてます。
陽七 葵
BL
主人公である佐倉 晴翔(さくら はると)は、顔がコンプレックスで、何をやらせてもダメダメな高校二年生。前髪で顔を隠し、目立たず平穏な高校ライフを望んでいる。
しかし、そんな晴翔の平穏な生活を脅かすのはこの男。幼馴染の葉山 蓮(はやま れん)。
蓮は、イケメンな上に人当たりも良く、勉強、スポーツ何でも出来る学校一の人気者。蓮と一緒にいれば、自ずと目立つ。
だから、晴翔は学校では極力蓮に近付きたくないのだが、避けているはずの蓮が晴翔にベッタリ構ってくる。
そして、ひょんなことから『恋人のフリ』を始める二人。
そこから物語は始まるのだが——。
実はこの二人、最初から両想いだったのにそれを拗らせまくり。蓮に新たな恋敵も現れ、蓮の執着心は過剰なモノへと変わっていく。
素直になれない主人公と人気者な幼馴染の恋の物語。どうぞお楽しみ下さい♪
今日もBL営業カフェで働いています!?
卵丸
BL
ブラック企業の会社に嫌気がさして、退職した沢良宜 篤は給料が高い、男だけのカフェに面接を受けるが「腐男子ですか?」と聞かれて「腐男子ではない」と答えてしまい。改めて、説明文の「BLカフェ」と見てなかったので不採用と思っていたが次の日に採用通知が届き疑心暗鬼で初日バイトに向かうと、店長とBL営業をして腐女子のお客様を喜ばせて!?ノンケBL初心者のバイトと同性愛者の店長のノンケから始まるBLコメディ
※ 不定期更新です。
雪解けを待つ森で ―スヴェル森の鎮魂歌(レクイエム)―
なの
BL
百年に一度、森の魔物へ生贄を捧げる村。
その年の供物に選ばれたのは、誰にも必要とされなかった孤児のアシェルだった。
死を覚悟して踏み入れた森の奥で、彼は古の守護者である獣人・ヴァルと出会う。
かつて人に裏切られ、心を閉ざしたヴァル。
そして、孤独だったアシェル。
凍てつく森での暮らしは、二人の運命を少しずつ溶かしていく。
だが、古い呪いは再び動き出し、燃え盛る炎が森と二人を飲み込もうとしていた。
生贄の少年と孤独な獣が紡ぐ、絶望の果てにある再生と愛のファンタジー
Take On Me
マン太
BL
親父の借金を返済するため、ヤクザの若頭、岳(たける)の元でハウスキーパーとして働く事になった大和(やまと)。
初めは乗り気でなかったが、持ち前の前向きな性格により、次第に力を発揮していく。
岳とも次第に打ち解ける様になり…。
軽いノリのお話しを目指しています。
※BLに分類していますが軽めです。
※他サイトへも掲載しています。
男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。
【完結】抱っこからはじまる恋
* ゆるゆ
BL
満員電車で、立ったまま寄りかかるように寝てしまった高校生の愛希を抱っこしてくれたのは、かっこいい社会人の真紀でした。接点なんて、まるでないふたりの、抱っこからはじまる、しあわせな恋のお話です。
ふたりの動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵もあがります。
YouTube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。
プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったら!
完結しました!
おまけのお話を時々更新しています。
BLoveさまのコンテストに応募しているお話を倍以上の字数増量でお送りする、アルファポリスさま限定版です!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
回転木馬の音楽少年~あの日のキミ
夏目奈緖
BL
包容力ドS×心優しい大学生。甘々な二人。包容力のある攻に優しく包み込まれる。海のそばの音楽少年~あの日のキミの続編です。
久田悠人は大学一年生。そそっかしくてネガティブな性格が前向きになれればと、アマチュアバンドでギタリストをしている。恋人の早瀬裕理(31)とは年の差カップル。指輪を交換して結婚生活を迎えた。悠人がコンテストでの入賞等で注目され、レコード会社からの所属契約オファーを受ける。そして、不安に思う悠人のことを、かつてバンド活動をしていた早瀬に優しく包み込まれる。友人の夏樹とプロとして活躍するギタリスト・佐久弥のサポートを受け、未来に向かって歩き始めた。ネガティブな悠人と、意地っ張りの早瀬の、甘々なカップルのストーリー。
<作品時系列>「眠れる森の星空少年~あの日のキミ」→「海のそばの音楽少年~あの日のキミ」→本作「回転木馬の音楽少年~あの日のキミ」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる