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すると、遠藤さんが俺の指を見始めた。俺の手にはタコがある。ギターの弦を押さえる場所にできるものだ。早瀬も出会ったときに俺の指を見ていた。遠藤さんも楽器を演奏するのだろうか。
「指にタコがあるね。楽器をやっているだろう」
「はい。高校2年生から、エレキギターを弾いています。今のバンドではベースです」
「へえ。ジャンルは?」
「ハードロックとヘヴィメタルです」
「そうか。大御所だと……、イングー、ハロウィズは聴いた?」
「もちろんです!イングーからギターに入ったんです。早弾きが凄いなって。遠藤さんはレコード会社の人だから、色んなジャンルをご存知なんですね」
「20年前まで、バンドの発掘もやっていたんだよ。アマチュアのコンテストや、ロックフェスへも出向いたよ。どこかへ出ないのか?」
ここで話してみようか。ベテランだけが通過するコンテストに出ることを。自分の力ではなく、桜木さんと並川さんの名前のおかげだが、胸を張ってみたいと思った。
「8月にある、ミライ・アマチュアバンドコンテストに出ます」
「ミライに出るのか、ベテランだね」
「桜木さんと同じバンドですから……」
「なるほど。彼と一緒なら相当な腕前だね。まだ初めて2年だろう?前にいたバンド名は?知らないかもと思わずに、教えてほしい」
「はい!」
俺がバンド名を言うと、遠藤さんが思案顔になった。そして、いくつか名前を呟いた後、ぱっと表情を明るくさせた。
「ミッシュアップ・フェスに出ていなかったか?」
「はい。出ていました。賞は取れませんでしたけど……」
「あのギターの子か!覚えているよ。高校2年生の子だったと、終わった後に聞いたよ。ブルースをハードロックに編曲したフレーズを弾いていたよね?上手かったから、印象に残っている」
「わわわ……っ」
どうしてここまで知っているのだろう。驚きながらも、嬉しさで胸がいっぱいになった。すると、遠藤さんが俺の手を取り、タコになった部分に触れた。
「かなり弾き込んでいるね。頑張っているじゃないか。スクールには通っているのか?」
「いえ、通っていません。植本さんのギター教室には参加しました」
「お父さんに話してあげるといい」
「あまり理解がないので……」
「そうか。親から理解されないのは、よくある話だ」
「先輩からも聞いたことがあります」
「音楽をやることはいいことだ。後ろめたくない」
「はい。頭が堅くて……」
「はははは」
父の話題が出るだけで憂鬱な気分になるはずなのに、遠藤さんと一緒に笑い飛ばすことができた。これは悪い魔法使いに掛けられた、あの呪いが解けたからだろうか?それだけではないだろう。自分自身に呪いを掛けていたからだ。父だけのせいではない。出来ないかもしれないと思い込んでいたのは、自分自身だ。もう小さな子ではない。前へ進んで、新しい景色を見たくなった。
「悠人君、2匹が遊びに誘っているよ」
「ホントだ、走って来ますね。おいでーー!」
俺が走り出すと、アンとリクが追いかけて来た。そのまま畑の周りで走り回っていると、アンが木の幹を見つめていた。そこに黒い虫を発見して、大きな悲鳴を上げてしまった。
「ええ!?わーーーーっ」
「悠人!?ああー、これか~」
夏樹に抱きついて助けを求めると、様子を見に行ってくれた。そして、大丈夫だよと手招きされた。しかし、黒いヤツがいるのが見えた。
「悠人、それは……」
「ひいいいっ」
「キッチンの黒いヤツじゃないよ。カブトムシだよ~」
「ホントに?」
「うちは綺麗にしているんだ。引っ越して来てから、一度も出て来ていないよ」
「よかった……」
たしかに夏樹は綺麗好きだから、黒いヤツがいないだろう。俺がホッとしていると、アンとリクが尻尾を振って遊びに誘ってきた。そこで気を取り直して、2匹との遊びを再開させた。
「指にタコがあるね。楽器をやっているだろう」
「はい。高校2年生から、エレキギターを弾いています。今のバンドではベースです」
「へえ。ジャンルは?」
「ハードロックとヘヴィメタルです」
「そうか。大御所だと……、イングー、ハロウィズは聴いた?」
「もちろんです!イングーからギターに入ったんです。早弾きが凄いなって。遠藤さんはレコード会社の人だから、色んなジャンルをご存知なんですね」
「20年前まで、バンドの発掘もやっていたんだよ。アマチュアのコンテストや、ロックフェスへも出向いたよ。どこかへ出ないのか?」
ここで話してみようか。ベテランだけが通過するコンテストに出ることを。自分の力ではなく、桜木さんと並川さんの名前のおかげだが、胸を張ってみたいと思った。
「8月にある、ミライ・アマチュアバンドコンテストに出ます」
「ミライに出るのか、ベテランだね」
「桜木さんと同じバンドですから……」
「なるほど。彼と一緒なら相当な腕前だね。まだ初めて2年だろう?前にいたバンド名は?知らないかもと思わずに、教えてほしい」
「はい!」
俺がバンド名を言うと、遠藤さんが思案顔になった。そして、いくつか名前を呟いた後、ぱっと表情を明るくさせた。
「ミッシュアップ・フェスに出ていなかったか?」
「はい。出ていました。賞は取れませんでしたけど……」
「あのギターの子か!覚えているよ。高校2年生の子だったと、終わった後に聞いたよ。ブルースをハードロックに編曲したフレーズを弾いていたよね?上手かったから、印象に残っている」
「わわわ……っ」
どうしてここまで知っているのだろう。驚きながらも、嬉しさで胸がいっぱいになった。すると、遠藤さんが俺の手を取り、タコになった部分に触れた。
「かなり弾き込んでいるね。頑張っているじゃないか。スクールには通っているのか?」
「いえ、通っていません。植本さんのギター教室には参加しました」
「お父さんに話してあげるといい」
「あまり理解がないので……」
「そうか。親から理解されないのは、よくある話だ」
「先輩からも聞いたことがあります」
「音楽をやることはいいことだ。後ろめたくない」
「はい。頭が堅くて……」
「はははは」
父の話題が出るだけで憂鬱な気分になるはずなのに、遠藤さんと一緒に笑い飛ばすことができた。これは悪い魔法使いに掛けられた、あの呪いが解けたからだろうか?それだけではないだろう。自分自身に呪いを掛けていたからだ。父だけのせいではない。出来ないかもしれないと思い込んでいたのは、自分自身だ。もう小さな子ではない。前へ進んで、新しい景色を見たくなった。
「悠人君、2匹が遊びに誘っているよ」
「ホントだ、走って来ますね。おいでーー!」
俺が走り出すと、アンとリクが追いかけて来た。そのまま畑の周りで走り回っていると、アンが木の幹を見つめていた。そこに黒い虫を発見して、大きな悲鳴を上げてしまった。
「ええ!?わーーーーっ」
「悠人!?ああー、これか~」
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「悠人、それは……」
「ひいいいっ」
「キッチンの黒いヤツじゃないよ。カブトムシだよ~」
「ホントに?」
「うちは綺麗にしているんだ。引っ越して来てから、一度も出て来ていないよ」
「よかった……」
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