19 / 91
2-14
しおりを挟む
裕理君が黒崎君の方を見た。如月君が心配そうな顔をしている。
「心配そうな顔をしているだろう?如月君もだ。ああやって心配してくれる子と付き合え。今回のことは君にとっては収穫があったんだぞ。自分も同じことをしたくせに、スケープゴートを選んで逃げ出した。そんな子だと分かっただろう。……いいか?天秤にかけろ。うちの仲間は君に残ってほしいと希望している。反対の天秤には ”その程度のつきあい” だ。どっちが重い?もう分かるだろう?」
「うん!」
あの子たちと友達になりたい。変われるかもしれない。それには許してもらうことが先だ。しっかりと頷くと、裕理君の顔が優しいものから厳しさのあるものに変わった。ここからはインターンシップでお世話になる社員だ。そういうことだろう。
「よし、いい顔になったね。戻ろう」
「うん!黒崎君、許してくれるかな……」
「それは分からない。真剣に謝れ」
「うん!」
背中を押されて会議室へ入った。待っていた枝川さんが笑っていた。会釈を返すと、会議室の中を見ろと言われた。如月君から手を振られていた。笑顔で。
「さえきーー、こっちに来いよーー!」
「如月君……」
大きな声で呼ばれたことで、参加者から一斉に視線を向けられた。ためらっていると、向こうの方からやって来て、俺の肩を抱いた。こっちだぞー、と。
如月君の席はCグループだ。真ん中あたりだから余計に目立つ。失敗した俺に構っていいのだろうか?その前にやることがある。
「如月君。昼休憩のときはごめんなさい!迷惑をかけたよね」
「あのことか。空気を読んでもらえて助かったぞ。夏樹……、黒崎も同じだ。そう言ってた。佐伯って情報学科だろ?俺は物理学科だ。授業で一緒になったぞ」
「ホントに?同じ学部?」
「俺は嘘をつかないぞ。お前はちゃんとした奴だ。身代わりヤローーなんかよーー!最低だーー!」
「え?」
(こんな大きな声で?あれ?みんなが目を逸らした。すごい……。みんな、入口の方を見てる……。黒崎君だ。すごい怖い顔してる……)
出入口から入って来た黒崎君からは、冷え凍ったような空気が漂っていた。真っ直ぐに俺たちの方を見た。そして、ふにゃっと笑った。
「夏樹!こいつが謝るって」
「ああ~。さっきの?」
黒崎君が歩いてきた。その途中で机の脚に当たり、いたた……と、照れくさそうに笑った。それがキッカケで、O大メンバーの意識高い系が声をかけた。
「黒崎君!さっきは……」
「なんのこと?」
「盛り上がってごめん」
「謝るぐらいなら最初からやるな。筋を通さない子とは仲良くしない」
「……」
(俺に怒っているんじゃないのか……)
裕理君の話が理解できた。黒崎君は、こんな空気の中で堂々としている。如月君も平然としている。そして俺の肩を抱いて笑った。黒崎君もだ。俺は彼らと友達になりたい。
「黒崎君。ごめんね」
「いいのに。大したことないじゃん」
「ううん。ごめんね!変に目立たせて」
「こっちこそだよ。もう帰らないでよ」
「うん。ありがとう」
俺たちが話していると、ざわめきが大きくなったのは気のせいではないはずだ。きっと変な目で見ている子がいるだろう。
「夏樹。こいつは佐伯理久。俺たちと同じ一年だ」
「よろしく」
「よろしく!」
(メンバーが舌打ちしてる。あ……、山本さんが笑ってる。すごい……。こんなことがあるんだ……)
俺は間違っていたし、そうではなかったのか。俺達の周りが和やかな空気に変わっていた。席へ戻った後、吉川さんがそばにやって来た。よかったーと言って、ホッとしていた。俺は、ありがとうと、お礼を言った。
「心配そうな顔をしているだろう?如月君もだ。ああやって心配してくれる子と付き合え。今回のことは君にとっては収穫があったんだぞ。自分も同じことをしたくせに、スケープゴートを選んで逃げ出した。そんな子だと分かっただろう。……いいか?天秤にかけろ。うちの仲間は君に残ってほしいと希望している。反対の天秤には ”その程度のつきあい” だ。どっちが重い?もう分かるだろう?」
「うん!」
あの子たちと友達になりたい。変われるかもしれない。それには許してもらうことが先だ。しっかりと頷くと、裕理君の顔が優しいものから厳しさのあるものに変わった。ここからはインターンシップでお世話になる社員だ。そういうことだろう。
「よし、いい顔になったね。戻ろう」
「うん!黒崎君、許してくれるかな……」
「それは分からない。真剣に謝れ」
「うん!」
背中を押されて会議室へ入った。待っていた枝川さんが笑っていた。会釈を返すと、会議室の中を見ろと言われた。如月君から手を振られていた。笑顔で。
「さえきーー、こっちに来いよーー!」
「如月君……」
大きな声で呼ばれたことで、参加者から一斉に視線を向けられた。ためらっていると、向こうの方からやって来て、俺の肩を抱いた。こっちだぞー、と。
如月君の席はCグループだ。真ん中あたりだから余計に目立つ。失敗した俺に構っていいのだろうか?その前にやることがある。
「如月君。昼休憩のときはごめんなさい!迷惑をかけたよね」
「あのことか。空気を読んでもらえて助かったぞ。夏樹……、黒崎も同じだ。そう言ってた。佐伯って情報学科だろ?俺は物理学科だ。授業で一緒になったぞ」
「ホントに?同じ学部?」
「俺は嘘をつかないぞ。お前はちゃんとした奴だ。身代わりヤローーなんかよーー!最低だーー!」
「え?」
(こんな大きな声で?あれ?みんなが目を逸らした。すごい……。みんな、入口の方を見てる……。黒崎君だ。すごい怖い顔してる……)
出入口から入って来た黒崎君からは、冷え凍ったような空気が漂っていた。真っ直ぐに俺たちの方を見た。そして、ふにゃっと笑った。
「夏樹!こいつが謝るって」
「ああ~。さっきの?」
黒崎君が歩いてきた。その途中で机の脚に当たり、いたた……と、照れくさそうに笑った。それがキッカケで、O大メンバーの意識高い系が声をかけた。
「黒崎君!さっきは……」
「なんのこと?」
「盛り上がってごめん」
「謝るぐらいなら最初からやるな。筋を通さない子とは仲良くしない」
「……」
(俺に怒っているんじゃないのか……)
裕理君の話が理解できた。黒崎君は、こんな空気の中で堂々としている。如月君も平然としている。そして俺の肩を抱いて笑った。黒崎君もだ。俺は彼らと友達になりたい。
「黒崎君。ごめんね」
「いいのに。大したことないじゃん」
「ううん。ごめんね!変に目立たせて」
「こっちこそだよ。もう帰らないでよ」
「うん。ありがとう」
俺たちが話していると、ざわめきが大きくなったのは気のせいではないはずだ。きっと変な目で見ている子がいるだろう。
「夏樹。こいつは佐伯理久。俺たちと同じ一年だ」
「よろしく」
「よろしく!」
(メンバーが舌打ちしてる。あ……、山本さんが笑ってる。すごい……。こんなことがあるんだ……)
俺は間違っていたし、そうではなかったのか。俺達の周りが和やかな空気に変わっていた。席へ戻った後、吉川さんがそばにやって来た。よかったーと言って、ホッとしていた。俺は、ありがとうと、お礼を言った。
0
あなたにおすすめの小説
俺の推し♂が路頭に迷っていたので
木野 章
BL
️アフターストーリーは中途半端ですが、本編は完結しております(何処かでまた書き直すつもりです)
どこにでも居る冴えない男
左江内 巨輝(さえない おおき)は
地下アイドルグループ『wedge stone』のメンバーである琥珀の熱烈なファンであった。
しかしある日、グループのメンバー数人が大炎上してしまい、その流れで解散となってしまった…
推しを失ってしまった左江内は抜け殻のように日々を過ごしていたのだが…???
回転木馬の音楽少年~あの日のキミ
夏目奈緖
BL
包容力ドS×心優しい大学生。甘々な二人。包容力のある攻に優しく包み込まれる。海のそばの音楽少年~あの日のキミの続編です。
久田悠人は大学一年生。そそっかしくてネガティブな性格が前向きになれればと、アマチュアバンドでギタリストをしている。恋人の早瀬裕理(31)とは年の差カップル。指輪を交換して結婚生活を迎えた。悠人がコンテストでの入賞等で注目され、レコード会社からの所属契約オファーを受ける。そして、不安に思う悠人のことを、かつてバンド活動をしていた早瀬に優しく包み込まれる。友人の夏樹とプロとして活躍するギタリスト・佐久弥のサポートを受け、未来に向かって歩き始めた。ネガティブな悠人と、意地っ張りの早瀬の、甘々なカップルのストーリー。
<作品時系列>「眠れる森の星空少年~あの日のキミ」→「海のそばの音楽少年~あの日のキミ」→本作「回転木馬の音楽少年~あの日のキミ」
泣き虫な俺と泣かせたいお前
ことわ子
BL
大学生の八次直生(やつぎすなお)と伊場凛乃介(いばりんのすけ)は幼馴染で腐れ縁。
アパートも隣同士で同じ大学に通っている。
直生にはある秘密があり、嫌々ながらも凛乃介を頼る日々を送っていた。
そんなある日、直生は凛乃介のある現場に遭遇する。
死ぬほど嫌いな上司と付き合いました
三宅スズ
BL
社会人3年目の皆川涼介(みながわりょうすけ)25歳。
皆川涼介の上司、瀧本樹(たきもといつき)28歳。
涼介はとにかく樹のことが苦手だし、嫌いだし、話すのも嫌だし、絶対に自分とは釣り合わないと思っていたが‥‥
上司×部下BL
【完結・BL】胃袋と掴まれただけでなく、心も身体も掴まれそうなんだが!?【弁当屋×サラリーマン】
彩華
BL
俺の名前は水野圭。年は25。
自慢じゃないが、年齢=彼女いない歴。まだ魔法使いになるまでには、余裕がある年。人並の人生を歩んでいるが、これといった楽しみが無い。ただ食べることは好きなので、せめて夕食くらいは……と美味しい弁当を買ったりしているつもりだが!(結局弁当なのかというのは、お愛嬌ということで)
だがそんなある日。いつものスーパーで弁当を買えなかった俺はワンチャンいつもと違う店に寄ってみたが……────。
凄い! 美味そうな弁当が並んでいる!
凄い! 店員もイケメン!
と、実は穴場? な店を見つけたわけで。
(今度からこの店で弁当を買おう)
浮かれていた俺は、夕飯は美味い弁当を食べれてハッピ~! な日々。店員さんにも顔を覚えられ、名前を聞かれ……?
「胃袋掴みたいなぁ」
その一言が、どんな意味があったなんて、俺は知る由もなかった。
******
そんな感じの健全なBLを緩く、短く出来ればいいなと思っています
お気軽にコメント頂けると嬉しいです
■表紙お借りしました
恋人はメリーゴーランド少年だった~永遠の誓い編
夏目奈緖
BL
「恋人はメリーゴーランド少年だった」続編です。溺愛ドS社長×高校生。恋人同士になった二人の同棲物語。束縛と独占欲。。夏樹と黒崎は恋人同士。夏樹は友人からストーカー行為を受け、車へ押し込まれようとした際に怪我を負った。夏樹のことを守れずに悔やんだ黒崎は、二度と傷つけさせないと決心し、夏樹と同棲を始める。その結果、束縛と独占欲を向けるようになった。黒崎家という古い体質の家に生まれ、愛情を感じずに育った黒崎。結びつきの強い家庭環境で育った夏樹。お互いの価値観のすれ違いを経験し、お互いのトラウマを解消するストーリー。
エリート上司に完全に落とされるまで
琴音
BL
大手食品会社営業の楠木 智也(26)はある日会社の上司一ノ瀬 和樹(34)に告白されて付き合うことになった。
彼は会社ではよくわかんない、掴みどころのない不思議な人だった。スペックは申し分なく有能。いつもニコニコしててチームの空気はいい。俺はそんな彼が分からなくて距離を置いていたんだ。まあ、俺は問題児と会社では思われてるから、変にみんなと仲良くなりたいとも思ってはいなかった。その事情は一ノ瀬は知っている。なのに告白してくるとはいい度胸だと思う。
そんな彼と俺は上手くやれるのか不安の中スタート。俺は彼との付き合いの中で苦悩し、愛されて溺れていったんだ。
社会人同士の年の差カップルのお話です。智也は優柔不断で行き当たりばったり。自分の心すらよくわかってない。そんな智也を和樹は溺愛する。自分の男の本能をくすぐる智也が愛しくて堪らなくて、自分を知って欲しいが先行し過ぎていた。結果智也が不安に思っていることを見落とし、智也去ってしまう結果に。この後和樹は智也を取り戻せるのか。
ミルクと砂糖は?
もにもに子
BL
瀬川は大学三年生。学費と生活費を稼ぐために始めたカフェのアルバイトは、思いのほか心地よい日々だった。ある日、スーツ姿の男性が来店する。落ち着いた物腰と柔らかな笑顔を見せるその人は、どうやら常連らしい。「アイスコーヒーを」と注文を受け、「ミルクと砂糖は?」と尋ねると、軽く口元を緩め「いつもと同じで」と返ってきた――それが久我との最初の会話だった。これは、カフェで交わした小さなやりとりから始まる、静かで甘い恋の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる