青い月の天使~あの日の約束の旋律

夏目奈緖

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 ステージサイドに戻り、スタッフさんから汗を拭かれた。気がつかないうちに首の後ろや背中に掛けて、大量の汗をかいていたと分かった。 

「すみません。ありがとうございます」 
「いえ、この後、控え室でお食事と、インタビューが入っているそうです」 
「わあ~。メイクをするんですか?」 
「はい。お食事の後、すぐにローザーさんが入ります」 
「急がないと……」 

 すると、高宮さんがどこかに電話を始めた。俺達は控え室に戻りますと伝えて、廊下に出た。クーラーの風が当たって気持ちよくて、ずっとここに立っていたいと思った。しかし、長谷部さんが俺達を呼びに来たから、お別れになった。 

「夏樹君。悠人君。お食事の時間は20分間しかないわよ。開明高校の事件の件で取材が入っていたんだけど、こちらで答えておいたわ。今はコンサートに集中したいって。生徒さんが来ることは漏れていないから……」 
「さっき高宮さんから聞いたよ。記事を出すのは中止になったって。その方が良いよね。騒ぎを大きくすることは無いんだから……」 
「うちの上の人の指示で出す判断になったんだけど、遠藤社長が止めてくれたのよ。学校が注目を集めて落ち着かない生徒さん達じゃないだろうけど、色んな意見が飛んでくるのには違いないもの。結果的に、みんなが落ち着かないわ。あなたたちは生徒さんと会って記念写真を撮ってね。悠人君の出身校からも、お話が来ているのよ。呉羽野学園……」 
「ふうん。芸能活動には一切興味が無さそうな感じの子が行く学校に、悠人みたいな奴が出ると、ざわつくんじゃないの?いたたたたた!」 
「なつきーー!言い過ぎだよーーー!」 

 悠人から頬をつねられてしまった。悠人の出身校は有名進学校だ。とにかく真面目だという印象だ。そこの学校から面談したいという希望があるなんて思いもしなかった。悠人はそれを気にしていた。開明高校のようにオープンな学校でなく、俺なんかが有名になっても得をしないと思われるに違いないとまで言っていた。だから、話が来たのは良かったと思う。 

「ゆうとーー。やめろよーー。面談は良いと思うよ。会ってみたら?」 
「うん。君達と同じく、記念写真を理事長室に飾ってもらえるそうだよ。バンドよりも、伝統あるキシヤマ味噌のコマーシャルが決め手だったりして……」 
「ゆうとーー。ネガティブはやめておけよーー。うひゃひゃひゃ。バンドも理解してくれるってば。うちの黒崎さんだって、最初のコンサートで面食らっていたんだ。俺が上半身裸で動き回るとか、思ってもみないことだったんだって……」 
「ふむふむ。今じゃ、革パンツだけの姿は定番になったけどね。ギタリスト祭典も良かったって思ってもらえると良いんだけどなーー」 
「大丈夫よ。生徒さん達だって、学校側から無理矢理に会って来いって言われているわけじゃないでしょうから……」 
「ううん。うちの学校はそういう感じなんだよーー。あああ……」 

 悠人がため息をついた。本当は寮に入って、開明高校に入学したかったらしい。それなら俺はもっと早くから、彼と一緒にバンド活動をやっていたのだろう。そういうルート変更も面白かったかも知れない。悠人が高校生の時からバンドコンテストに出ていたから聡太郎と並川さんと知り合い、バンドを組んだわけで、それに俺が入った形だ。出会いとは面白いものだと思っている。
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