青い月の天使~あの日の約束の旋律

夏目奈緖

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12-1 黒崎家のお正月

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 1月1日、木曜日。午前8時。

 今日は元旦だ。大学も仕事も休みだから、ゆっくりしようと思っている。畑の水やりを済ませて背伸びをして、空を仰いだ。今日の天気予報は晴れだ。しかし、雪がちらつくかもしれないという予報だ。そういうわけで、庭の中は冷えている。

「寒いなあ~。ユーリー、もういいのかよ?」
「いい。気が済んだ……」

 そう言って、ユーリーが何度もしている背伸びをやめた。俺が水やりをしている間、彼が一緒に居てくれた。そういうわけで、黒崎は家の中にいる。アンが風邪を引くといけないから、散歩以外は外に出したがらないからだ。アンは黒崎が家の中にいたら、外に出たがらない。上手く出来ていると思った。

「ユーリー、瓦割りの稽古は、今年もやるの?」
「もちろん続ける。月に1回ぐらいにしたい。でも、今は厚着をしている……」
「そうだねえ。稽古の時は上半身裸なのに、厚手のニットだねえ。町野先生の反対だよ……」

 そう言って、俺はユーリーの服装をイジって、町野先生の服装を思い浮かべた。先月の25日に二葉が初めて診察を受けた。じっくりと話を聞いてくれたそうだ。そして、家に帰ってきて、先生の服装に驚いたのだと教えてくれた。裸足にスリッパを履いて、半袖を着ていたそうだ。いくら病院内は暖房が掛かっていても、そんなにいうほど温かくはしていないという一貴さんからの情報により、二葉はコートを脱いで、厚手のニットを着ていたそうだ。そして、二葉に先生が、今日は随分と冷えますねと言ったそうだ。

「うひゃひゃひゃ。先生の格好を見て、違和感があるよねえ」
「暑がりなんだそうだ。一貴さんが診察を受けたときは長袖を着ていたそうだけど……。元は外科の先生なのか。厳しそうな顔をしているもんなあ……」
「そうだねえ。聖河さんからローザーさんのことを守って、すっかり騎士ナイトになっているんだよねえ」

 話題は24日の夜のことだ。聖河さんはローザーさんのことを誘って、レストランで食事をしようとした。しかし、ローザーさんが嫌がるから、友達を紹介するということで町野先生を連れてくると言い、ローザーさんは彼に会っておこうと思ったそうだ。

 そして、3人で食事をしたそうだ。その後、もう一軒行った店で聖河さんが熱心にローザーさんのことを口説こうとするから、嫌がっているのを知った町野先生が止めに入り、ローザーさんの中で町野先生の株が上がった。写真を見たときは厳しそうな顔をしていると言っていたのに。そして、ローザーさんが町野先生に好感を持ち、恋心のような物が芽生えてしまったそうだ。

「ローザーさんってば、俺に謝るんだよ。ごめんなさい。聖河お兄さんとのことを応援して貰ったのに、友達の方を好きになったかも知れないって……」
「人の気持ちは揺れ動くということだ。そういうこともあるだろう。町野先生の気持ちはどうだろうか。NOではないという答えだったそうだね」
「うん。帰りに告白したんだって。貴方のことを好きになったかも知れないって。それで、聖河さんは驚いて、どうして?って……」
「ショックだっただろう。あんたに自分のことを好きだと言ってくれていたのに、フラれてしまったわけだ。僕もフラれた後だから、つらい気持ちが分かる」
「あんたには月島さんがいるだろ。今日は一緒に初詣に行くんだよね?」
「ああ、神社の前で待ち合わせだ。僕と2人にならなくていいのかって聞いたら、大勢が良いって言うんだ」
「そっか。帰りに2人になったら?でも、今日は休みのお店が多いよね。お義父さんが家に来てくれるから嬉しいて言っていたよ」

 今日は黒崎家のメンバーで初詣に行って来る。クリスマスには一緒に居られなかった月島さんが来てくれることになった。聖河さんも一緒だ。ローザーさんと過ごす元旦を予定していたのに、彼がテレビの仕事が入っているからスケジュールが合わず、寂しがっていた。なんと、彼と町野先生とのスケジュールは合うのだという。そこで、恋の行方を見てもらいたいと、月島さんが頼まれている。そして、家のこともだ。

 聖河さんの実のお父さんから、いくつも土地を持っているお祖母さんの聖河さんへの遺言と遺産相続のことで相談したいという手紙が届いたのが2ヶ月前で、聖河さんはコンサートスタッフの仕事があったから忙しくて時間が取れず、年明けにしたいと返事をした。そして、12月26日に、お父さんから電話が入った。親族が次々と交通事故を起こしたのだと。聖河さんの異母妹は24日に逮捕されてしまったという。そこで、早く会いたいと急かしてきたのだという。その理由を聞き、俺はなんだか背中が冷たくなり、そういうことなら会いたくなるだろうと思った。
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