353 / 938
12-5
しおりを挟む
大木さんとしては、ママを表に出して、さらに事務所の名前を広めたいという考えだそうだ。ママは反対で、表に出ない方が良いのだという考え方だ。輩出したモデルさん達が活躍し、真琴企画はモデル業界の中でも名前は広まっている。スクールへの入学希望者は増えている。だから、今のままでコツコツと、自分は一切表に出ること無くというのが希望だ。
しかし、大木さんはママが出た方がいいと言っている。多くの生徒とモデル事務所の移籍者希望者を増やしていきたいからだ。しかし、ママとしては、テレビに出ると、華やかさだけで寄ってくる人が増えるから、事務所運営の方の力が削がれるという心配をしている。人間関係の広がりで増えた飲み会の席、呼ばれるパーティーの数などが増えれば増えるほどに、そういうことになると言っている。
これは黒崎が言うには、黒崎家で知った親戚づきあいでの疲れを思い出すし、そこで培った経験で、そういう考えをとるようになったのだろうということだった。これは決して間違いでは無くて、表に出ないことで華やかさがないと言えなくも無いが、それだけ事務所運営に力を注いでいるという印象を持って貰えて、有望な人が集まってきたのだろうということだった。経営者が目立っているからと集まる人の中には、悪い考えをしている人が混ざっていなくはない。そこで、ママの取った方針は厄災よけになっていただろうということだ。
そこに、大木さんが現われた。人間関係の広がりによる調整は引き受けるから、まずはテレビに出てくれということだった。朝陽のモデル広告の話題があるうちに一度だけでいいという。ママはそうしてみようかと思ったそうだ。そこで、大木さんに、今声が掛かっている番組の中でどれがいいか選んで貰ったという。そして、大木さんからは、黒崎に声を掛けて、彼にもどれがいいか見てもらってくれということだった。
そういうわけで、親子の縁を切ったはずの黒崎がママから連絡が入るようになり、それはネガティブな話では無く、いつまでも元気で良いという感じの話だから、縁起が良いと思う。テレビに呼んでくれるなんて、今のうちだというのが大木さんの意見だ。黒崎もそう言った。二人の考え方が同じなのが、俺は驚いた。
てっきり黒崎としては、ママの方針の方が良いと言うと思っていた。経営者は目立たずという方針だ。華やかにせずにという形だ。しかし、黒崎は俺の前でもお義父さんの前でも、もちろんママとの電話でも、はっきりとこう言った。真琴企画が潰れようがどうしようが、どうでもいいのだと。今のうちに色々やっておけという。
それを聞いたママは悲しかったかも知れない。どうでもいいなんて、俺が聞く限りでは本音だと思ったからだ。きっと、ママもそう思ったに違いない。応援してくれるとは思っていないとは言っていたそうだ。それを聞いて俺は悲しくなった。だから、黒崎にはママの事務所運営を応援してもらいたいと思っている。すると、黒崎が俺達の方を見た。あの人から電話が掛かっていると教えてくれた。ママだということだ。
「あんた、正月早々、どうしたって言うんだ。俺は甘い物は食わない。あんたが煮た黒豆の甘煮には興味があるが、今日は行けない。夏樹、黒豆の甘煮は冷蔵庫で何日もつんだ?」
「ん?」
「黒豆の甘煮の保存期間だ。あの人は10日ぐらいだと言っている」
「俺の記憶だと、5日ぐらいだよ。でも、ママがそう言うなら、そうなんじゃないかな?」
俺は訂正した意見を言い直した。しかし、黒崎はしっかりと聞いてしまったから、そのままツッコミを返し始めた。どうやらママが黒豆の甘煮を作ったらしい。それを食べに来ないかという誘いだ。そして、黒崎が小さい頃、好きだったはずだと言われたことが分かった。そうなのかと驚いた。甘い物はお菓子だけかと思っていた。
ママはこの家ではキッチンに立っていないそうだが、倉口さんのところではそうでも無かったのかも知れない。二葉が、時々お母さんがご飯を作ってくれたと言っていたからだ。料理全般は倉口さんが担当していたそうだ。黒豆を煮ることができるなら、ママは実は料理上手なんだと思った。
しかし、大木さんはママが出た方がいいと言っている。多くの生徒とモデル事務所の移籍者希望者を増やしていきたいからだ。しかし、ママとしては、テレビに出ると、華やかさだけで寄ってくる人が増えるから、事務所運営の方の力が削がれるという心配をしている。人間関係の広がりで増えた飲み会の席、呼ばれるパーティーの数などが増えれば増えるほどに、そういうことになると言っている。
これは黒崎が言うには、黒崎家で知った親戚づきあいでの疲れを思い出すし、そこで培った経験で、そういう考えをとるようになったのだろうということだった。これは決して間違いでは無くて、表に出ないことで華やかさがないと言えなくも無いが、それだけ事務所運営に力を注いでいるという印象を持って貰えて、有望な人が集まってきたのだろうということだった。経営者が目立っているからと集まる人の中には、悪い考えをしている人が混ざっていなくはない。そこで、ママの取った方針は厄災よけになっていただろうということだ。
そこに、大木さんが現われた。人間関係の広がりによる調整は引き受けるから、まずはテレビに出てくれということだった。朝陽のモデル広告の話題があるうちに一度だけでいいという。ママはそうしてみようかと思ったそうだ。そこで、大木さんに、今声が掛かっている番組の中でどれがいいか選んで貰ったという。そして、大木さんからは、黒崎に声を掛けて、彼にもどれがいいか見てもらってくれということだった。
そういうわけで、親子の縁を切ったはずの黒崎がママから連絡が入るようになり、それはネガティブな話では無く、いつまでも元気で良いという感じの話だから、縁起が良いと思う。テレビに呼んでくれるなんて、今のうちだというのが大木さんの意見だ。黒崎もそう言った。二人の考え方が同じなのが、俺は驚いた。
てっきり黒崎としては、ママの方針の方が良いと言うと思っていた。経営者は目立たずという方針だ。華やかにせずにという形だ。しかし、黒崎は俺の前でもお義父さんの前でも、もちろんママとの電話でも、はっきりとこう言った。真琴企画が潰れようがどうしようが、どうでもいいのだと。今のうちに色々やっておけという。
それを聞いたママは悲しかったかも知れない。どうでもいいなんて、俺が聞く限りでは本音だと思ったからだ。きっと、ママもそう思ったに違いない。応援してくれるとは思っていないとは言っていたそうだ。それを聞いて俺は悲しくなった。だから、黒崎にはママの事務所運営を応援してもらいたいと思っている。すると、黒崎が俺達の方を見た。あの人から電話が掛かっていると教えてくれた。ママだということだ。
「あんた、正月早々、どうしたって言うんだ。俺は甘い物は食わない。あんたが煮た黒豆の甘煮には興味があるが、今日は行けない。夏樹、黒豆の甘煮は冷蔵庫で何日もつんだ?」
「ん?」
「黒豆の甘煮の保存期間だ。あの人は10日ぐらいだと言っている」
「俺の記憶だと、5日ぐらいだよ。でも、ママがそう言うなら、そうなんじゃないかな?」
俺は訂正した意見を言い直した。しかし、黒崎はしっかりと聞いてしまったから、そのままツッコミを返し始めた。どうやらママが黒豆の甘煮を作ったらしい。それを食べに来ないかという誘いだ。そして、黒崎が小さい頃、好きだったはずだと言われたことが分かった。そうなのかと驚いた。甘い物はお菓子だけかと思っていた。
ママはこの家ではキッチンに立っていないそうだが、倉口さんのところではそうでも無かったのかも知れない。二葉が、時々お母さんがご飯を作ってくれたと言っていたからだ。料理全般は倉口さんが担当していたそうだ。黒豆を煮ることができるなら、ママは実は料理上手なんだと思った。
0
あなたにおすすめの小説
従僕に溺愛されて逃げられない
大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL!
俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。
その傍らには、当然のようにリンがいる。
荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。
高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。
けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。
当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。
居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。
さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。
主従なのか、恋人なのか。
境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。
従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。
妖精です、囲われてます
うあゆ
BL
僕は妖精
森で気ままに暮らしていました。
ふと気づいたら人間に囲まれてました。
でもこの人間のそばはとても心地いいし、森に帰るタイミング見つからないなぁ、なんて思いながらダラダラ暮らしてます。
__________
妖精の前だけはドロ甘の冷徹公爵×引きこもり妖精
なんやかんやお互い幸せに暮らします。
守り守られ
ほたる
BL
主治医 望月診療所の双子医師
患者 瀬咲朔
腸疾患・排泄障害・下肢不自由
看護師
ベテラン山添さん
準主人公 成海真幌 腸疾患・排泄障害・てんかん
木島 尚久 真幌の恋人同棲中
タトゥーの甘い檻
マリ・シンジュ
BL
執着系わんこ攻(大学生)× 高潔な美形教授受(30代)
どのお話も単体でお楽しみいただけます。
「先生、ここ……僕の瞳を入れるから。ずっと、僕だけを見てて」
真面目な大学教授・新城が、大学生の・羽生にだけ許した、あまりにも淫らな「わがまま」。
それは、誰にも見えない内腿の奥深くに、消えないタトゥーを刻むこと。
「下書き」と称して肌を赤く染めるペン先の冷たさ。
アトリエの無機質なライトの下、四つん這いで晒される大人の矜持。
ずっと年下の青年の、必死で、残酷で、純粋な独占欲。
愚かだと知りながら、新城はその熱に絆され、ゆっくりと「聖域」を明け渡していく――。
「……お前のわがままには、最後まで付き合う」
針が通るその時、二人の関係は一生消えない「共犯」へと変わる。
執着攻め×年上受け、密やかに刻まれる秘め事のお話。
若頭の溺愛は、今日も平常運転です
なの
BL
『ヤクザの恋は重すぎて甘すぎる』続編!
過保護すぎる若頭・鷹臣との同棲生活にツッコミが追いつかない毎日を送る幼なじみの相良悠真。
ホットミルクに外出禁止、舎弟たちのニヤニヤ見守り付き(?)ラブコメ生活はいつだって騒がしく、でもどこかあったかい。
だけどそんな日常の中で、鷹臣の覚悟に触れ、悠真は気づく。
……俺も、ちゃんと応えたい。
笑って泣けて、めいっぱい甘い!
騒がしくて幸せすぎる、ヤクザとツッコミ男子の結婚一直線ラブストーリー!
※前作『ヤクザの恋は重すぎて甘すぎる』を読んでからの方が、より深く楽しめます。
[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった
ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン
モデル事務所で
メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才
中学時代の初恋相手
高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が
突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。
昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき…
夏にピッタリな青春ラブストーリー💕
お腹いっぱい、召し上がれ
砂ねずみ
BL
料理研究家でαの藤白蒼は幼なじみで10個下のΩ晃と番になった。そんな二人の間に産まれた照は元気いっぱいな男の子。泣いたり、笑ったり、家族の温かみを感じながら藤白家の日常が穏やかに進んでいく。
そんな愛する妻と愛する息子、大切な家族のお腹いっぱい喜ぶ顔が見たいから。蒼は今日も明日もその先も、キッチンに立って腕を振るう。
さあ、お腹いっぱい、召し上がれ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる