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15時。
リビングに移動してお茶とお菓子を食べて、月島さんと色んなことを話した。もうそろそろおいとますというので、あっという間に時間が経っていることに気づいた。聖河さんも同じ事を言っていた。みんなそれぞれ休みたいだろうし、家の用事で片付けが溜まっていることがあるだろう。だから、引き留めてはいけないと思った。しかし、引っ込み思案の二葉が珍しく、聖河さんと月島さんにもう少し居てくれないかと言い出して、あと30分居てくれることになった。
話題は月島の妹さんのことだ。二葉としては面白かったらしく、もっと聞きたそうにしていた。今から聞きたいのは、前職のことだ。市役所の職員としての思い出のことだ。かつて二葉は市役所の職員採用試験を受けたことで、もしかしたら、そこで働いていたかも知れないという未来があった。そこで、妹さんがどんなことをしていたのか興味があるらしい。
「レディー。そんなに楽しいことじゃないみたいですよ。変なスタッフが居るのはどこも同じだと言えるけど、とにかく陰湿な人が居て、うちの会社だとカラーに合わない感じだ。やめて良かったと言っている。だから、あなたもそうなっていたと思いますよ」
「そっか……。友達の志乃が、こっちの区役所の採用試験を受けようかと思っているんだ。自分はそういう仕事がしたいんだって言うんだ。あ、お兄ちゃん……」
「黒崎製菓に来いと言っていると声を掛けておいてくれ。黒崎ファーマシーもある。製薬部門だ。研究開発チームのスタッフが必要だ。志乃さんなら、きっとすぐに打ち解けられるだろう」
「うん。分かったよ。お給料ってどれぐらいあるの?」
「この額だ。そこそこ良いだろう?ん?月島さん。どうしたんだ?」
「副社長が推す人なら、うちの会社にも欲しいなと思って……」
月島さんが本気で言っていることが分かった。目が光った気がしたからだ。それこそ、研究開発部門が大きいから、人材を募集しているだろう。そして、彼がこう言った。気持ちの優しい人が欲しいのだという。
「当社でも、人間関係の悩みでメンタル不全になるケースがあるんだ。まだ少ない方らしいけど……。そこで、僕としては優しい人が欲しい。例え、おっちょこちょいでもいいんだ。うどんを心から愛してくれて、朝昼晩、うどんでもいい人が良い」
「それなら志乃が合うよ。あの子はうどんが好きなんだ。でも、蕎麦もあるよね?貰ったばかりだよ」
「ええ。蕎麦もありますが、僕としては、うどんをもっと推していきたい。カレーうどんの甘口と中辛と辛口を用意しようと思っています。レディー、たしかあなたは、スープカレーの店を出したいのではなかったですか?」
「そうなんだよ。俺の得意料理だよ。それしか作れないっていう感じだけど。志乃に会っててみる?」
「もちろん、喜んで。志乃さんの恋愛運を見ても良いですよ。特別です」
「あ、僕には見ないって言ったくせに!」
一貴さんが聞き捨てならないと、椅子から立ち上がった。そして、聖河さんの恋愛運を見てくれと言い出した。その聖河さんは見なくて良いと顔を赤くしている。ローザーさんとのことを想像したのだろう。何かあったのだろう。そうだ、何かあったところだ。ローザーさんが町野先生のことが好きになったという発言があったことを聞いたばかりだ。
「聖河君の恋愛運ですか……。今の人とは別れたばかりですか?」
「はい。友達の町野君の方を好きになったと言っています……」
「今の人とは友達の縁だよ。ほら、僕ははっきり言うから、がっかりするだろう……」
「いえ、そんなことはありません。町野君との友情も続くと良いと思っています。ローザーが彼を選んだとしても、僕は変わりないと思います」
「二人は付き合わないと思うよ。聖河君には別の人がいる。もう出会っていると思う」
「そうなんですか……。そっか、僕は一人じゃ無いのか……。もう夜の公園で、ぼーっとすることも無いのか……」
「聖河さん……」
彼のつぶやいた言葉に胸が痛くなった。これでいいことが聞けた。聖河さんには別の相手がいると言うことだ。だから元気を出してくれと俺が言うと、ニコッと笑った。それは可愛いという感じの笑顔であり、ユーリーが顔を赤くして見つめてきた。そこで俺が嫌な予感がしたから、聖河さんのことを背中に隠すようにして彼の前に立ち、ユーリーに見せないようにした。
リビングに移動してお茶とお菓子を食べて、月島さんと色んなことを話した。もうそろそろおいとますというので、あっという間に時間が経っていることに気づいた。聖河さんも同じ事を言っていた。みんなそれぞれ休みたいだろうし、家の用事で片付けが溜まっていることがあるだろう。だから、引き留めてはいけないと思った。しかし、引っ込み思案の二葉が珍しく、聖河さんと月島さんにもう少し居てくれないかと言い出して、あと30分居てくれることになった。
話題は月島の妹さんのことだ。二葉としては面白かったらしく、もっと聞きたそうにしていた。今から聞きたいのは、前職のことだ。市役所の職員としての思い出のことだ。かつて二葉は市役所の職員採用試験を受けたことで、もしかしたら、そこで働いていたかも知れないという未来があった。そこで、妹さんがどんなことをしていたのか興味があるらしい。
「レディー。そんなに楽しいことじゃないみたいですよ。変なスタッフが居るのはどこも同じだと言えるけど、とにかく陰湿な人が居て、うちの会社だとカラーに合わない感じだ。やめて良かったと言っている。だから、あなたもそうなっていたと思いますよ」
「そっか……。友達の志乃が、こっちの区役所の採用試験を受けようかと思っているんだ。自分はそういう仕事がしたいんだって言うんだ。あ、お兄ちゃん……」
「黒崎製菓に来いと言っていると声を掛けておいてくれ。黒崎ファーマシーもある。製薬部門だ。研究開発チームのスタッフが必要だ。志乃さんなら、きっとすぐに打ち解けられるだろう」
「うん。分かったよ。お給料ってどれぐらいあるの?」
「この額だ。そこそこ良いだろう?ん?月島さん。どうしたんだ?」
「副社長が推す人なら、うちの会社にも欲しいなと思って……」
月島さんが本気で言っていることが分かった。目が光った気がしたからだ。それこそ、研究開発部門が大きいから、人材を募集しているだろう。そして、彼がこう言った。気持ちの優しい人が欲しいのだという。
「当社でも、人間関係の悩みでメンタル不全になるケースがあるんだ。まだ少ない方らしいけど……。そこで、僕としては優しい人が欲しい。例え、おっちょこちょいでもいいんだ。うどんを心から愛してくれて、朝昼晩、うどんでもいい人が良い」
「それなら志乃が合うよ。あの子はうどんが好きなんだ。でも、蕎麦もあるよね?貰ったばかりだよ」
「ええ。蕎麦もありますが、僕としては、うどんをもっと推していきたい。カレーうどんの甘口と中辛と辛口を用意しようと思っています。レディー、たしかあなたは、スープカレーの店を出したいのではなかったですか?」
「そうなんだよ。俺の得意料理だよ。それしか作れないっていう感じだけど。志乃に会っててみる?」
「もちろん、喜んで。志乃さんの恋愛運を見ても良いですよ。特別です」
「あ、僕には見ないって言ったくせに!」
一貴さんが聞き捨てならないと、椅子から立ち上がった。そして、聖河さんの恋愛運を見てくれと言い出した。その聖河さんは見なくて良いと顔を赤くしている。ローザーさんとのことを想像したのだろう。何かあったのだろう。そうだ、何かあったところだ。ローザーさんが町野先生のことが好きになったという発言があったことを聞いたばかりだ。
「聖河君の恋愛運ですか……。今の人とは別れたばかりですか?」
「はい。友達の町野君の方を好きになったと言っています……」
「今の人とは友達の縁だよ。ほら、僕ははっきり言うから、がっかりするだろう……」
「いえ、そんなことはありません。町野君との友情も続くと良いと思っています。ローザーが彼を選んだとしても、僕は変わりないと思います」
「二人は付き合わないと思うよ。聖河君には別の人がいる。もう出会っていると思う」
「そうなんですか……。そっか、僕は一人じゃ無いのか……。もう夜の公園で、ぼーっとすることも無いのか……」
「聖河さん……」
彼のつぶやいた言葉に胸が痛くなった。これでいいことが聞けた。聖河さんには別の相手がいると言うことだ。だから元気を出してくれと俺が言うと、ニコッと笑った。それは可愛いという感じの笑顔であり、ユーリーが顔を赤くして見つめてきた。そこで俺が嫌な予感がしたから、聖河さんのことを背中に隠すようにして彼の前に立ち、ユーリーに見せないようにした。
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