青い月の天使~あの日の約束の旋律

夏目奈緖

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 寝室に家族が集まり、緊迫した空気に包まれた。晴海兄さんがユーリー達に事情を話している。その話の内容から、晴海兄さんが手短に用件を伝えて、父がすぐに動いたのだと分かった。

「兄さん。親父に何を言ったんだ?」
「余計な事をするなと止めてくれと頼んだ。あの魔女には、お父さんから言ってもらうのが一番いい。夏樹君、俺も長谷部さんと話したい」
「うん。分かった。晴海お兄ちゃんと電話を替わるよ」
「もしもし。晴海です。お久しぶりです……」

 晴海兄さんが長谷部さんと話し始めた。黒崎家として全力で阻止しますと言っている。そこで、やっぱり自分は母に甘すぎたのだと知った。

「夏樹。俺は甘かったのか?」
「そんなことないよ。ママのためだからって、頑張ろうとしたんだろ。ここにいるみんなもお義父さんも分かっているよ。黒崎さん、最近優しいからさ。ママも安心して頼み事が言えるんだと思うよ。それで、晴海お兄ちゃんが怒ってさ。俺、止められなかったんだ。ごめんね」
「謝らなくていい。兄さんには兄さんの考えがある。この様子を見ると、俺は過ちをおかすところだったらしい。……ああ。一貴もそう思うのか。ユーリー、お前は俺の味方なのか」
「ああ、圭一。君はお母さんにしてあげられることを考えて返事をした。でも、やばかったから止めてくれる存在がいる。良かったな」
「なんだ、味方じゃないみたいじゃないか」
「いいや、君の味方だ。ああ、けっこう深い話をしているぞ」

 ユーリーが首をすくめた。晴海兄さんが長谷部さんに語っている内容のことでだ。あの魔女はとか、あの女はなど、冷静さを欠いた話しぶりだ。昔の女や男が出てくるのはイメージが悪い。そうとも言っている。そして、長谷部さんが俺と電話を替わるように言い、俺にかわった。

「もしもし。長谷部さん。圭一です。いきなりすみません」
「いいんですよ。こうして協力して頂いて嬉しいです。お父様、今頃お母様に電話をしているかしら……」
「そうだと思います。僕は甘かったです。会議には通さないで下さい。僕が恥ずかしい」
「いえ、会議に通して情報共有させて頂きます。ディスレクトサイドゼロはデビューしたばかりで、これから色々と活動の幅を広げていく予定でいますから、週刊誌のネタになるのは避けたいところなんです。良い方に書いてもらってもです。リリナさんイコールディスレクトサイドゼロとなるのも避けたいです」
「分かっています。いや、分かっていなかった。少しばかりの協力ならと思ってしまいました。そうですね」
「お父様から電話が入るかも知れませんよ。一旦、電話を切りましょう」
「はい。失礼します」
「失礼します」

 長谷部さんとの電話を終えた。すると、伊吹から電話が掛かってきた。父が電話を掛けたのだろうか。いや、母の方に掛けているはずだ。そう思って電話に出ると、たまたま重なって電話を掛けてきたのだと分かった。

「伊吹君。俺はやはり過ちを犯すところだったということだ……」
「どうしたですか?今日は引っ越しだと夏樹から聞いています。何か胸騒ぎがしたので電話を掛けてみました。何があったんですか?」
「実は……」

 俺は簡単に事情を話した。すると、電話の向こうにいるはずの伊吹から肩を叩かれた気がした。酷く疲れているのだろうという、ねぎらいの言葉をもらったからだ。

「黒崎さん。あんたは疲れているんです。この際、どこか温泉地に出かけてゆっくりしてはどうでしょう」
「ありがとう。でも、しばらく出かけられない。うちにはまだ小さいアンドリューがいる」
「そうでしたね。週刊誌のネタになるのは御法度ですよ。うちの聡太郎のことでもストップが掛かっています。芋ずる式に出てきてもいけません」
「そうだったな。ああ、俺はマズい男になったんだな……」

 さっきはため息をついたが、今ここでみんなの前ではそうできない。背筋を伸して、シャンとするようにした。こうすればネガティブな考えも、ブレた思いも整理される。伊吹に話に納得した。聡太郎が久弥とは異父兄弟だと知られないようにしてある。2人の実母が週刊誌の取材に答えて公表しないように止めてある。

 俺のそばには一貴がいる。晴海兄さんに電話が掛かってきたことを知らせてくれた。着信の相手は父だった。もしもし、私だ。烏丸さんには抗議しておいた。その短い報告に全てが詰まっていると思った。声は固く、機嫌など良くない。母との話し合いを想像して、今度は自然とため息が出てしまった。
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