青い月の天使~あの日の約束の旋律

夏目奈緖

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 ハンコを押した後、俺の事情聴取は以上だと言われた。後は黒崎が帰ってきたときにもう一度来るそうだ。警察も大変だ。昨夜から何度も来ているのだから。黒崎が15時半に戻ってくる。飛行機は遅れないだろう。今のところ、どの便にも遅れがないようだ。

 そばではお義父さんと長谷部さんが警察と話をしている。防犯カメラで見た侵入者の映像を何度見ても、知り合いには居ないそうだ。長谷部さんの方もIKUの関係者にもいないと言い、やっぱりここの近所に入った泥棒のグループなのではないかと言った。俺達のバンドが恨まれているかと言えばそうではなく、平穏だ。

 反対に、この家には何かある。爆破予告メールや殺害予告メールだ。黒崎製菓も標的に入り、避難したことがある。警察は黒崎に詳しい話を聞きたそうにしている。もしかしたら、侵入者が見覚えのある人物では無いかということだ。

「では、私達はこれで……。また夕方に来ます」
「どうもありがとうございました」

 警察が帰っていこうとしている。お義父さんの家では一貴さんが事情を聞かれているところだ。しかし、オンライン会議を立て続けにしており、バタバタしていて、それどころではないという感じだった。しかし、俺達のために警察と話をしてくれている。侵入者に見覚えは無いかということだ。一貴さんは覚えが無いと言っていた。

「お義父さん。長谷部さん。カズ兄さんのことが心配だから、見に行くよ。1人で事情聴取を受けているなんて心配だよ」
「夏樹。一貴はあれでも一つの企業を背負っている男だ。しっかしている」
「あれでもって。そうだよねえ。あれでもって感じだよねえ。周りの人に助けられているタイプだよ。また泣いているかも。電話に出られるかな?」

 一貴さんのことが心配だ。ヨークもウーリも黒崎家の上空にある宇宙船にいて、一貴さんのそばにいない。会議中だそうだ。彼らは犯人が誰なのか知ってそうだが、教えてくれない感じがした。俺達だけで解決に向かわないといけない。

 俺は一貴さんに電話を掛けた。警察がいるだろうが、電話を掛けるのは構わないだろう。すると、1コールで電話に出てくれた。

「もしもし、カズ兄さん。そっちは大丈夫?」
「……夏樹君。僕の方は大丈夫だ。警察とは落ち着いて話が出来ている。これがなかなかいい男で、意気投合したところだ」
「げげげ。何かするなよ~。今から行くからね!」
「もう帰るそうだ。そっちも帰っていったんだろう。……本当に君はいい男だ」
「カズ兄さん。問題を起こすなよ~」

 プツ。電話を切った。さっそく俺はお義父さんに向こうの様子を伝えた。一貴さんがプラセルの社長になりきっていて、大人の姿だということを。俺が心配していたのは、子供の姿になるとか、いつもの手が掛かる一貴さんになって泣いているのでは無いかということだ。オンライン会議をしていたから、社長の姿が継続されていたのか。

「俺、向こうの様子を見に行くよ。お茶も飲みたいし」
「そうだな。長谷部さん。良かったらどうぞ」
「いえ、私は会社に戻って、会議に入ります。夏樹君。あなたはゆっくり休んで頂戴」
「うん。ごめんね。日曜なのに……」
「いいのよ。じゃあ、帰りますね」
「うん」

 長谷部さんが俺達と一緒に家から出た。そして、庭に停めてある車に乗り込んだ。警察車両はすでに出てて、静けさが戻っていた。俺は恵まれていると思った。こうして心配してくれる人が居るからだ。

 ガーーーーー。

 長谷部さんの車が門から出て行った。後に残ったのは俺とお義父さんだ。犯人はたまたま入った知らない人だったらいいねと話し合った。そして、向かいの家から佳代子さんが出てきた。何か持って出てきてくれている。それは近所の洋菓子店・カンテールの紙袋であり、中にはケーキが入っていた。お見舞いということだ。

「佳代子さん。ごめんね。気を遣わせたね」
「これぐらいしか出来ないから……」

 俺達はありがたくお菓子を受け取った。お昼ご飯のデザートにしようと思う。すると、ユーリーが南波さんを連れて外に出てきた。俺達の声が聞こえなくなったからだという。

「ユーリー。南波さんに何もしてないよね?」
「していない。僕達の関係を警察から聞かれた。親しげに見えたんだろう」

 ユーリーが冗談を言った。南波さんが笑っている。それにはホッとした。お義父さんが放送を再開してくれというから、また笑ってくれた。俺にはここに温かい家族が居る。それに感謝して、みんなでお義父さんの家に戻っていった。
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