16 / 144
3-4
しおりを挟む
ガタガタ……。
自分のデスクに戻り、業務を始めた。黒崎と話している間、マンションに訪ねてきていたあの男性の姿と重なった。あの人は黒崎社長なのか?そう思う理由がある。当時の記憶では、質問と答えを繰り返す会話をした。黒崎から聞いたことがある。子供の頃に同じようなことがあったそうだ。
「……早瀬君はいるか?」
数分後、黒崎社長が訪ねてきた。ウサギのイラストがプリントされたトートバッグには、悠人に貸し出す天体観測の本が入っていた。せっかくだから少し話そう。そう声を掛けられて、同じ階のロビーへと促された。黒崎は何も聞かないふりをしていた。そういう気がした。
このフロアには来客用の待合がある。2人の先客がいたが、社長は気にせずに話を進めた。取引先が遠慮をしている様子だ。さっと窓際へ移動した。
「この通りだ。私が来ると逃げられる。悠人君には、おじいさん扱いをしてもらえる。孫のように思っている」
「本人が喜びます」
「最近はどうだ?昇進後、疲れてはいないか?」
「大丈夫です」
「倉口二葉さんの件だが。世話をかける。教師役を頼まれてもらえるか?」
「はい。役不足ではありますが、務めさせていただきます」
「そうか。コンタクトレンズをやめたのかね?今の方もいいよ」
「ありがとうございます。あの……」
この社内では、黒崎社長はプライベートの様子を見せたことがない。対面で接した機会が少ないが、今はプライベートの姿だろう。他に何か用件があるだろう。単刀直入にいこう。
「本題がありますよね?いかがされましたか?」
「早瀬君の今後の件だ。君のことを取締役会に迎えたい。私が引退する前にポストを用意する。いずれはグループ内企業の代表取締役に推したい。その方向で考えておいてくれ。……この本は、いつでも構わない」
「はい。承知しました」
それ以上の話はなかった。エレベーターへ向かう前に、一度だけ微笑まれた。その後はプライベートの姿ではなく、黒崎社長の姿に戻った。
自分のデスクに戻り、業務を始めた。黒崎と話している間、マンションに訪ねてきていたあの男性の姿と重なった。あの人は黒崎社長なのか?そう思う理由がある。当時の記憶では、質問と答えを繰り返す会話をした。黒崎から聞いたことがある。子供の頃に同じようなことがあったそうだ。
「……早瀬君はいるか?」
数分後、黒崎社長が訪ねてきた。ウサギのイラストがプリントされたトートバッグには、悠人に貸し出す天体観測の本が入っていた。せっかくだから少し話そう。そう声を掛けられて、同じ階のロビーへと促された。黒崎は何も聞かないふりをしていた。そういう気がした。
このフロアには来客用の待合がある。2人の先客がいたが、社長は気にせずに話を進めた。取引先が遠慮をしている様子だ。さっと窓際へ移動した。
「この通りだ。私が来ると逃げられる。悠人君には、おじいさん扱いをしてもらえる。孫のように思っている」
「本人が喜びます」
「最近はどうだ?昇進後、疲れてはいないか?」
「大丈夫です」
「倉口二葉さんの件だが。世話をかける。教師役を頼まれてもらえるか?」
「はい。役不足ではありますが、務めさせていただきます」
「そうか。コンタクトレンズをやめたのかね?今の方もいいよ」
「ありがとうございます。あの……」
この社内では、黒崎社長はプライベートの様子を見せたことがない。対面で接した機会が少ないが、今はプライベートの姿だろう。他に何か用件があるだろう。単刀直入にいこう。
「本題がありますよね?いかがされましたか?」
「早瀬君の今後の件だ。君のことを取締役会に迎えたい。私が引退する前にポストを用意する。いずれはグループ内企業の代表取締役に推したい。その方向で考えておいてくれ。……この本は、いつでも構わない」
「はい。承知しました」
それ以上の話はなかった。エレベーターへ向かう前に、一度だけ微笑まれた。その後はプライベートの姿ではなく、黒崎社長の姿に戻った。
0
あなたにおすすめの小説
地味メガネだと思ってた同僚が、眼鏡を外したら国宝級でした~無愛想な美人と、チャラ営業のすれ違い恋愛
中岡 始
BL
誰にも気づかれたくない。
誰の心にも触れたくない。
無表情と無関心を盾に、オフィスの隅で静かに生きる天王寺悠(てんのうじ・ゆう)。
その存在に、誰も興味を持たなかった――彼を除いて。
明るく人懐こい営業マン・梅田隼人(うめだ・はやと)は、
偶然見た「眼鏡を外した天王寺」の姿に、衝撃を受ける。
無機質な顔の奥に隠れていたのは、
誰よりも美しく、誰よりも脆い、ひとりの青年だった。
気づいてしまったから、もう目を逸らせない。
知りたくなったから、もう引き返せない。
すれ違いと無関心、
優しさと孤独、
微かな笑顔と、隠された心。
これは、
触れれば壊れそうな彼に、
それでも手を伸ばしてしまった、
不器用な男たちの恋のはなし。
タトゥーの甘い檻
マリ・シンジュ
BL
執着系わんこ攻(大学生)× 高潔な美形教授受(30代)
どのお話も単体でお楽しみいただけます。
「先生、ここ……僕の瞳を入れるから。ずっと、僕だけを見てて」
真面目な大学教授・新城が、大学生の・羽生にだけ許した、あまりにも淫らな「わがまま」。
それは、誰にも見えない内腿の奥深くに、消えないタトゥーを刻むこと。
「下書き」と称して肌を赤く染めるペン先の冷たさ。
アトリエの無機質なライトの下、四つん這いで晒される大人の矜持。
ずっと年下の青年の、必死で、残酷で、純粋な独占欲。
愚かだと知りながら、新城はその熱に絆され、ゆっくりと「聖域」を明け渡していく――。
「……お前のわがままには、最後まで付き合う」
針が通るその時、二人の関係は一生消えない「共犯」へと変わる。
執着攻め×年上受け、密やかに刻まれる秘め事のお話。
金の野獣と薔薇の番
むー
BL
結季には記憶と共に失った大切な約束があった。
❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎
止むを得ない事情で全寮制の学園の高等部に編入した結季。
彼は事故により7歳より以前の記憶がない。
高校進学時の検査でオメガ因子が見つかるまでベータとして養父母に育てられた。
オメガと判明したがフェロモンが出ることも発情期が来ることはなかった。
ある日、編入先の学園で金髪金眼の皇貴と出逢う。
彼の纒う薔薇の香りに発情し、結季の中のオメガが開花する。
その薔薇の香りのフェロモンを纏う皇貴は、全ての性を魅了し学園の頂点に立つアルファだ。
来るもの拒まずで性に奔放だが、番は持つつもりはないと公言していた。
皇貴との出会いが、少しずつ結季のオメガとしての運命が動き出す……?
4/20 本編開始。
『至高のオメガとガラスの靴』と同じ世界の話です。
(『至高の〜』完結から4ヶ月後の設定です。)
※シリーズものになっていますが、どの物語から読んでも大丈夫です。
【至高のオメガとガラスの靴】
↓
【金の野獣と薔薇の番】←今ココ
↓
【魔法使いと眠れるオメガ】
【完結】俺はずっと、おまえのお嫁さんになりたかったんだ。
ペガサスサクラ
BL
※あらすじ、後半の内容にやや二章のネタバレを含みます。
幼なじみの悠也に、恋心を抱くことに罪悪感を持ち続ける楓。
逃げるように東京の大学に行き、田舎故郷に二度と帰るつもりもなかったが、大学三年の夏休みに母親からの電話をきっかけに帰省することになる。
見慣れた駅のホームには、悠也が待っていた。あの頃と変わらない無邪気な笑顔のままー。
何年もずっと連絡をとらずにいた自分を笑って許す悠也に、楓は戸惑いながらも、そばにいたい、という気持ちを抑えられず一緒に過ごすようになる。もう少し今だけ、この夏が終わったら今度こそ悠也のもとを去るのだと言い聞かせながら。
しかしある夜、悠也が、「ずっと親友だ」と自分に無邪気に伝えてくることに耐えきれなくなった楓は…。
お互いを大切に思いながらも、「すき」の色が違うこととうまく向き合えない、不器用な少年二人の物語。
主人公楓目線の、片思いBL。
プラトニックラブ。
いいね、感想大変励みになっています!読んでくださって本当にありがとうございます。
2024.11.27 無事本編完結しました。感謝。
最終章投稿後、第四章 3.5話を追記しています。
(この回は箸休めのようなものなので、読まなくても次の章に差し支えはないです。)
番外編は、2人の高校時代のお話。
雪を溶かすように
春野ひつじ
BL
人間と獣人の争いが終わった。
和平の条件で人間の国へ人質としていった獣人国の第八王子、薫(ゆき)。そして、薫を助けた人間国の第一王子、悠(はる)。二人の距離は次第に近づいていくが、実は薫が人間国に行くことになったのには理由があった……。
溺愛・甘々です。
*物語の進み方がゆっくりです。エブリスタにも掲載しています
血のつながらない弟に誘惑されてしまいました。【完結】
まつも☆きらら
BL
突然できたかわいい弟。素直でおとなしくてすぐに仲良くなったけれど、むじゃきなその弟には実は人には言えない秘密があった。ある夜、俺のベッドに潜り込んできた弟は信じられない告白をする。
はじまりの朝
さくら乃
BL
子どもの頃は仲が良かった幼なじみ。
ある出来事をきっかけに離れてしまう。
中学は別の学校へ、そして、高校で再会するが、あの頃の彼とはいろいろ違いすぎて……。
これから始まる恋物語の、それは、“はじまりの朝”。
✳『番外編〜はじまりの裏側で』
『はじまりの朝』はナナ目線。しかし、その裏側では他キャラもいろいろ思っているはず。そんな彼ら目線のエピソード。
【完結】君の穿ったインソムニア
古都まとい
BL
建設会社の事務として働く佐野純平(さの じゅんぺい)は、上司のパワハラによって眠れない日々を過ごしていた。後輩の勧めで病院を受診した純平は不眠症の診断を受け、処方された薬を受け取りに薬局を訪れる。
純平が訪れた薬局には担当薬剤師制度があり、純平の担当薬剤師となったのは水瀬隼人(みなせ はやと)という茶髪の明るい青年だった。
「佐野さんの全部、俺が支えてあげますよ?」
陽キャ薬剤師×不眠症会社員の社会人BL。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる