聖なる雫の音楽少年~あの日のキミ

夏目奈緖

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 18時。

 番組の収録を終えた後、夢心地で控え室に戻った。さっきまで、夏樹と勅使河原さんの歌声を聞いていた。この番組には、俺たちの他にゲストが呼ばれた。ロックバンドのボーカリストの勅使河原さんと、R&Bの歌手の羽音さんだ。

 羽音さんが仕事のトラブルで収録にこられず、予定されていた勅使河原さんとのコラボが出来なかった。勅使河原さんが一人で歌うことも検討されたが、夏樹を相方に指名した。しかし、夏樹はガチガチに緊張して声が震えていたし、急遽の話で心の準備ができていない。

 今回は断るか?と長谷部さんが声をかけた時、勅使河原さんが直接会いに来てくれた。一緒に歌いたかった。その一言をきっかけにして、俺と佐久弥で説得した。ぜひとも歌わせてもらえと。その結果、勇気を出してコラボに参加したら、スタジオ内から拍手喝さいが起こった。その時の話を、今、加藤さんと話している。

「すごかったなーー」
「悠人君もよくやったわ。植本さん達から褒められたじゃないの」
「全力を出したもん。まだまだレベルが低いよ。頑張らないと!」

 2人が歌ったのは素敵な楽曲だった。心のドアという楽曲だ。夏樹のクリアーボイスに、勅使河原さんの深みのあるビブラートが重なり、気が付いたら涙が出ていた。いつか俺も、人を感動させるような楽曲をつくりたい。今は下積みの段階だ。すると、加藤さんが安心しましたと言いながら笑った。

「たまにいるんだけど。デビューして人気が出た後、”俺たちはすごいんだ!”って、天狗になる新人がいるのよ。売れると力関係が出来るから、ちやほやされてねー……。マネージャーとしては、コントロールして何とか整えるわけよ。”ディアドロップ” のケースと同じよ」
「佐久弥から聞いたよ。ボーカルの EMIRIと佐久弥が喧嘩になったんだよね?EMIRIがスタッフに偉そうにしてたから。佐久弥の方はソロで売れたもんね。そのことでも喧嘩になったって」
「その通りです。上手くいかなくなると、そういう問題が出てくるから。悠人君のことは安心しているのよ。ネガティブだから」
「うひぇーー?」
「ギター演奏に自信を持っても、まだまだ上がいるって、落ち込んでいるじゃない?そこがいいのよ。信頼できるポイントよ。ネガティブに自信を持ってね!」

 バシバシ!と背中を叩かれた。痛いはずなのに心が温かくなった。ウジウジした性格が役立ったのか?けっこう長所なのか?加藤さんがウンウンと頷いた。

(……裕理さんに話したい!)

 そう思っていると、着信が鳴った。早瀬からだった。スタジオの駐車場に着いたぞと言っている。もう出るところだったから、バタバタと控え室を出て行った。
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