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5-2(早瀬視点)
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午前10時。
A1会議室での会議に参加中だ。部長職以上の者が勢ぞろいして、前方のスクリーンの中期目標の数字を見て、今後の方針を共有している。凝った肩をまわして力を抜いた。コンタクトを外して正解だと思い知った。
(年末だなあ。これが終われば年末年始の休暇だ。お疲れ様でした……)
メガネをかけ直して正面を向くと、千川部長が座っていた。黒崎へ視線を向けているが、本人は気づいていない。今から資料を読むのに集中している。そばにいる橋本室長と枝川チーフへ声をかけた。二人には出席してもらった。来年の人事で昇進が決まっている。
「橋本。この資料を渡す。枝川は記録をしてくれ」
「山田さんの発言はどうされますか?千川部長のみで?」
「2人とも頼む。漏れがあってもかまわない」
「承知しました」
「もう始まるのか?」
「はい、スタートしたよ」
黒崎が読み終わったようだ。ちょうど議題がスタートした。そして派閥争いも始まった。これがメインともいえる。
「昨年の計画のうち……、研究開発費の適正管理、収益の改善については以上です……」
「では、意見交換を始めます。挙手をお願いします……」
全ての議題が終わった後、お待ちかねの意見交換が始まった。千川部長がメンバーへ視線を向けた。派閥のトップとされている。その隣には山田室長が控えている。
去年の秋のことだ。山田がオフィスで取っ組み合いを起こて、深川副社長から厳重注意を受けた。重い処罰が待っていたが軽く済んだ。俺が恩を売った形だ。おかげで山田が大人しくなった。その代わりに千川が目立つようになった。
(結局は同じか。蹴落としたところでメリットはないからなあ……)
蹴落せば代わりが出てくる。無駄に体力をそがれるぐらいなら恩を売る方がいい。仲間に入る人間が出てくる。表面上でも。
「千川部長の意見に賛同します……」
「賛成です……」
「経営企画部の……」
スムーズに進行している。今後、新しい変化が起こる。深川副社長が、代表取締役社長のポストへ就くためだ。ほぼ確定といえる。候補者との争いの結果だ。取締役会と総会で承認されるだろう。
派閥争いの方向性も変化した。誰に付けば有利なのか、ハッキリしたからだ。”深川副社長派” と、”千川部長派” の二つになった。大きなもめ事になっていないのは、黒崎社長の存在が大きい。会長職と社長を兼任して30年。どっしり構えたボスだ。
(黒崎製菓グループ内の企業を任せる、か……)
黒崎製菓で勤めあげるかと思っていた。役不足だが、あの時には了承の返事をした。グループ内なら同じことか。ここでやっていくと決めている。役目を全うする。
「営業企画部からは……」
「反対の意見です……。その件は……」
この会議室の中、それぞれの思惑が流れを作っている。綺麗な流れと渦の中、どこでも泳いできた。淡々と仕事をこなして黒崎製菓へ移ってきた。今ではいい仲間に囲まれている。
(悠人がいるから頑張れる。ああ、社長がこっちを向いた……)
会議が終了した後、社長がそばに来た。悠人からメールが入ったそうだ。今日本を返す時に、レンボーブリッジのお土産を渡しますと書いてあったと喜んでいる。
どんなものかな?と、さらに楽しそうに笑った。観光地グッズですと伝えると、さっそく家に帰って受け取りたいとそわそわし始めた。憧れていた”お祖父ちゃん”の姿そのものだ。
そこで、蔵之介の家に遊びに行く度に、優しく声をかけてくれた人の姿を思い出した。彼の祖父だった。学校はどうだ?莉奈ちゃんを見かけないが、風邪を引いていないか?と。シンプルな言葉が嬉しかった。何歳でもやり直せるなら、両親も同じだろうか?あり得ない話に首を振って、この思考を追い出した。
A1会議室での会議に参加中だ。部長職以上の者が勢ぞろいして、前方のスクリーンの中期目標の数字を見て、今後の方針を共有している。凝った肩をまわして力を抜いた。コンタクトを外して正解だと思い知った。
(年末だなあ。これが終われば年末年始の休暇だ。お疲れ様でした……)
メガネをかけ直して正面を向くと、千川部長が座っていた。黒崎へ視線を向けているが、本人は気づいていない。今から資料を読むのに集中している。そばにいる橋本室長と枝川チーフへ声をかけた。二人には出席してもらった。来年の人事で昇進が決まっている。
「橋本。この資料を渡す。枝川は記録をしてくれ」
「山田さんの発言はどうされますか?千川部長のみで?」
「2人とも頼む。漏れがあってもかまわない」
「承知しました」
「もう始まるのか?」
「はい、スタートしたよ」
黒崎が読み終わったようだ。ちょうど議題がスタートした。そして派閥争いも始まった。これがメインともいえる。
「昨年の計画のうち……、研究開発費の適正管理、収益の改善については以上です……」
「では、意見交換を始めます。挙手をお願いします……」
全ての議題が終わった後、お待ちかねの意見交換が始まった。千川部長がメンバーへ視線を向けた。派閥のトップとされている。その隣には山田室長が控えている。
去年の秋のことだ。山田がオフィスで取っ組み合いを起こて、深川副社長から厳重注意を受けた。重い処罰が待っていたが軽く済んだ。俺が恩を売った形だ。おかげで山田が大人しくなった。その代わりに千川が目立つようになった。
(結局は同じか。蹴落としたところでメリットはないからなあ……)
蹴落せば代わりが出てくる。無駄に体力をそがれるぐらいなら恩を売る方がいい。仲間に入る人間が出てくる。表面上でも。
「千川部長の意見に賛同します……」
「賛成です……」
「経営企画部の……」
スムーズに進行している。今後、新しい変化が起こる。深川副社長が、代表取締役社長のポストへ就くためだ。ほぼ確定といえる。候補者との争いの結果だ。取締役会と総会で承認されるだろう。
派閥争いの方向性も変化した。誰に付けば有利なのか、ハッキリしたからだ。”深川副社長派” と、”千川部長派” の二つになった。大きなもめ事になっていないのは、黒崎社長の存在が大きい。会長職と社長を兼任して30年。どっしり構えたボスだ。
(黒崎製菓グループ内の企業を任せる、か……)
黒崎製菓で勤めあげるかと思っていた。役不足だが、あの時には了承の返事をした。グループ内なら同じことか。ここでやっていくと決めている。役目を全うする。
「営業企画部からは……」
「反対の意見です……。その件は……」
この会議室の中、それぞれの思惑が流れを作っている。綺麗な流れと渦の中、どこでも泳いできた。淡々と仕事をこなして黒崎製菓へ移ってきた。今ではいい仲間に囲まれている。
(悠人がいるから頑張れる。ああ、社長がこっちを向いた……)
会議が終了した後、社長がそばに来た。悠人からメールが入ったそうだ。今日本を返す時に、レンボーブリッジのお土産を渡しますと書いてあったと喜んでいる。
どんなものかな?と、さらに楽しそうに笑った。観光地グッズですと伝えると、さっそく家に帰って受け取りたいとそわそわし始めた。憧れていた”お祖父ちゃん”の姿そのものだ。
そこで、蔵之介の家に遊びに行く度に、優しく声をかけてくれた人の姿を思い出した。彼の祖父だった。学校はどうだ?莉奈ちゃんを見かけないが、風邪を引いていないか?と。シンプルな言葉が嬉しかった。何歳でもやり直せるなら、両親も同じだろうか?あり得ない話に首を振って、この思考を追い出した。
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