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12-5(早瀬視点)
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昼過ぎに、佐久弥と蔵之介が訪ねてきた。悠人が蔵之介を案内して、庭へ下りて行った。ここが気に入ったようだ。
まさか、ここに帰って来るとは思わなかった。8810号室と名付けられた時には、個性的な家の間取りが笑いに変わった。
この真上には、俺が使っていた部屋がある。現在は寝室にした。隣が悠人の楽器部屋だ。寂しがりだから、部屋数を必要としない。
佐久弥が向かいのソファーに座り、島川の話題を出してきた。堂々と話を続けた。悠人に聞かれた方がいいのにと言いながら。
「島川氏の話の続きだ。あまり親しくなるな。分かっているか?」
「ああ。付き合いをするのは、動きを知るためだ。悠人に目が向いた可能性がある。モデル起用の件には違和感がある。話題性があるにしても、すでに知名度のある人を起用するだろう。夏樹に話があるなら、まだ分かる。MIDSHIPのイメージじゃなくても」
たった一度会った。それだけで決めるものか?何か裏がある。いくらスピード感を持った島川社長でもだ。
黒崎には、島川からランチに誘われた程度のことを話してある。あの人のことだ。不安感を口にすれば、本人へ問いただすだろう。兄弟だからといって信用していない。
佐久弥との接点があったとは意外だ。ナンパされただけでは嫌わないだろう。何があったのか想像がつく。
「俺に何が起きたのか気になるだろー?」
「ああ、気になる」
「告白され続けただけだ。裕理のことが好きだと言ってやった。一昨年の8月ごろの話だ。避けていたけどなー。パーティーで出くわした」
これで島川の考えに予想がついた。俺のことを嫌っているのは確実だ。好きと嫌いは表裏一体で、よく似た感情をしている。ここまで想いを寄せられたのは光栄でもある。
「それで因縁をつけてきたのか。八つ当たりだなあ。淡いグリーンが魅力的。ユーリという名前が似合っている……か。中身のことに触れていない。はははーー」
「仕事以外では悪いことをしない。マジで嫌いな相手には襲ってくるぞ。エレベーターに同乗するな」
繋がりを持って損はない。有利なものとして受け入れている。悠人が輝くのなら構わない。今までの俺は厄介な相手とは近づきもしなかったが、考え方が変化した。力を欲するようになり、散らばった家族を集めたいともまで思うようになった。
カタカタ!
するとその時だ。悠人がリビングに戻ってきた。わざと大きめの音を立てながら。俺たちに気づかってのことだ。
「裕理さーん。丸太君はここでいいかなー?」
「隅っこにしなくていい。ソファーの隣にしなさい」
「はーーい」
さっそく椅子に腰かけている。身長が171㎝あるが、子供のように見えた。それを口にすると、変な趣味があるんじゃないのかと、佐久弥から指摘された。
「裕理さーん。電話だよー?」
「……ああ、珍しい人からだ。切れたか」
画面表示には”桑園怜”と出ている。今月帰国すると聞いていた。海外で活躍しているデザイナーであり、黒崎の幼なじみだ。秘書時代は一緒に飲みに行っていた。黒崎のお守り役を労う目的で、桑園さんからよく誘われていた。
「桑園怜さんだ。夏樹君が着た、赤い着物のデザイナーさんだよ」
「ほお……。黒崎さん繋がりだったよね?仲がいいの?」
「それなりに。いい人だよ」
さっそく電話をかけると、女性バージョンの口調が聞こえてきた。桑園さんは女装が趣味であり、その際には言葉遣いも変化する。そして、いつも彼からナンパされている。
デザイナーという仕事柄なのか、常にインスピレーションを大事にしている分だけ、周りを気にしない性格をしている。冗談か本気かで言えば、グレーに当たるだろう。恋愛対象は同性で、俺はストライクゾーンらしい。それでも気楽につき合えるのは、性格が合うからだ。
「こんにちは。久しぶりだね」
「……お久しぶりね。昨日、帰国したの。いつ会えるー?」
「5月はコンサートがあるから、その手前がいい」
「そこまで引き延ばすわけがないでしょう。裕理君を待たせないわ。明日、会いに行ってもいい?」
「明日は墓参りで出かける。……パートナーの祖母の。友達の法事もある」
「ごめんなさい。17日はどう?21日でも」
「祭日がいい。21日にしよう。俺の方で店を選んでもいいか?」
「私が誘ったのよ。準備しておくわ。悠人君も一緒にね。圭ちゃん……、黒崎にはスルーされている。そのうち会うよ」
「ははは。話しておくよ。桑園さんが帰国したよと……」
桑園さんの口調が男っぽいものに変わった。男性の格好をしている時はこうなる。通話を終えると、悠人達から興味深そうに見つめられていた。浮気相手じゃないぞと話すと、そんなに慌てるなと言いながら笑っていた。
「はいはい。良い子だね。おいでーー」
「もうーーー」
「じゃあ、そろそろ俺達は帰るぞーー」
「悠人君。またね」
「はい!」
明日は遠出だ。お開きにした後、新しい食器を開封した。この家に、沢山のいい思い出を詰め込むために。
まさか、ここに帰って来るとは思わなかった。8810号室と名付けられた時には、個性的な家の間取りが笑いに変わった。
この真上には、俺が使っていた部屋がある。現在は寝室にした。隣が悠人の楽器部屋だ。寂しがりだから、部屋数を必要としない。
佐久弥が向かいのソファーに座り、島川の話題を出してきた。堂々と話を続けた。悠人に聞かれた方がいいのにと言いながら。
「島川氏の話の続きだ。あまり親しくなるな。分かっているか?」
「ああ。付き合いをするのは、動きを知るためだ。悠人に目が向いた可能性がある。モデル起用の件には違和感がある。話題性があるにしても、すでに知名度のある人を起用するだろう。夏樹に話があるなら、まだ分かる。MIDSHIPのイメージじゃなくても」
たった一度会った。それだけで決めるものか?何か裏がある。いくらスピード感を持った島川社長でもだ。
黒崎には、島川からランチに誘われた程度のことを話してある。あの人のことだ。不安感を口にすれば、本人へ問いただすだろう。兄弟だからといって信用していない。
佐久弥との接点があったとは意外だ。ナンパされただけでは嫌わないだろう。何があったのか想像がつく。
「俺に何が起きたのか気になるだろー?」
「ああ、気になる」
「告白され続けただけだ。裕理のことが好きだと言ってやった。一昨年の8月ごろの話だ。避けていたけどなー。パーティーで出くわした」
これで島川の考えに予想がついた。俺のことを嫌っているのは確実だ。好きと嫌いは表裏一体で、よく似た感情をしている。ここまで想いを寄せられたのは光栄でもある。
「それで因縁をつけてきたのか。八つ当たりだなあ。淡いグリーンが魅力的。ユーリという名前が似合っている……か。中身のことに触れていない。はははーー」
「仕事以外では悪いことをしない。マジで嫌いな相手には襲ってくるぞ。エレベーターに同乗するな」
繋がりを持って損はない。有利なものとして受け入れている。悠人が輝くのなら構わない。今までの俺は厄介な相手とは近づきもしなかったが、考え方が変化した。力を欲するようになり、散らばった家族を集めたいともまで思うようになった。
カタカタ!
するとその時だ。悠人がリビングに戻ってきた。わざと大きめの音を立てながら。俺たちに気づかってのことだ。
「裕理さーん。丸太君はここでいいかなー?」
「隅っこにしなくていい。ソファーの隣にしなさい」
「はーーい」
さっそく椅子に腰かけている。身長が171㎝あるが、子供のように見えた。それを口にすると、変な趣味があるんじゃないのかと、佐久弥から指摘された。
「裕理さーん。電話だよー?」
「……ああ、珍しい人からだ。切れたか」
画面表示には”桑園怜”と出ている。今月帰国すると聞いていた。海外で活躍しているデザイナーであり、黒崎の幼なじみだ。秘書時代は一緒に飲みに行っていた。黒崎のお守り役を労う目的で、桑園さんからよく誘われていた。
「桑園怜さんだ。夏樹君が着た、赤い着物のデザイナーさんだよ」
「ほお……。黒崎さん繋がりだったよね?仲がいいの?」
「それなりに。いい人だよ」
さっそく電話をかけると、女性バージョンの口調が聞こえてきた。桑園さんは女装が趣味であり、その際には言葉遣いも変化する。そして、いつも彼からナンパされている。
デザイナーという仕事柄なのか、常にインスピレーションを大事にしている分だけ、周りを気にしない性格をしている。冗談か本気かで言えば、グレーに当たるだろう。恋愛対象は同性で、俺はストライクゾーンらしい。それでも気楽につき合えるのは、性格が合うからだ。
「こんにちは。久しぶりだね」
「……お久しぶりね。昨日、帰国したの。いつ会えるー?」
「5月はコンサートがあるから、その手前がいい」
「そこまで引き延ばすわけがないでしょう。裕理君を待たせないわ。明日、会いに行ってもいい?」
「明日は墓参りで出かける。……パートナーの祖母の。友達の法事もある」
「ごめんなさい。17日はどう?21日でも」
「祭日がいい。21日にしよう。俺の方で店を選んでもいいか?」
「私が誘ったのよ。準備しておくわ。悠人君も一緒にね。圭ちゃん……、黒崎にはスルーされている。そのうち会うよ」
「ははは。話しておくよ。桑園さんが帰国したよと……」
桑園さんの口調が男っぽいものに変わった。男性の格好をしている時はこうなる。通話を終えると、悠人達から興味深そうに見つめられていた。浮気相手じゃないぞと話すと、そんなに慌てるなと言いながら笑っていた。
「はいはい。良い子だね。おいでーー」
「もうーーー」
「じゃあ、そろそろ俺達は帰るぞーー」
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