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23時。
この静まり返った室内では、無言の時間が流れた。何から話すべきかと思いめぐらせた。今まで”優しい裕理さん”に変身していたのか?島川さんはどんな嘘をついていたのか。どうして?母のことで何があったのか。進めるとは何のことを指しているのだろうか。
「何から聞けばいいのか分からないよ」
「俺が順番を選ぶ。心配しなくていい。怖かっただろう?君のことを見れば分かる。俺が強い言い方をすると頑なになる。嫌われたくない」
「それが理由なの?アホらしいよ。ヒーローを嫌っていたから、別の裕理さんになったんだよね?何でもいいってば。もうーー」
そっと抱きしめられた。背中をポンポンと叩かれて、深呼吸をしろと囁かれた。俺のことでは不安材料があるそうだ。両親から高圧的な言い方をされて育ってきたことで、ある反応をしているそうだ。自分では見当がつかない。
「答えを言う。島川さんは君のお母さんのことが嫌いなんだ。君のことを利用していると思っている。たまに関わってくる両親のことを、今まで親だと思っていたのか?」
「うん。ああいう人でもって……」
「だから今まで言わないようにした。もっと時間をかけようと思った。この根本には、俺が君に嫌われたくない思いからだ。悲しませたくない。どんなことでも」
「ちゃんと分かっているよ。裕理さんが辛いだろ。俺まで辛くなるから、自然体にしてよ。”誰かに愛されたい”のが、俺の気持ち。”嫌われたくない”のと似たようなものだよ。だから反発するよ。これを手放したい……」
「悠人……」
それなら俺に聞かせる話があるという。気持ちが落ち着いたから、今ここで話してもらった。
「君の両親のことだ。親だと考えずに、他人だったら?と考えてみろ。……久田達弘さんは、息子を可愛がっていなかった。ある事件に巻き込まれそうになり、弁護士を立てた。その人は友達だ。床に頭をこすりつけるようにして頼んでいた。息子の将来を守ってくれと。その後は訪ねて来るようになって、いつも電話をかけてくる。……いいじゃないか。そう思うだろう?」
この話には素直に頷けた。そして、母のことが出された。森井美夕さんのケースだというから、聞きたくないと直感的に思った。
「恋人が事件を起こした。息子まで疑われそうだ。恋人と自分自身のために弁護士を探した。中山弁護士に当たると、息子の弁護を担当すると聞いた。それで初めて、息子の弁護人が誰かを知った。……仕事先の社長さんとは事前に話し合っていた。どういう事が想定されるのか。でも、息子のことは考えていなかった。……どうだ?」
「半々の答えになるよ。息子のことは大丈夫と思っていた。そういう考え方があるよ」
「そうか。さらに続きがある。……その後は落ち着いて、息子を介して仕事が決まった。いい息子だと社内で話した。取引先の社長へこう話した。私から話をすれば、何でも引き受けますのでと。……どうだと思う?」
最悪の人だ。言葉にすることが出来ない。現実を知るのが怖かった。優しい顔を見せられて、言うことを聞けば、もっと与えられると思っていた。
雪解けが始まったのは嘘だったのか?親は謝ってくれるだろう?今更のように期待をしてしまった。諦めるという距離感を無くしていたことに気づいた。
この静まり返った室内では、無言の時間が流れた。何から話すべきかと思いめぐらせた。今まで”優しい裕理さん”に変身していたのか?島川さんはどんな嘘をついていたのか。どうして?母のことで何があったのか。進めるとは何のことを指しているのだろうか。
「何から聞けばいいのか分からないよ」
「俺が順番を選ぶ。心配しなくていい。怖かっただろう?君のことを見れば分かる。俺が強い言い方をすると頑なになる。嫌われたくない」
「それが理由なの?アホらしいよ。ヒーローを嫌っていたから、別の裕理さんになったんだよね?何でもいいってば。もうーー」
そっと抱きしめられた。背中をポンポンと叩かれて、深呼吸をしろと囁かれた。俺のことでは不安材料があるそうだ。両親から高圧的な言い方をされて育ってきたことで、ある反応をしているそうだ。自分では見当がつかない。
「答えを言う。島川さんは君のお母さんのことが嫌いなんだ。君のことを利用していると思っている。たまに関わってくる両親のことを、今まで親だと思っていたのか?」
「うん。ああいう人でもって……」
「だから今まで言わないようにした。もっと時間をかけようと思った。この根本には、俺が君に嫌われたくない思いからだ。悲しませたくない。どんなことでも」
「ちゃんと分かっているよ。裕理さんが辛いだろ。俺まで辛くなるから、自然体にしてよ。”誰かに愛されたい”のが、俺の気持ち。”嫌われたくない”のと似たようなものだよ。だから反発するよ。これを手放したい……」
「悠人……」
それなら俺に聞かせる話があるという。気持ちが落ち着いたから、今ここで話してもらった。
「君の両親のことだ。親だと考えずに、他人だったら?と考えてみろ。……久田達弘さんは、息子を可愛がっていなかった。ある事件に巻き込まれそうになり、弁護士を立てた。その人は友達だ。床に頭をこすりつけるようにして頼んでいた。息子の将来を守ってくれと。その後は訪ねて来るようになって、いつも電話をかけてくる。……いいじゃないか。そう思うだろう?」
この話には素直に頷けた。そして、母のことが出された。森井美夕さんのケースだというから、聞きたくないと直感的に思った。
「恋人が事件を起こした。息子まで疑われそうだ。恋人と自分自身のために弁護士を探した。中山弁護士に当たると、息子の弁護を担当すると聞いた。それで初めて、息子の弁護人が誰かを知った。……仕事先の社長さんとは事前に話し合っていた。どういう事が想定されるのか。でも、息子のことは考えていなかった。……どうだ?」
「半々の答えになるよ。息子のことは大丈夫と思っていた。そういう考え方があるよ」
「そうか。さらに続きがある。……その後は落ち着いて、息子を介して仕事が決まった。いい息子だと社内で話した。取引先の社長へこう話した。私から話をすれば、何でも引き受けますのでと。……どうだと思う?」
最悪の人だ。言葉にすることが出来ない。現実を知るのが怖かった。優しい顔を見せられて、言うことを聞けば、もっと与えられると思っていた。
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