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ここで待っていてくれ。早瀬から温かいブランケットを羽織らされて、そばにある椅子に座った。ひんやりした書斎の中、早瀬が島川さんに電話をかけた。しかし、何度かけても繋がらない。明日まで待ちたくないからと、10回目の発信を押していた。
静かにしている約束を守り、窓辺に立って外を眺めた。月明かりが庭へ差し込み、光を照らした。夜空には満月が浮かんでいる。
どこかで聞いたことのある話を思い出した。満ちた後で欠けていく月は、要らないものを手放す意味があるそうだ。捨てるのではない。俺は何を手放せるだろうか。要らないものはない。全てのものが大事だ。
「……島川さん。やっと出たのか。話せるだろう?」
電話が繋がったのか。早瀬の声色が冷たく響いた。それは気のせいではなく、会話が始まった後も同じだった。冷え凍りそうだ。さっき向けられた、一瞬だけの視線のように。これから電話をかけるから、静かにしていてくれと言われた時だった。
(裕理さん。追い詰めてごめんなさい。こんな姿を見せたくなかったんだね……)
早瀬はいつも優しくて、俺が安心できる話し方をしていた。最近はそうでもなくて、怖い人になっていた。しかし、それが自然体に見えたから、優しいばかりなのは、偽りの姿なのだろう。
俺がヒーローの姿を見て嫌がったからか?冷たくて感情がないと言ってしまったことがある。それを含めて早瀬であり、そのままのあなたが大好きだと告げた。31歳の早瀬裕理が生まれたはずなのに、最近見なくなっていたヒーローの姿を封印していたのか?二つの姿が融合して、優しい人に落ち着いた。そうではないのか?
(俺のための、”裕理さん”に変身していたのかな……)
出会った時は、俺のことを叱りつけていた。喧嘩をして逃げ出したからだ。都内へ引っ越したばかりで帰り道が分からないのに。今ならどうだろうか?きっと叱らないだろう。仕方のない子だと笑い、早瀬の方から仲直りしてくる。
「嘘をつくな。いい加減にしろ!」
早瀬の冷たい声色での一喝が響き渡った。静かな室内では、島川さんの声が聞こえている。ほんの僅かでも、緊迫した空気を読み取れた。
どんな嘘をついているのか?俺なら分かるかもしれない。自分を守るためならダメだと諫めよう。それだけ多くの話をした。そばへ行こうとすると、まだ来るなと制止された。視線一つだけで。
「約束を破ったことを指摘している。……笑うことじゃないぞ。そうやって許してもらえていたのか?子供のような姿を見せて。あんたがそうなったのは、よっぽどのことがあったせいだろう。それを武器にするな。俺には通用しない。……約束を破った以上は進める。森井氏のことか?こっちで探る」
「どうしてお母さんのことが出てくるんだよ?」
「悠人、そっちで待て」
「あ……」
悠人君。島川さんから名前を呼ばれる声がした。普段通りの声なのに、スピーカーを通すと悲しそうに聞こえた。
みんなことが嫌い。俺のことは大好きだと言っているようだ。俺が似ているからか?だったら俺のことも嫌いだろう。それなら反対もありうる。みんなのことが好きだと。
好きと嫌いはよく似ている感情だと思う。好きな人のことを一日中考えて、嫌いな人のことは、シャットアウトしても思い浮かぶ。どちらなのか分からないのではないか?そこで声を張り上げた。
「島川さん。みんなのことが好きだろ?」
大きな声で言ったから聞こえたのだろうか。早瀬がため息をついた。ああやって心配して、居ても立っても居られない子が存在する。やぶれかぶれはやめろと言っている。
「悠人は俺のものだ。あんたには渡さない。連絡をしてくるな。……理由か?悠人が優しいからだ。偽りだらけの姿に惑わされたくない。それを止めようと決めたら、俺に話してこい。友達関係を再開させるように考える。もちろん前向きにだ。NOとは言わない」
「よかった……。裕理さん。ありがとう」
島川さんには心許せる人が居ないのだろう。喧嘩の内容は分からないが、酷い言い方をしたに決まっている。黒崎さんも同じだ。しかし、親友の存在があったから居場所があった。それが二人の違いだ。この話なら、俺たち二人が居場所になれる。早瀬は俺にとって100%危険な人物なら、近づけようとしない。
「俺のことを愛していると言ったな?恋愛感情だと。……否定しないのか。悠人のことは……同じだと?二つ存在するのか。あんた、本気でコレクターしているだろう?感情を分けている。だから分からなくなる。どうしてだ?」
コレクター。いろんな想いを集めているのか。俺ならその理由が分かる。誰かに愛されたい。だから自分の物にするというのだろう。
「裕理さん。俺も話したい」
「そっちにいてくれ」
来るなと止められても怯まない。何度も早瀬の手から電話を奪い取ろうとした。その結果、スピーカー設定を変えて、俺も話せるようにしてもらった。
「もしもし。島川さん……、誰かに愛されたいんだよね?だから悪戯をしているんだろ?度合いが笑えないぐらいだけど。……小さい子が、関心を引きたくてするんだ。わざと問題児になるんだ。……44歳でも関係ないよ。島川さんが実際にその状態だもん。……裕理さん。否定する?」
「それは否定できない。今日はここまでにする。ヒートアップしたままだと変な方向に行きそうだ。とにかく伝えたいことは一点のみ。悠人に連絡してくるな!」
あっさりと通話が終了した。これで話がついたと言いながら、早瀬が大きく息を吐いた。眉を寄せている。とてもつらそうな顔をしている。俺のせいだろう。
静かにしている約束を守り、窓辺に立って外を眺めた。月明かりが庭へ差し込み、光を照らした。夜空には満月が浮かんでいる。
どこかで聞いたことのある話を思い出した。満ちた後で欠けていく月は、要らないものを手放す意味があるそうだ。捨てるのではない。俺は何を手放せるだろうか。要らないものはない。全てのものが大事だ。
「……島川さん。やっと出たのか。話せるだろう?」
電話が繋がったのか。早瀬の声色が冷たく響いた。それは気のせいではなく、会話が始まった後も同じだった。冷え凍りそうだ。さっき向けられた、一瞬だけの視線のように。これから電話をかけるから、静かにしていてくれと言われた時だった。
(裕理さん。追い詰めてごめんなさい。こんな姿を見せたくなかったんだね……)
早瀬はいつも優しくて、俺が安心できる話し方をしていた。最近はそうでもなくて、怖い人になっていた。しかし、それが自然体に見えたから、優しいばかりなのは、偽りの姿なのだろう。
俺がヒーローの姿を見て嫌がったからか?冷たくて感情がないと言ってしまったことがある。それを含めて早瀬であり、そのままのあなたが大好きだと告げた。31歳の早瀬裕理が生まれたはずなのに、最近見なくなっていたヒーローの姿を封印していたのか?二つの姿が融合して、優しい人に落ち着いた。そうではないのか?
(俺のための、”裕理さん”に変身していたのかな……)
出会った時は、俺のことを叱りつけていた。喧嘩をして逃げ出したからだ。都内へ引っ越したばかりで帰り道が分からないのに。今ならどうだろうか?きっと叱らないだろう。仕方のない子だと笑い、早瀬の方から仲直りしてくる。
「嘘をつくな。いい加減にしろ!」
早瀬の冷たい声色での一喝が響き渡った。静かな室内では、島川さんの声が聞こえている。ほんの僅かでも、緊迫した空気を読み取れた。
どんな嘘をついているのか?俺なら分かるかもしれない。自分を守るためならダメだと諫めよう。それだけ多くの話をした。そばへ行こうとすると、まだ来るなと制止された。視線一つだけで。
「約束を破ったことを指摘している。……笑うことじゃないぞ。そうやって許してもらえていたのか?子供のような姿を見せて。あんたがそうなったのは、よっぽどのことがあったせいだろう。それを武器にするな。俺には通用しない。……約束を破った以上は進める。森井氏のことか?こっちで探る」
「どうしてお母さんのことが出てくるんだよ?」
「悠人、そっちで待て」
「あ……」
悠人君。島川さんから名前を呼ばれる声がした。普段通りの声なのに、スピーカーを通すと悲しそうに聞こえた。
みんなことが嫌い。俺のことは大好きだと言っているようだ。俺が似ているからか?だったら俺のことも嫌いだろう。それなら反対もありうる。みんなのことが好きだと。
好きと嫌いはよく似ている感情だと思う。好きな人のことを一日中考えて、嫌いな人のことは、シャットアウトしても思い浮かぶ。どちらなのか分からないのではないか?そこで声を張り上げた。
「島川さん。みんなのことが好きだろ?」
大きな声で言ったから聞こえたのだろうか。早瀬がため息をついた。ああやって心配して、居ても立っても居られない子が存在する。やぶれかぶれはやめろと言っている。
「悠人は俺のものだ。あんたには渡さない。連絡をしてくるな。……理由か?悠人が優しいからだ。偽りだらけの姿に惑わされたくない。それを止めようと決めたら、俺に話してこい。友達関係を再開させるように考える。もちろん前向きにだ。NOとは言わない」
「よかった……。裕理さん。ありがとう」
島川さんには心許せる人が居ないのだろう。喧嘩の内容は分からないが、酷い言い方をしたに決まっている。黒崎さんも同じだ。しかし、親友の存在があったから居場所があった。それが二人の違いだ。この話なら、俺たち二人が居場所になれる。早瀬は俺にとって100%危険な人物なら、近づけようとしない。
「俺のことを愛していると言ったな?恋愛感情だと。……否定しないのか。悠人のことは……同じだと?二つ存在するのか。あんた、本気でコレクターしているだろう?感情を分けている。だから分からなくなる。どうしてだ?」
コレクター。いろんな想いを集めているのか。俺ならその理由が分かる。誰かに愛されたい。だから自分の物にするというのだろう。
「裕理さん。俺も話したい」
「そっちにいてくれ」
来るなと止められても怯まない。何度も早瀬の手から電話を奪い取ろうとした。その結果、スピーカー設定を変えて、俺も話せるようにしてもらった。
「もしもし。島川さん……、誰かに愛されたいんだよね?だから悪戯をしているんだろ?度合いが笑えないぐらいだけど。……小さい子が、関心を引きたくてするんだ。わざと問題児になるんだ。……44歳でも関係ないよ。島川さんが実際にその状態だもん。……裕理さん。否定する?」
「それは否定できない。今日はここまでにする。ヒートアップしたままだと変な方向に行きそうだ。とにかく伝えたいことは一点のみ。悠人に連絡してくるな!」
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