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ああー、忘れて来ちゃったよ。落としたの、間違いだろう?そう言うなよ~。取りに行きたい。もちろんだ。こっちに来い。
そういうやり取りをした後、来た道を戻って本社ビルへ向かった。レストランの近くまで来た時に、大事なプレゼントの入った紙袋を持っていないことに気づいたからだ。たぶん、植え込みで転んだ時に、向こうへ落ちたのだろう。
楽しそうに笑っている人達が通り過ぎて行った。疲れた顔をして、急ぎ足で駅へ向かっている人も見かけた。その中に枝川さんを見つけたから声を掛けようとすると、黒崎から止められた。大きな仕事を動かしている際中だから、帰り道は一人にしておいた方がいいのだと言われた。
ビルの灯りを頼りに植え込みを探すと、紙袋が落ちているのを発見した。よかった。敷地内に入って拾いあげて、黒崎の元へ戻った。
「おまたせ!」
「見つかって良かった」
「うん。12月10日まで保管しておくよ。ふふん」
「何を買ってくれたんだ?」
「それは内緒だよ~。変な物じゃないからね」
「当てにならない」
そう言いつつも、興味ありげに紙袋を覗こうとしている。ここまで期待されるとガッカリされるから、ささっと話題を変えた。
「早瀬さんの昇進祝いをしたいんだ。ちょうどいいよね?好きなものを食べに行こうよ」
「そうだな。誕生日は7日だから、一週間後だ」
「考えておこうね。はい。ジュリエットを持ってよ」
「ああ。大きな人形だな。よくゲームで取れたものだ」
黒崎がジュリエットの人形を持ち上げた。違和感なく似合っているから、面白くて笑った。
「そんなにおかしいのか?」
「ううん、可愛いなって思ったんだよ」
「バカヤロウ」
「……ふん。ねえ、黒崎さん?」
「どうした?」
「身柄を寄越せーー!」
「……こら、走るな」
「いいから!ついてこーい!」
「……待て。裕理の声がする」
「……ああ、本当だ」
黒崎が振り向いた方向から、早瀬さんの声が聞こえて来た。ここから離れた場所に立っていて、悠人の姿がないから見回した。
そして、黒崎と同時に吹き出して笑った。ビル灯りが遮られた高い垣根のそばに悠人が立ち、あのステッキを振りかざして遊んでいた。
「仲直りができたんだね。すぐに立ち直るんだね。あの二人。アツアツだもんねえ」
「今日の帰りに、ジュエリーショップへ連れて行く話をしていた。食事は口実だそうだ」
「そうだったんだ?だからあんなにテンションが高いのかな?……あれ?嫌がっているよ~、止めて来ようか?」
「そのままにしておけ。裕理も楽しそうだ。面白いものが見られた」
「心を開くと楽になるよ!って、ヒロインのミカリンが魔物に言うんだよ。恥ずかしいって言い返したら、魔物が人間に戻れるんだ。……ちょうど始まったよ」
悠人が光るステッキを振りかざし、早瀬さんに魔法をかけていた。そして、早瀬さんが慌てて言い返した。恥ずかしいだろう、やめろと。微笑ましくて、黒崎と二人で笑った。
今夜は天気がいい。ここからは星空が見えないが、南の方にあるアンタレスが視界に入った。さそり座のメンバー星であり、まるで追いかけっこのように、オリオンの後をついて行く。あの2人のように。
「欲しいものを獲ったんだよ。俺に身柄を寄越せよー」
「はいはい。お手柔らかに頼む」
今夜は素直に手を差し出してくれた。白い吐息が宙に舞い、ふわっと溶けるようにして消えた。まるで魔法のようだ。
同じことを連想したのだろうか?黒崎から手を握り直されて、強引に引っ張られた。それが嬉しくて胸が痛くなり、大人しくついて行った。
俺達も追いかけっこをしている。魔法は解除済みだからこそ、新しい束縛をしている。今度は俺の方から繋いだ手を引っ張り返して、今夜のレストランへと連行してやった。
そういうやり取りをした後、来た道を戻って本社ビルへ向かった。レストランの近くまで来た時に、大事なプレゼントの入った紙袋を持っていないことに気づいたからだ。たぶん、植え込みで転んだ時に、向こうへ落ちたのだろう。
楽しそうに笑っている人達が通り過ぎて行った。疲れた顔をして、急ぎ足で駅へ向かっている人も見かけた。その中に枝川さんを見つけたから声を掛けようとすると、黒崎から止められた。大きな仕事を動かしている際中だから、帰り道は一人にしておいた方がいいのだと言われた。
ビルの灯りを頼りに植え込みを探すと、紙袋が落ちているのを発見した。よかった。敷地内に入って拾いあげて、黒崎の元へ戻った。
「おまたせ!」
「見つかって良かった」
「うん。12月10日まで保管しておくよ。ふふん」
「何を買ってくれたんだ?」
「それは内緒だよ~。変な物じゃないからね」
「当てにならない」
そう言いつつも、興味ありげに紙袋を覗こうとしている。ここまで期待されるとガッカリされるから、ささっと話題を変えた。
「早瀬さんの昇進祝いをしたいんだ。ちょうどいいよね?好きなものを食べに行こうよ」
「そうだな。誕生日は7日だから、一週間後だ」
「考えておこうね。はい。ジュリエットを持ってよ」
「ああ。大きな人形だな。よくゲームで取れたものだ」
黒崎がジュリエットの人形を持ち上げた。違和感なく似合っているから、面白くて笑った。
「そんなにおかしいのか?」
「ううん、可愛いなって思ったんだよ」
「バカヤロウ」
「……ふん。ねえ、黒崎さん?」
「どうした?」
「身柄を寄越せーー!」
「……こら、走るな」
「いいから!ついてこーい!」
「……待て。裕理の声がする」
「……ああ、本当だ」
黒崎が振り向いた方向から、早瀬さんの声が聞こえて来た。ここから離れた場所に立っていて、悠人の姿がないから見回した。
そして、黒崎と同時に吹き出して笑った。ビル灯りが遮られた高い垣根のそばに悠人が立ち、あのステッキを振りかざして遊んでいた。
「仲直りができたんだね。すぐに立ち直るんだね。あの二人。アツアツだもんねえ」
「今日の帰りに、ジュエリーショップへ連れて行く話をしていた。食事は口実だそうだ」
「そうだったんだ?だからあんなにテンションが高いのかな?……あれ?嫌がっているよ~、止めて来ようか?」
「そのままにしておけ。裕理も楽しそうだ。面白いものが見られた」
「心を開くと楽になるよ!って、ヒロインのミカリンが魔物に言うんだよ。恥ずかしいって言い返したら、魔物が人間に戻れるんだ。……ちょうど始まったよ」
悠人が光るステッキを振りかざし、早瀬さんに魔法をかけていた。そして、早瀬さんが慌てて言い返した。恥ずかしいだろう、やめろと。微笑ましくて、黒崎と二人で笑った。
今夜は天気がいい。ここからは星空が見えないが、南の方にあるアンタレスが視界に入った。さそり座のメンバー星であり、まるで追いかけっこのように、オリオンの後をついて行く。あの2人のように。
「欲しいものを獲ったんだよ。俺に身柄を寄越せよー」
「はいはい。お手柔らかに頼む」
今夜は素直に手を差し出してくれた。白い吐息が宙に舞い、ふわっと溶けるようにして消えた。まるで魔法のようだ。
同じことを連想したのだろうか?黒崎から手を握り直されて、強引に引っ張られた。それが嬉しくて胸が痛くなり、大人しくついて行った。
俺達も追いかけっこをしている。魔法は解除済みだからこそ、新しい束縛をしている。今度は俺の方から繋いだ手を引っ張り返して、今夜のレストランへと連行してやった。
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