夏椿の天使~あの日に出会った旋律

夏目奈緖

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 ずらっと並んだレジコーナーを眺めると、大荷物を抱えた人たちばかりいた。クリスマスが終わったら、お正月を迎えるから、買い出しが大変だ。宅配トラックを近所で見かけることも増えた。

(お義父さんと俺と黒崎さんの3人でお正月が過ごせる。よかったなあ。黒崎さんの誕生日は……、一緒にケーキを焼こうっと……)

 会計待ちの列に並んだ。そんなに人は多くなくて、俺たちの前に2組だけ待っている。もうすぐレジが終わりそうだ。

 ワインの瓶が入った専用のカゴを、黒崎が持っている。有名なレストランを担当していたバイヤーが選んだ品を見つけたと言い出して、3本もカゴに入れた。少しずつ飲む約束だ。

「結局、買ったじゃん」
「いいだろう。親父の友人への話題にもなる」
「ほんとに?お父さんの友達は、お店で飲むか、昔から決まったものしか飲まないだろ?」
「いや、好奇心旺盛な人が多い。これから来客が増えるから、話題があったほうがいい。お前は話し相手をさせられるだろう」
「それはいいんだけど……」

 黒崎家で住み始めてから、お義父さんの友達が訪ねてくることが増えた。仕事関係の人にも紹介されることが多くなり、最初は緊張したが、気さくな人ばかりで楽しんでいる。

「末っ子が馴染んできたな」
「うん。黒崎君って呼ばれるのにも慣れたよ。沙耶さんから呼ばれているみたいで不思議だったよ」
「沙耶がコンテストを観に来られるそうだ」
「やったーー。頑張ろうっと。早く会いたいなあ」
「週一で連絡を取っているくせに」
「ふふん。ヤキモチ?お姉ちゃんみたいな人だもん。沙耶さんから、親父って呼ばれたんだよね?」
「ああ。3か月年上のくせに。35歳おめでとうと伝えたら、怒り出しぞ。ただの数字だ」
「そのわりには、俺が言ったら頬っぺたをつねるじゃん。んんーー?」
「そういうところは変わっていないな」
「なんだよー。……笑われているよ。……よかった、順番が来たよ」

 兄弟喧嘩のような言い合いをしていたから、レジ待ちの人から小さな笑い声が立った。可愛いわねという囁き声つきだ。

 レジカウンターへカゴを置くと、黒崎がさっさと向こうへ行こうとした。向こうで待っていると言いながら。これだと、喧嘩が続いているかのようだ。

「先に行くなよ。一緒に並んでよ」
「邪魔になるだろう。向こうで待っている。……分かった、ここにいるから離してくれ」
「仲が良いわねってさ……」

 ピピッと商品がレジを通っていく。そして、お互いに笑顔が増えていった。この後は冷蔵ロッカーに荷物を預けて、モール内をゆっくり回ることになった。デートだ。

 会計の後、買ったものを黒崎が持ってくれた。俺が持っているのは、お菓子が入ったエコバッグのみだ。普段から重いものを持たされることがない。変なところで優しい人だ。

 さあ、お風呂雑貨の店へ行こう。うろうろと歩きだすと、黒崎から苦笑された。

「あれ?こっちだっけ?」
「コインロッカーは向こうだ」
「そっか。忘れてたよ……」

 さらに反対方向へ行こうとしたら、肩を抱かれて修正された。一人で出かけることが少ないから、方向を忘れてしまったようだ。

 てっきりイジられると覚悟していると、全くそんなことはなかった。今日は喧嘩をしたくないと苦笑された。俺も同じだよと、俯いたままで笑った。

 そして、来週のデートの話をしながら、イタリアンジェラートの店の前に立った。帰りに買おうねと話した後、目的のお店へと歩いて行った。こうして一日が過ぎていった。
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