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黒崎がお風呂から出てくるのを待っている。あのままイチャつきたい気分でいたが、せっかくのすき焼きを楽しみたい。外はまた雪がチラついてきたから、さらに冷え込んでいる。温まってもらいたい。
「黒崎さん、ああいう色を使っていたのか。見てみたいな。20歳の黒崎さんって、どんな感じだったのかな?写真を見せてもらえないからさ~」
アルバムには秘書時代の黒崎の写真がない。会社にはあると言っていた。入れと同じ年代の彼を見てみたいと頼んでいるのに、黒崎が首を縦に振らない。
「いつか見せてくれるかな。準備はできているから、楽だなあ」
割り下の準備は出来ている。この後は、すき焼き鍋に入れるだけだ。深川さんが使っている物だからと期待している。ダイニングテーブルへ持っていたところで、黒崎が入って来た。
「おまたせ……」
「気持ちよかった?」
「ああ。入浴剤の香りがよかった」
「新しいやつだよ。あの福袋に入っていたんだ。もうすぐ発売するんだって。得した気分だよ」
「その頃に買いに行くか?あのボディークリームが良かった」
「黒崎さん……。あれは買わないよっ」
お風呂グッズ専門店で買ったボディークリームのことだ。いい匂いだと言って、ボディークリームを塗った場所にキスをしていた。これ以上の変態行動は慎んでもらいたいと思っている。
「そう言うな。乾燥肌が良くなっただろう」
「そうだけど。今度買うならミント系にするからね」
「いや、アーモンド系にしろ。ミントはガムのようだ」
「舐める前提かよっ」
黒崎の腰を叩いてやった。そして、手を洗って支度の続きに取り掛かろうととすると、黒崎が後ろから抱きしめてきた。
「……つれないことをするな」
「……手を洗うのは普通だよ」
早く座れと促して、ダイニングテーブルへ追いやった。そして、黒崎の前にビールを置いた。来れでも飲んでいろと言いながら。
お待ちかねの割り下を鍋に注ぎ入れた。あとは出来上がるのを待ちながら、鍋を囲んで会話をするのが好きだ。ワクワクする時間だ。
「……夏樹。肉はどうした?」
「……あれ?」
黒崎がすき焼き鍋を見た。確かに何か変だ。いつもなら肉を焼いた後で割り下を入れる。他の具材を入れるのはその後なのに、最初からネギや豆腐が入っている。そして、お肉が入っていない。見たことのある光景だ。
「寄せ鍋と間違えたよ~。お肉とネギを焼くところから始めるから待っていてよ」
「これで構わない。美味いはずだ」
黒崎が笑った。いつもなら文句の一言があるのに。今日のことがあるからだろう。気を遣わせて悪いなと思った。
「お肉、お肉と……」
冷蔵庫へお肉を取りに行った。そして、冷蔵庫を開けると、お馴染みの食材しか入っていなかった。
「あれー?お肉はどこだっけ~?買ってきた後、たしかここに……。ああーー」
お肉を買いに行くのを忘れていた。それ以外の材料があるから忘れていたようだ。せっかくのすき焼きなのにと、しょんぼりしてダイニングへ戻った。
「肉がないのか?」
「忘れていたよ。ごめんね~~」
せっかく楽しみにしてくれていたのに。俺も楽しみだったのに。落ち込んでいると、黒崎が小さく吹き出した。
「気にするな。今日は普段と違うことがあったからだろう。疲れているはずだ。外に食べに行くか?すき焼きは明日にしよう。材料は使えるだろう?」
「それは大丈夫だよ。この時間でも空いている店があるけど……」
「いつもの店がいい。今日はゆっくりしろということだ」
黒崎の優しさに胸がキュンとした。そして、自然な流れでキスをした。啄むようなキスを続けていくうちに、お腹が鳴った。
「早く食べに行こうよ。お腹が空いたよ~」
「ああ。そうしよう。温かいものを飲んで待っていろ。予約する」
黒崎が選んだ店はイタリアンレストランだった。野菜が中心の料理ばかりで、黒崎からすると物足りないぐらいだ。しかし、多めに食べるから構わないと言い切られた。
電話で穏やかに話しながら予約している姿を見て、ほっこりした気持ちになった。こういう強引さなら大歓迎だ。俺はこっそり笑って、出かける支度をした。
「黒崎さん、ああいう色を使っていたのか。見てみたいな。20歳の黒崎さんって、どんな感じだったのかな?写真を見せてもらえないからさ~」
アルバムには秘書時代の黒崎の写真がない。会社にはあると言っていた。入れと同じ年代の彼を見てみたいと頼んでいるのに、黒崎が首を縦に振らない。
「いつか見せてくれるかな。準備はできているから、楽だなあ」
割り下の準備は出来ている。この後は、すき焼き鍋に入れるだけだ。深川さんが使っている物だからと期待している。ダイニングテーブルへ持っていたところで、黒崎が入って来た。
「おまたせ……」
「気持ちよかった?」
「ああ。入浴剤の香りがよかった」
「新しいやつだよ。あの福袋に入っていたんだ。もうすぐ発売するんだって。得した気分だよ」
「その頃に買いに行くか?あのボディークリームが良かった」
「黒崎さん……。あれは買わないよっ」
お風呂グッズ専門店で買ったボディークリームのことだ。いい匂いだと言って、ボディークリームを塗った場所にキスをしていた。これ以上の変態行動は慎んでもらいたいと思っている。
「そう言うな。乾燥肌が良くなっただろう」
「そうだけど。今度買うならミント系にするからね」
「いや、アーモンド系にしろ。ミントはガムのようだ」
「舐める前提かよっ」
黒崎の腰を叩いてやった。そして、手を洗って支度の続きに取り掛かろうととすると、黒崎が後ろから抱きしめてきた。
「……つれないことをするな」
「……手を洗うのは普通だよ」
早く座れと促して、ダイニングテーブルへ追いやった。そして、黒崎の前にビールを置いた。来れでも飲んでいろと言いながら。
お待ちかねの割り下を鍋に注ぎ入れた。あとは出来上がるのを待ちながら、鍋を囲んで会話をするのが好きだ。ワクワクする時間だ。
「……夏樹。肉はどうした?」
「……あれ?」
黒崎がすき焼き鍋を見た。確かに何か変だ。いつもなら肉を焼いた後で割り下を入れる。他の具材を入れるのはその後なのに、最初からネギや豆腐が入っている。そして、お肉が入っていない。見たことのある光景だ。
「寄せ鍋と間違えたよ~。お肉とネギを焼くところから始めるから待っていてよ」
「これで構わない。美味いはずだ」
黒崎が笑った。いつもなら文句の一言があるのに。今日のことがあるからだろう。気を遣わせて悪いなと思った。
「お肉、お肉と……」
冷蔵庫へお肉を取りに行った。そして、冷蔵庫を開けると、お馴染みの食材しか入っていなかった。
「あれー?お肉はどこだっけ~?買ってきた後、たしかここに……。ああーー」
お肉を買いに行くのを忘れていた。それ以外の材料があるから忘れていたようだ。せっかくのすき焼きなのにと、しょんぼりしてダイニングへ戻った。
「肉がないのか?」
「忘れていたよ。ごめんね~~」
せっかく楽しみにしてくれていたのに。俺も楽しみだったのに。落ち込んでいると、黒崎が小さく吹き出した。
「気にするな。今日は普段と違うことがあったからだろう。疲れているはずだ。外に食べに行くか?すき焼きは明日にしよう。材料は使えるだろう?」
「それは大丈夫だよ。この時間でも空いている店があるけど……」
「いつもの店がいい。今日はゆっくりしろということだ」
黒崎の優しさに胸がキュンとした。そして、自然な流れでキスをした。啄むようなキスを続けていくうちに、お腹が鳴った。
「早く食べに行こうよ。お腹が空いたよ~」
「ああ。そうしよう。温かいものを飲んで待っていろ。予約する」
黒崎が選んだ店はイタリアンレストランだった。野菜が中心の料理ばかりで、黒崎からすると物足りないぐらいだ。しかし、多めに食べるから構わないと言い切られた。
電話で穏やかに話しながら予約している姿を見て、ほっこりした気持ちになった。こういう強引さなら大歓迎だ。俺はこっそり笑って、出かける支度をした。
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