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11-6(黒崎視点)
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12時半。
20階の役員室にてミーティング中だ。今は通常業務に戻っている。早朝のうちに、部長以上を集めた会議を行った。捕まったのは営業企画部内の社員だが、全体としての不祥事対応体制を敷いた。報道陣への対応、社員への説明、再発防止策、被害者のお見舞い、本人の処遇についての話し合いをした。
「……以上です」
「……次回は……」
「……早瀬代理は残ってください」
ミーティングが終了した後、早瀬をこの場に留めた。捕まった社員の件で話すためだ。今回の件は顧問弁護士チームの一人である、沙耶が担当する。
「白澤の弁護士は決まったのか?」
「示談交渉に移っているようです。……現行犯逮捕時に否認していましたが、すぐに認めたそうです」
「あの状況でか?」
「それでもです。……送検されるまで取り調べが優先されるので、家族でも会えません。白澤の弁護士へ仲介はお願い出来るかと。……向こうも守秘義務があるので、全てを教えて貰えるわけではないでしょう」
「本人は起訴休職扱いだ。……家族から申し出があったそうだな?給与の支給ストップを避けてもらいたいと」
「規則ですからね。家族の気持ちは分からないでもありませんが」
黒崎製菓では、起訴休職の制度がある。自らの責任で会社への出勤が不能になっているため、給与を払う必要がない。有罪判決が出るまで懲戒解雇されないが、有罪判決が出る前に、退職届を出す可能性がある。そうなれば、退職金を支給する。
そうなるだろうと予測したが、退職を考えていないと、家族から連絡があったと聞いた。その本人とは話していない状況だが。
私生活まで管理する権限はない。本人が認めていても、懲戒解雇が不当だと訴える可能性がある。一般的には、とても会社には居られない状況だとは思うが、それぞれに事情がある。
白澤については、今月末に人事が行われる予定だった。社内での問題行為があったためだ。口頭での注意を聞かず、今月末に本社からの異動が決まっていた。すでに内示済みだった。
「人事の件で、やり返したかもしれないね」
「考えたくはないが、破れかぶれだった可能性がある」
「人を傷つけずに、オフィスの物を壊してほしかった」
「同感だ。部長として責任問題だ」
「これは私的なことだよ」
「分かっているとは思うが、白澤が出てきた後は、悠人君のことを気をつけておけ」
「対策を考えているよ」
「そうか……」
白澤は、マーケティング推進室の室長になりたがっていた。しかし、去年の合併の結果、そのポストに選ばれたのは早瀬だった。事あるごとに足を引っ張ろうとしていたのは、知られた話だ。白澤に限ったことではない。
ため息をついたことろで状況は変わらない。この話題を切り上げて、進行しているプロジェクトへと内容を変えた。新規店舗のメニュー開発チームのことについてだ。
「……失礼します。常務に、桂川弁護士からお電話がかかっています」
「分かった、ありがとう」
そばのデスクの電話を取った。ほんの2日前に会ったばかりだ。さっそく報告に耳を傾けた。
20階の役員室にてミーティング中だ。今は通常業務に戻っている。早朝のうちに、部長以上を集めた会議を行った。捕まったのは営業企画部内の社員だが、全体としての不祥事対応体制を敷いた。報道陣への対応、社員への説明、再発防止策、被害者のお見舞い、本人の処遇についての話し合いをした。
「……以上です」
「……次回は……」
「……早瀬代理は残ってください」
ミーティングが終了した後、早瀬をこの場に留めた。捕まった社員の件で話すためだ。今回の件は顧問弁護士チームの一人である、沙耶が担当する。
「白澤の弁護士は決まったのか?」
「示談交渉に移っているようです。……現行犯逮捕時に否認していましたが、すぐに認めたそうです」
「あの状況でか?」
「それでもです。……送検されるまで取り調べが優先されるので、家族でも会えません。白澤の弁護士へ仲介はお願い出来るかと。……向こうも守秘義務があるので、全てを教えて貰えるわけではないでしょう」
「本人は起訴休職扱いだ。……家族から申し出があったそうだな?給与の支給ストップを避けてもらいたいと」
「規則ですからね。家族の気持ちは分からないでもありませんが」
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そうなるだろうと予測したが、退職を考えていないと、家族から連絡があったと聞いた。その本人とは話していない状況だが。
私生活まで管理する権限はない。本人が認めていても、懲戒解雇が不当だと訴える可能性がある。一般的には、とても会社には居られない状況だとは思うが、それぞれに事情がある。
白澤については、今月末に人事が行われる予定だった。社内での問題行為があったためだ。口頭での注意を聞かず、今月末に本社からの異動が決まっていた。すでに内示済みだった。
「人事の件で、やり返したかもしれないね」
「考えたくはないが、破れかぶれだった可能性がある」
「人を傷つけずに、オフィスの物を壊してほしかった」
「同感だ。部長として責任問題だ」
「これは私的なことだよ」
「分かっているとは思うが、白澤が出てきた後は、悠人君のことを気をつけておけ」
「対策を考えているよ」
「そうか……」
白澤は、マーケティング推進室の室長になりたがっていた。しかし、去年の合併の結果、そのポストに選ばれたのは早瀬だった。事あるごとに足を引っ張ろうとしていたのは、知られた話だ。白澤に限ったことではない。
ため息をついたことろで状況は変わらない。この話題を切り上げて、進行しているプロジェクトへと内容を変えた。新規店舗のメニュー開発チームのことについてだ。
「……失礼します。常務に、桂川弁護士からお電話がかかっています」
「分かった、ありがとう」
そばのデスクの電話を取った。ほんの2日前に会ったばかりだ。さっそく報告に耳を傾けた。
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