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18時。
家から持ってきたカスタードプリンを食べていると、ラインの着信音が鳴った。黒崎からだろうか?今日の夜の飛行機に乗るなら、もうホテルを出ないと間に合わないだろう。画面を見ると、二葉からだった。電話で話したいと書かれている。自分から方から電話をかけると、即座に繋がった。
「……二葉ちゃん、久しぶりだね」
「……久しぶり」
いつもの二葉とは反対だ。はきはきした話し方をする子なのに、今の声のトーンは沈んでいる。どうやらホテルの中にいるようだ。
「ママのところに着いた?」
「うん。お兄ちゃんと桂川さん達が話しているわ。……私だけでロビーに出て来たの。お母さんが桂川さんと病院に行ってきたんだけど……、暴力を振るわれたの」
「そうだったんだ……」
電話の向こうでは、ママの悲鳴が聞こえていた。もしかすると暴力を振るわれたのかと思っていたが、まさか本当だったなんて。二葉の話をしっかりと聞こう。今はこれしか思いつかない。
「ごめん。ショックで……。さすがに……」
「ゆっくりでいいよ。何も用事をしていないからね。聞くから……」
「うん。ありがとう……」
電話口からは嗚咽が聞こえ始めた。そばには誰もいないから心細いだろう。こんな状態でロビーに出て電話をしてきたなら、部屋では話せないことがありそうだ。倉口さんのことだろう。
「もしかして倉口さんのこと?」
「うん。部屋じゃ電話できないから。お父さんことを庇ったらいけない空気だし……」
「俺でよかったら……」
「ありがとう。あのね……。お父さんが私のことを育ててくれたの。可愛がってくれたよ。……自分の子供じゃないって、最初から分かっていたんだと思う。似ていないもの。……お父さんがね、昨年ぐらいから変なの。お母さんの教室が増えそう話が出たときに、お兄ちゃんと会ったの。お父さんには正直に話したのよ。私もその場に居たから分かるけど、特に変わった様子はなくて、よかったねって言ってた……」
「プレゼントを送ってくれているね。倉口さんも知っているんだよね?」
「ううん。機嫌が悪くなるから、こっそり……」
「そっか。無理させたんだね……」
「ううん!そんなことないよ。いまさらでも、お兄ちゃんに何かしたくてやったことだから。……お母さんは、お兄ちゃんの面倒を見ていなかったんでしょう?私と朝陽には、そんな事はなかったの。……お父さんが支えてくれたと思っているの。私はね……」
こういう事を部屋では話せない。そういう空気が流れていることが想像できた。黒崎は冷静な人だし、沙耶さんも同じだ。それだけママの怪我が大きいのだろうか?
「ママの怪我って、ひどい?小さいも大きいもないけど……」
「顔を平手打ちされて、逃げようとした時に突き飛ばされたみたい。顔をテーブルの角にぶつけて、擦り傷ができているわ……。普通に歩けるよ。……しばらくホテルに泊まると思う」
「黒崎さんは、こっちにみんなを呼ぶつもりだよ。おいでよ!3人だけだと心細いだろ?倉口さんのことを一人にするけど。これ以上何かあったら、お互いに……」
「そうだよね。2月から3月末まで大学が休みなの」
「それなら来てもいいだろ?朝陽君の受験先にも近いし」
「うん。ちょっとスッキリしたよ。部屋に戻るから」
「黒崎さんは一番いい方法を取るよ。信じていいからね」
「ありがとう。じゃあ……」
「うん。また掛けておいでよ。何もすることがないんだ」
「また電話するよ……」
最後の方は笑い声が聞こえていた。少しだけでも気分が変わればいいと思った。向こうが気になりつつも、こっちからは電話出来ない。俺の方が落ち着かなくてどうする?黒崎が家に帰って来た時に、ゆっくり休めるようにしておきたいのに。
「ストレッチをしようっと……」
気を取り直しておこうと、椅子から立ち上った。上半身のストレッチのポーズを取ると、アンが足元へジャレついてきた。大丈夫だよと繰り返し言った後、やっと取り掛かることができた。
家から持ってきたカスタードプリンを食べていると、ラインの着信音が鳴った。黒崎からだろうか?今日の夜の飛行機に乗るなら、もうホテルを出ないと間に合わないだろう。画面を見ると、二葉からだった。電話で話したいと書かれている。自分から方から電話をかけると、即座に繋がった。
「……二葉ちゃん、久しぶりだね」
「……久しぶり」
いつもの二葉とは反対だ。はきはきした話し方をする子なのに、今の声のトーンは沈んでいる。どうやらホテルの中にいるようだ。
「ママのところに着いた?」
「うん。お兄ちゃんと桂川さん達が話しているわ。……私だけでロビーに出て来たの。お母さんが桂川さんと病院に行ってきたんだけど……、暴力を振るわれたの」
「そうだったんだ……」
電話の向こうでは、ママの悲鳴が聞こえていた。もしかすると暴力を振るわれたのかと思っていたが、まさか本当だったなんて。二葉の話をしっかりと聞こう。今はこれしか思いつかない。
「ごめん。ショックで……。さすがに……」
「ゆっくりでいいよ。何も用事をしていないからね。聞くから……」
「うん。ありがとう……」
電話口からは嗚咽が聞こえ始めた。そばには誰もいないから心細いだろう。こんな状態でロビーに出て電話をしてきたなら、部屋では話せないことがありそうだ。倉口さんのことだろう。
「もしかして倉口さんのこと?」
「うん。部屋じゃ電話できないから。お父さんことを庇ったらいけない空気だし……」
「俺でよかったら……」
「ありがとう。あのね……。お父さんが私のことを育ててくれたの。可愛がってくれたよ。……自分の子供じゃないって、最初から分かっていたんだと思う。似ていないもの。……お父さんがね、昨年ぐらいから変なの。お母さんの教室が増えそう話が出たときに、お兄ちゃんと会ったの。お父さんには正直に話したのよ。私もその場に居たから分かるけど、特に変わった様子はなくて、よかったねって言ってた……」
「プレゼントを送ってくれているね。倉口さんも知っているんだよね?」
「ううん。機嫌が悪くなるから、こっそり……」
「そっか。無理させたんだね……」
「ううん!そんなことないよ。いまさらでも、お兄ちゃんに何かしたくてやったことだから。……お母さんは、お兄ちゃんの面倒を見ていなかったんでしょう?私と朝陽には、そんな事はなかったの。……お父さんが支えてくれたと思っているの。私はね……」
こういう事を部屋では話せない。そういう空気が流れていることが想像できた。黒崎は冷静な人だし、沙耶さんも同じだ。それだけママの怪我が大きいのだろうか?
「ママの怪我って、ひどい?小さいも大きいもないけど……」
「顔を平手打ちされて、逃げようとした時に突き飛ばされたみたい。顔をテーブルの角にぶつけて、擦り傷ができているわ……。普通に歩けるよ。……しばらくホテルに泊まると思う」
「黒崎さんは、こっちにみんなを呼ぶつもりだよ。おいでよ!3人だけだと心細いだろ?倉口さんのことを一人にするけど。これ以上何かあったら、お互いに……」
「そうだよね。2月から3月末まで大学が休みなの」
「それなら来てもいいだろ?朝陽君の受験先にも近いし」
「うん。ちょっとスッキリしたよ。部屋に戻るから」
「黒崎さんは一番いい方法を取るよ。信じていいからね」
「ありがとう。じゃあ……」
「うん。また掛けておいでよ。何もすることがないんだ」
「また電話するよ……」
最後の方は笑い声が聞こえていた。少しだけでも気分が変わればいいと思った。向こうが気になりつつも、こっちからは電話出来ない。俺の方が落ち着かなくてどうする?黒崎が家に帰って来た時に、ゆっくり休めるようにしておきたいのに。
「ストレッチをしようっと……」
気を取り直しておこうと、椅子から立ち上った。上半身のストレッチのポーズを取ると、アンが足元へジャレついてきた。大丈夫だよと繰り返し言った後、やっと取り掛かることができた。
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