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17-12(夏樹視点)
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20時半。
鉄板焼き店を出た後、せっかくだからどこかに行きたいと話して、羽柴アイランドに寄った。四方を運河に挟まれた人工の島のような場所だ。今、その島の湾沿いの遊歩道を散歩している。ここには2カ月だけ住んでいた。今は早瀬さんと悠人が住んでいるのに、まだ2回しか遊びに来ていない。
「ここに住んでいたのが、もっと昔に思えるよ。二か月しか住んでいなかったけど……」
「そうだったな」
「今日は弱音を吐いてよかった。俺が何も言わないから、あんたが家のことを話してくれないんだと思う。一緒に悩んでいこうよ。本当に因縁だらけの家なのー?」
「どうしてそう思う?」
「身内の数が多いからだよ。声が大きいものがち勝ちだって思いがちなんだよ。全員がそうかなのかは、裏付けが取れないけど。リーダーがビシッと立っておけばいいんじゃない?」
「なるほど。親父から、お前に立ってほしいと言われたら立つのか?」
「もちろんだよ。門番として仁王立ちするよ」
「そうか……」
「なんで笑うんだよ~。あんたはラスボスでいればいいんだよ」
「俺が馬鹿だった。門番の役目を全うしてくれ。こんな答えが返ってくるとは思わなかった。お前から逃げてもいいか?」
「俺から逃げて、どうするんだよ~。追いかけてきたのは、あんたの方だろ?」
「……気の迷いだ」
「バカヤロー!トリャーー!」
悠人の真似をしてケリを入れた。黒崎が笑いながら避けたから、今度はダイブしてやった。すると、いつもの要求を口にする前に抱かかえられた。黒崎の肩にすがりつくと、ふわっと体が軽くなった。
湾に浮かんだ遊覧船と、対岸に建つビル群からの灯りが見える。遊歩道の小さな外灯もある。向こうに見えるのは、ライトアップされた大きな橋だ。クルクルと回るたびに景色が変化していく。目まぐるしくても、しっかりと抱きついているから平気だ。
「わあーー、いっけーー!」
「……目が回る」
「あんたが柱だよ。俺のことをブンブン振り回しているんだよ?」
「お前が振り回している」
「ううん、あんたが輪っかの中心だよ。俺が木馬。木馬が逃げたら、メリーゴーランドが止まるよ?バレンタインデーのイベントみたいに……」
抱きついたままで地面を蹴った。強引に回転していると、黒崎がヤル気を出して馬鹿力を発揮した。その結果、2人でヨロけてしまい、そばの茂みに転がりそうになった。
「わーーい!」
「うるさい……」
「ふふん。……え?」
「向こうへ行くか」
「うん……」
ここには先客がいたようだ。茂みの方に大きな木があり、その下でイチャついているカップルがいた。そして、聞き覚えのある声がして驚いた。悠人と早瀬さんの声だったからだ。聞いてはいけない。黒崎から肩を引かれて退散した。
「行くぞ……」
「うん……。わあーーー」
小さな段差につまづいてしまった。慌てて口を閉じても間に合わず、2人に気づかれてしまった。悠人が慌てている。なるべく見ないようにして声をかけた。
「何も見ていないからね。気にしてないよ。じゃあね!」
「早く行くぞ……」
黒崎から抱きかかえられるようにして、茂みから退散した。2人がいる方向からは、悠人が早瀨さんに怒っている声が聞こえている。ここで仲裁に行くと、ますます怒るだろう。聞かなかったふりをして、そそくさと歩道へ出た。
夜空には満月が浮かんでいた。パンケーキみたいだねと呟くと、びよーんと頬をつねられた。お返しに耳たぶを引っ張ってやった。そして、今回は喧嘩をせずに手を繋ぎ合い、南の方向にある我が家へ出発した。
鉄板焼き店を出た後、せっかくだからどこかに行きたいと話して、羽柴アイランドに寄った。四方を運河に挟まれた人工の島のような場所だ。今、その島の湾沿いの遊歩道を散歩している。ここには2カ月だけ住んでいた。今は早瀬さんと悠人が住んでいるのに、まだ2回しか遊びに来ていない。
「ここに住んでいたのが、もっと昔に思えるよ。二か月しか住んでいなかったけど……」
「そうだったな」
「今日は弱音を吐いてよかった。俺が何も言わないから、あんたが家のことを話してくれないんだと思う。一緒に悩んでいこうよ。本当に因縁だらけの家なのー?」
「どうしてそう思う?」
「身内の数が多いからだよ。声が大きいものがち勝ちだって思いがちなんだよ。全員がそうかなのかは、裏付けが取れないけど。リーダーがビシッと立っておけばいいんじゃない?」
「なるほど。親父から、お前に立ってほしいと言われたら立つのか?」
「もちろんだよ。門番として仁王立ちするよ」
「そうか……」
「なんで笑うんだよ~。あんたはラスボスでいればいいんだよ」
「俺が馬鹿だった。門番の役目を全うしてくれ。こんな答えが返ってくるとは思わなかった。お前から逃げてもいいか?」
「俺から逃げて、どうするんだよ~。追いかけてきたのは、あんたの方だろ?」
「……気の迷いだ」
「バカヤロー!トリャーー!」
悠人の真似をしてケリを入れた。黒崎が笑いながら避けたから、今度はダイブしてやった。すると、いつもの要求を口にする前に抱かかえられた。黒崎の肩にすがりつくと、ふわっと体が軽くなった。
湾に浮かんだ遊覧船と、対岸に建つビル群からの灯りが見える。遊歩道の小さな外灯もある。向こうに見えるのは、ライトアップされた大きな橋だ。クルクルと回るたびに景色が変化していく。目まぐるしくても、しっかりと抱きついているから平気だ。
「わあーー、いっけーー!」
「……目が回る」
「あんたが柱だよ。俺のことをブンブン振り回しているんだよ?」
「お前が振り回している」
「ううん、あんたが輪っかの中心だよ。俺が木馬。木馬が逃げたら、メリーゴーランドが止まるよ?バレンタインデーのイベントみたいに……」
抱きついたままで地面を蹴った。強引に回転していると、黒崎がヤル気を出して馬鹿力を発揮した。その結果、2人でヨロけてしまい、そばの茂みに転がりそうになった。
「わーーい!」
「うるさい……」
「ふふん。……え?」
「向こうへ行くか」
「うん……」
ここには先客がいたようだ。茂みの方に大きな木があり、その下でイチャついているカップルがいた。そして、聞き覚えのある声がして驚いた。悠人と早瀬さんの声だったからだ。聞いてはいけない。黒崎から肩を引かれて退散した。
「行くぞ……」
「うん……。わあーーー」
小さな段差につまづいてしまった。慌てて口を閉じても間に合わず、2人に気づかれてしまった。悠人が慌てている。なるべく見ないようにして声をかけた。
「何も見ていないからね。気にしてないよ。じゃあね!」
「早く行くぞ……」
黒崎から抱きかかえられるようにして、茂みから退散した。2人がいる方向からは、悠人が早瀨さんに怒っている声が聞こえている。ここで仲裁に行くと、ますます怒るだろう。聞かなかったふりをして、そそくさと歩道へ出た。
夜空には満月が浮かんでいた。パンケーキみたいだねと呟くと、びよーんと頬をつねられた。お返しに耳たぶを引っ張ってやった。そして、今回は喧嘩をせずに手を繋ぎ合い、南の方向にある我が家へ出発した。
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