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胃のあたりで両手を組んだ。そして、軽く呼吸を繰り返し、喉を広げるイメージを浮かべた。空は晴れており、朝の柔らかい日差しが降り注いできて、墓前のユリと白いカーネーションが風に揺れた。木々の匂い、風の音、背後の2人の気配。それらを感じながら目を閉じて、歌声をあげた。
「……In earth as it is in heaven ……Where are you born ……next……」
カサ……。
歌声が途切れて、辺りが静かになった。そして、新しい足音が近づいてきた。振り返ると、黒崎が会釈をしていた。拓海さんと晴海さんのお母さんの瑛子さんだ。お義父さんがママと再婚する6年前に別れたそうだ。拓海さんが16歳で、晴海さんが10歳の時だった。2人は黒崎家に残った。一緒に引っ越して暮らすことができなくて、月に1度しか会えなかったと、晴海さんが言っていた。
何でも出来る人だったそうで、離婚を止める人が多かったらしい。その後でお義父さんがママと付き合い始めて、彼女へ親戚からの怒りの矛先が向かったのだろうと教えてくれた。瑛子さんは誰のことも恨んでいなくて、あの家での生活に疲れたとだけ言っていたそうだ。
「……お久しぶり」
「……お久しぶりです」
短い会話の後、黒崎が瑛子さんに俺と沙耶さんのことを紹介してくれた。沙耶さんとは初対面ではなく、よく拓海さんから話を聞いていたそうだ。懐かしい思い出だと笑って話した。沙耶さんが、熊澤さんからプロポーズされたことと、結婚を前提に付き合い始めたことを拓海さんの墓前で報告した。そして、4人で小道を通って墓地を出た。
バタン、ガサガサ……。
沙耶さんが車の後部座席を開けて、ラッピングされた箱を取り出した。紺色の包み紙に白いリボンが掛けられている。俺は沙耶さんには遠慮をしないから、待ってましたとばかりに受け取った。誕生日プレゼントだ。
「はい。20歳の誕生日、おめでとう」
「ありがとう。何かなー?」
「ここで開けてもいいわよ」
「うんっ」
車の助手席に箱を置いて、ラッピングを開けた。一つにはネクタイが、もう一つには万年筆が入っていた。見るだけで胸がジーンと熱くなった。そんな俺のことを見て、沙耶さんと黒崎が笑っている。
「黒崎君の初出勤ネクタイがあるけど、私からも贈るわ。すぐに使ってもらえるように、若い人向けのデザインを選んだわ。夏樹君の顔色に映えるのよ。髪の色が明るいから。金髪に近くなったわねえ?」
「そうなんだよ~。嫌だよ~」
「いいじゃない。黒い髪の毛がいいからって思って、カラーリングはしない方がいいわよ。いつもやらないといけなくなるからよ。髪質が柔らかいから傷むかも」
「やっぱりそうなんだ……。黒崎さんも同じ事を言うんだ」
「なかなか納得しない。ステージでは映えるからいいだろう。会社でも違和感はない。地毛が金髪の社員がいる。茶髪と黒髪もいる。瞳の色も様々だ。うちの会社は彩り豊かだ。知っているだろう?」
「夏樹君は目立つことが苦手なのよ。ステージと日常生活は別なんでしょう?」
「うん、そうなんだ」
「はいはい。そのうち図々しくなって、気にならなくなるわ」
「うん……」
沙耶さんから頭を撫でられて、気持ちがほっこりした。まだまだ自分は子供だと思った。沙耶さんから手を振られて、それぞれの車に乗り込んだ。そして、彼女の白い車が見えなくなるまで見送り、その後、俺たちも次の目的地へ出発した。
「……In earth as it is in heaven ……Where are you born ……next……」
カサ……。
歌声が途切れて、辺りが静かになった。そして、新しい足音が近づいてきた。振り返ると、黒崎が会釈をしていた。拓海さんと晴海さんのお母さんの瑛子さんだ。お義父さんがママと再婚する6年前に別れたそうだ。拓海さんが16歳で、晴海さんが10歳の時だった。2人は黒崎家に残った。一緒に引っ越して暮らすことができなくて、月に1度しか会えなかったと、晴海さんが言っていた。
何でも出来る人だったそうで、離婚を止める人が多かったらしい。その後でお義父さんがママと付き合い始めて、彼女へ親戚からの怒りの矛先が向かったのだろうと教えてくれた。瑛子さんは誰のことも恨んでいなくて、あの家での生活に疲れたとだけ言っていたそうだ。
「……お久しぶり」
「……お久しぶりです」
短い会話の後、黒崎が瑛子さんに俺と沙耶さんのことを紹介してくれた。沙耶さんとは初対面ではなく、よく拓海さんから話を聞いていたそうだ。懐かしい思い出だと笑って話した。沙耶さんが、熊澤さんからプロポーズされたことと、結婚を前提に付き合い始めたことを拓海さんの墓前で報告した。そして、4人で小道を通って墓地を出た。
バタン、ガサガサ……。
沙耶さんが車の後部座席を開けて、ラッピングされた箱を取り出した。紺色の包み紙に白いリボンが掛けられている。俺は沙耶さんには遠慮をしないから、待ってましたとばかりに受け取った。誕生日プレゼントだ。
「はい。20歳の誕生日、おめでとう」
「ありがとう。何かなー?」
「ここで開けてもいいわよ」
「うんっ」
車の助手席に箱を置いて、ラッピングを開けた。一つにはネクタイが、もう一つには万年筆が入っていた。見るだけで胸がジーンと熱くなった。そんな俺のことを見て、沙耶さんと黒崎が笑っている。
「黒崎君の初出勤ネクタイがあるけど、私からも贈るわ。すぐに使ってもらえるように、若い人向けのデザインを選んだわ。夏樹君の顔色に映えるのよ。髪の色が明るいから。金髪に近くなったわねえ?」
「そうなんだよ~。嫌だよ~」
「いいじゃない。黒い髪の毛がいいからって思って、カラーリングはしない方がいいわよ。いつもやらないといけなくなるからよ。髪質が柔らかいから傷むかも」
「やっぱりそうなんだ……。黒崎さんも同じ事を言うんだ」
「なかなか納得しない。ステージでは映えるからいいだろう。会社でも違和感はない。地毛が金髪の社員がいる。茶髪と黒髪もいる。瞳の色も様々だ。うちの会社は彩り豊かだ。知っているだろう?」
「夏樹君は目立つことが苦手なのよ。ステージと日常生活は別なんでしょう?」
「うん、そうなんだ」
「はいはい。そのうち図々しくなって、気にならなくなるわ」
「うん……」
沙耶さんから頭を撫でられて、気持ちがほっこりした。まだまだ自分は子供だと思った。沙耶さんから手を振られて、それぞれの車に乗り込んだ。そして、彼女の白い車が見えなくなるまで見送り、その後、俺たちも次の目的地へ出発した。
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