夏椿の天使~あの日に出会った旋律

夏目奈緖

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20-8(夏樹視点)

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 19時半。

 IKUのスタジオから我が家に帰ってきた。俺も悠人も疲れているはずなのに、どういうわけか元気なままだ。まだ興奮しているのだろうと思う。

 早瀬さんと悠人に家に寄ってもらい、2人がリビングで今日の動画を観ている。俺の方はさっき伊吹が届けてくれたスルメを焼きながら、黒崎がテラスから入って来たのを確認した。アンの散歩に行ってくれていた。

「アンーー、こっちだよ」

 悠人がアンとボールで遊び始めた。黒崎と早瀬さんがパソコンを見ながら雑談して、動画の編集を始めている。のんびりした光景だ。すると、跳ねるボールがキッチンに入って来た。それをアンが追いかけて来て、サッカーを始めた。同じく悠人も入って来た。

「ゆうとー、スルメが焼けてきたよ~」
「見たい!」

 オーブントースターやフライパンでも焼けるが、今回は実家でやっている方法を使った。ホームセンターで買って来た網に挟んで、ガスコンロで炙って焼いている。海産物のいい匂いがしてきた。美味しい証だ。

「クンクン……」
「どう?美味しそうだろ?」
「うん。クンクン。あ……」

 悠人がスルメの匂いを嗅いだ。そこで、煙がモウモウと出てきたことで、むせ返ってしまった。さらに両目に煙が入ってしまったようだ。充血しているから、こすらないようにさせた。

「ごほっ、げほっ。煙が目に……」
「目に入ったんだねえ。顔を洗ってこいよ」
「うん……。いてて、見えないよー」
「真っ赤になったね。一緒に行くよ」

 リビングにいる黒崎に声をかけた。スルメの番をしてもらうためだ。ここで火を消すと、中途半端な焼き上がりになってしまう。

「黒崎さーん!スルメを見ていてよ~。悠人を洗面所へ連れて行くからさ」
「……分かった。大丈夫か?」
「大丈夫です!いてて……」
「夏樹君、俺が見ているよ」
「早瀬さんは座っててよ~。せっかくやってくれてるし……」

 黒崎にスルメを挟んだ網を手渡した。火から離して持っておくように頼んだ。そして、悠人を連れて洗面所へ向かった。
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