夏椿の天使~あの日に出会った旋律

夏目奈緖

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 リビングの大きな窓から外を眺めた。遠くの方には大きな橋があり、その下の水辺を走る遊覧船が見えた。懐かしい景色だと思いながら眺めた。

 やることがないから座っていてと言われて、リビングのソファーに腰かけた。お客さんになるのが滅多にないから、どうも落ち着かない。至れり尽くせりは何年ぶりだろう?

「俺、何かしなくて良いの?」
「後片付けだけを手伝ってよー」
「うん。珈琲を運ぼうか?」
「いいよー、ゆっくりしてて」 
「ワタベ電機さんの方では……」
「その件では……」

 黒崎が蔵之介さんとの話が弾んでいる。どことなく二人が似ている。蔵之介さんの方が少し大柄で、温和な人だと思った。話し方が黒崎と似ているが、威圧感がない。

 伊神蔵之介さんとは、今日が初対面だ。彼からの第一声に吹き出して笑った。俺にとっては珍しい反応をした。俺を見て、悠人が話していたとおりの外見だと言われたからだ。浅草&大阪ミックスカジュアルのことと、日が当たると金髪に見える髪の毛の色のことだった。そして、可愛らしいと言われて、笑顔を返した。感じのいい人だったからだ。

「久弥から黒崎さんの話を聞きました」
「……良いものなら嬉しいが」
「久弥から……。噂をすれば影だ」
「チクるなよ!くまのすけーー。夏樹。この人はクマの着ぐるみに似ていないか?」
「少し似ているかも。うへへ」
「黒崎さんのことを超絶イケメンだと言ったら、蔵之介が妬いたんだ。本当だぞ」

 佐久弥が顔を洗って戻ってきた。今度はエスニックな感じのTシャツを着て、赤みのある髪を後ろで結んでいる。そして、理久とそっくりの笑顔で、悠人のことをイジっている。

 昨日の夜に泊まりに来て、悠人と二人、同じベッドで寝たそうだ。ギターの練習に付き合ってくれて、疲れて床に寝転がった佐久弥を、ソファーで寝かせることができなかったという。布団も用意してあるけれど、ベッドの方が良いと思ったそうだ。

「夏樹。この饅頭を食べろ。甜菜糖を使っている。美味いぞ」
「ありがとう。佐久弥は実家暮らしだって聞いたよ。蔵之介さんの家は遠いの?」
「うちの実家の近所で一人暮らしをしている。俺の仕事は生活リズムが決まっていないから、一緒に暮らしていない。なあー。クラー?」
「俺は一緒に住みたいけどな……」
「クラー。ゆっくり休めないだろう?健康第一だからさ」

 佐久弥が蔵之介さんの隣に移動した。仲が良さそうで羨ましくなった。悠人が珈琲を運びながらツッコミを入れた。外でやってくれと。そういう悠人たちも仲が良いのに。
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