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……そっちをお願いしまーす。
……カメラテストは悠人君と佐伯さんで。
翌日を迎えて、胸を高鳴らせてIKUのスタジオに到着した。いくつもパーテーションが立てられていて、たくさんの衣装が並べられていた。
大きな鏡の前には椅子があり、まるで美容室のように見えた。ここで着替えをしてヘアメイクを済ませる。3人分の衣装が並んでいると思ったのに、俺一人分だったから面食らった。
「夏樹君、こっち向いてーー」
「衣装、オーケーでーーす!」
「メイクさん、来てー」
どの衣装を着ているのか分からない状態で、3人がかりで着替えを済ませた。ロックバンドらしい黒の衣装の上から、赤い着物を羽織った。今回、帯は留めていない。裾を長く引きずっている。
今度はヘアメイクを受けた。その間、仙頭さんからカメラで撮られている。綺麗に出来ていると褒められながら、急ピッチで進められていった。仙頭さんがカメラ越しに話しかけてくれている分、緊張感がほぐれていった。藤沢のモデルの仕事の時も担当しているから、面白いエピソードを教えてくれた。
近くのパーテーションでは、悠人が衣装合わせをしている。すでにヘアスタイルが仕上がっていて、まるで別人のように大人びていた。ひと声でいうと”カッコいい”だ。雑誌で観るバンドメンバーの一人でも違和感がないと思った。
エクステをつけて髪の長さが変わっている。昨日のうちに美容院で仕上げてきたそうだ。先に悠人がスタジオ入りしていたから、ついさっき知った。お互いに話す間がなかったことに驚いた。サイドの髪の毛を編み込んで、後ろで結んで尖らせているスタイルだ。つくり出した人はすごいと思った。
佐久弥のイメージも変わった。ディアドロップでは妖艶な感じだったのに、かっこいいお兄さんになっている。全体的にシンプルだ。ソロ活動バージョンは近くで見たことがなくて、実際に見てみると、かっこよかった。
すると、カメラテストが終わった2人がやって来た。俺の姿を見てビックリしている。俺の方こそ驚いた。佐久弥にシンプルでかっこいいと口にすると、笑っていた。いつもと違うオーラがある。別人のようでもある。悠人もそう言っていた。
「2人が若い分、俺はシンプルにしたかった。……見てみろ。目の下のくぼみが深いだろ?眉間の皺も出来つつある。経験を重ねてきた男の顔だ。自信を持っている。……これで年齢を31歳だと公表できる。デビューした時は、25歳になる直前だった。22歳ってことにした。若い子をターゲット層に意識したからだ。興味を持ってもらわないと、楽曲すら聞いてもらえない。本当はミスで22歳になったんだけど、ちょうどよかったから、そのままだった」
「ふむふむ……。こうやって話すと本人だねー。真面目な話をしたら」
「しゃべったら元通りになったね。ホッとしたよ~」
「ゆうとー。俺は真面目な男だぞ。夏樹も変わったな。妖艶すぎる」
「そうだよー、綺麗な男がいるって思った。しゃべると夏樹だよーー」
悠人がそう言うと、周りの人もウンウンと頷いている。そんなに変わっただろうか?鏡で見ても、自分では分からない。向こうには黒崎と早瀬さんがいる。聞いてみようと思った。
「黒崎さーん」
「なんだ?」
「黒崎さーーーん」
スタッフの許可をもらい、黒崎のことを呼んだ。少ししか離れていないから、俺たちのことが見えるはずだ。さっそく悠人が早瀬さんのそばに行った。それを佐久弥が囃し立てて、スタッフが笑っている。
「ゆうとくーん、かっこいいぞ」
「へへへ。2時間も待ったかいがあったよ。この長さで正解だったねー」
「悠人君は何でも似合うぞーー」
「ここに熱々カップルがいるぞー。クラを連れて来てくれー。寂しいー。クラは会社にいるけど」
悠人達の楽しい雰囲気とは違い、黒崎は黙ったままだ。不機嫌ではないが、照れくさそうに目を逸らしている。こっちまで恥ずかしくなった。
……カメラテストは悠人君と佐伯さんで。
翌日を迎えて、胸を高鳴らせてIKUのスタジオに到着した。いくつもパーテーションが立てられていて、たくさんの衣装が並べられていた。
大きな鏡の前には椅子があり、まるで美容室のように見えた。ここで着替えをしてヘアメイクを済ませる。3人分の衣装が並んでいると思ったのに、俺一人分だったから面食らった。
「夏樹君、こっち向いてーー」
「衣装、オーケーでーーす!」
「メイクさん、来てー」
どの衣装を着ているのか分からない状態で、3人がかりで着替えを済ませた。ロックバンドらしい黒の衣装の上から、赤い着物を羽織った。今回、帯は留めていない。裾を長く引きずっている。
今度はヘアメイクを受けた。その間、仙頭さんからカメラで撮られている。綺麗に出来ていると褒められながら、急ピッチで進められていった。仙頭さんがカメラ越しに話しかけてくれている分、緊張感がほぐれていった。藤沢のモデルの仕事の時も担当しているから、面白いエピソードを教えてくれた。
近くのパーテーションでは、悠人が衣装合わせをしている。すでにヘアスタイルが仕上がっていて、まるで別人のように大人びていた。ひと声でいうと”カッコいい”だ。雑誌で観るバンドメンバーの一人でも違和感がないと思った。
エクステをつけて髪の長さが変わっている。昨日のうちに美容院で仕上げてきたそうだ。先に悠人がスタジオ入りしていたから、ついさっき知った。お互いに話す間がなかったことに驚いた。サイドの髪の毛を編み込んで、後ろで結んで尖らせているスタイルだ。つくり出した人はすごいと思った。
佐久弥のイメージも変わった。ディアドロップでは妖艶な感じだったのに、かっこいいお兄さんになっている。全体的にシンプルだ。ソロ活動バージョンは近くで見たことがなくて、実際に見てみると、かっこよかった。
すると、カメラテストが終わった2人がやって来た。俺の姿を見てビックリしている。俺の方こそ驚いた。佐久弥にシンプルでかっこいいと口にすると、笑っていた。いつもと違うオーラがある。別人のようでもある。悠人もそう言っていた。
「2人が若い分、俺はシンプルにしたかった。……見てみろ。目の下のくぼみが深いだろ?眉間の皺も出来つつある。経験を重ねてきた男の顔だ。自信を持っている。……これで年齢を31歳だと公表できる。デビューした時は、25歳になる直前だった。22歳ってことにした。若い子をターゲット層に意識したからだ。興味を持ってもらわないと、楽曲すら聞いてもらえない。本当はミスで22歳になったんだけど、ちょうどよかったから、そのままだった」
「ふむふむ……。こうやって話すと本人だねー。真面目な話をしたら」
「しゃべったら元通りになったね。ホッとしたよ~」
「ゆうとー。俺は真面目な男だぞ。夏樹も変わったな。妖艶すぎる」
「そうだよー、綺麗な男がいるって思った。しゃべると夏樹だよーー」
悠人がそう言うと、周りの人もウンウンと頷いている。そんなに変わっただろうか?鏡で見ても、自分では分からない。向こうには黒崎と早瀬さんがいる。聞いてみようと思った。
「黒崎さーん」
「なんだ?」
「黒崎さーーーん」
スタッフの許可をもらい、黒崎のことを呼んだ。少ししか離れていないから、俺たちのことが見えるはずだ。さっそく悠人が早瀬さんのそばに行った。それを佐久弥が囃し立てて、スタッフが笑っている。
「ゆうとくーん、かっこいいぞ」
「へへへ。2時間も待ったかいがあったよ。この長さで正解だったねー」
「悠人君は何でも似合うぞーー」
「ここに熱々カップルがいるぞー。クラを連れて来てくれー。寂しいー。クラは会社にいるけど」
悠人達の楽しい雰囲気とは違い、黒崎は黙ったままだ。不機嫌ではないが、照れくさそうに目を逸らしている。こっちまで恥ずかしくなった。
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