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12時。
学食『薄味』で昼ご飯を食べている。この時間でも半分ぐらいしか席が埋まっていない。学食やカフェが何店舗もあるから分散しているのだろう。俺にとっては、薄味がちょうどいい味付けだ。悠人も率先してここに来ようとする。塩分の摂り過ぎを気にして、味付けの濃さに気を遣うようになった。
悠人が和風チキン南蛮とカボチャの煮物、大盛りの五穀米を食べている。他の料理もある。薄味すぎて人気のないものがメインだ。森本と山崎と真羽は豚の生姜焼き定食スタイルだ。それぞれが食べ始めると、悠人から声を掛けられた。
「なつきー、ちゃんと鶏肉料理を食べているねー」
「これはハーフサイズだけどね。ハーブ焼きだからサッパリしているよ」
「……黒崎さんにラインを送らなくても構わないのか?」
「まだ会議中なんだよ。向こうからしてくれる。先に伊吹お兄ちゃんに連絡を取るよ」
「ありがとう……」
悠人が沈んでいる。山下から聞いたことを話したからだ。さすがに驚いていた。早瀬さんや黒崎に相談すると怖いという意見も一致した。伊吹でだめなら登場してもらう。しかし、伊吹に電話をかけたが出られないようだ。もう少し待とうと言っていると、折り返し電話が掛かってきた。声だけは穏やかだ。
「……もしもし。どうしたんだ?」
「忙しいのにごめんね。悠人のことで相談があるんだ。経済学部の先輩に、去年からしつこくされててさ。早瀬さんがいるから、大人しくなっていたのに。悠人の動画とか写真を隠し撮りされているんだ」
「経済学部4年の奥村楓世か。少し待て」
「うん……」
「経営学科の生徒だな。後輩に知り合いがいるから、情報を探る。手を出すな、盗撮するな、余計なことを言うなということだな?」
「うん。黒崎さん達には言えない。お兄ちゃんなら、この大学を知っているもん。マイルドな対応をしてもらえると思って……」
「そう期待するなよ?早瀨さんというラスボス登場が必要かもしれない。経過を報告する」
電話を切った後、悠人がため息をついた。女の子じゃないのにとネガティブになっている。俺から奥村に言ってもいいが、悠人達から止められている。言い過ぎるから、相手のダメージが大きいそうだ。悠人が出て行くと、相手の思うつぼだ。
「ゆうとー、お兄ちゃんに頼るのはいいことなんだ。気づかいが出来るからさ。マイルドなアドバイスをもらえるからね」
「うん。終わったらお礼を言うよ。あまり話したことがないから、話すキッカケになるといいな」
「ええー?お兄ちゃんと友達になりたいの?」
「裕理さんがリスペクトしているんだよ。最も敵にしたくない人なんだってさー」
「わあああ……」
何はともあれ報告を待つだけだ。それぞれが食事を再開させていると、森本から、視線だけを向こうのカウンターへ向けろと言われた。そこには奥村が座っていた。こっちを見る仕草をしている。距離が離れているから気づかなかった。今までもそうだったのかもしれない。俺たちが座っているのは窓際だ。周りには人がまばらの状態だ。つまりは悠人のことが目的だろう。
「奥村さんがいるね……」
「げえええっ。スマホを向けてきたよー」
「……見ているふりをしているだけか?レンズはこっちだな」
「ゆうとー、こっちに座って」
「……このままにしよう。尻尾を掴みたいだろう?」
「そうだけど。危ないし。……黒崎さんから電話だ」
ちょうど良かった。悠人の気を逸らせることができる。黒崎からの電話は、ビデオ通話だった。長めの休憩が取れたのだろう。
「……もしもし。お疲れ様」
「……いつもの薄味にいるのか?」
黒崎の姿が画面に映しだされた。珍しく明るめの色味のスーツを着ている。ネクタイは紺色のストラップで爽やかだ。夏らしくしている。着ている本人が迫力がある分、ややマイルドな印象になっている。どこかのロビーにいる様子だ。これから昼ご飯だろう。
「うん。定番の薄味だよ。鶏肉のハーブグリルも食べているよ~」
「いい子だ。わりと多めだな。悠人君たちと一緒なのか?」
「もちろん。そこは店の前?落ち着いた感じだね」
「……ああ。支社長たちと休憩だ。午後からは会議、夜は飲み会だ。合間に連絡する。遅くなるだろうから寝ておけ。親父が迎えをよこすそうだ」
「いいってば。お義父さんは仕事が……」
「15時に正門だぞ」
「はいはい……」
「そう拗ねるな。留守の間の約束だ。何かあったのか?」
「とくに……」
「怒らないから言ってくれ」
「なつきー。俺から話すよ。席を代わって」
悠人から肩を叩かれた。自分から話すと言って、画面の前に座った。そして、話が始まろうとした時、背後がザワザワしはじめた。向かいに座っている森本が、国府さんがいると呟いた。同じ剣道部の先輩だ。こっちに気づいて軽く手を振っている。そして、数人の男子学生が集まっている。何があったのかと、森本が国府さんの元へ向かった直後、ざわめきが大きくなった。
学食『薄味』で昼ご飯を食べている。この時間でも半分ぐらいしか席が埋まっていない。学食やカフェが何店舗もあるから分散しているのだろう。俺にとっては、薄味がちょうどいい味付けだ。悠人も率先してここに来ようとする。塩分の摂り過ぎを気にして、味付けの濃さに気を遣うようになった。
悠人が和風チキン南蛮とカボチャの煮物、大盛りの五穀米を食べている。他の料理もある。薄味すぎて人気のないものがメインだ。森本と山崎と真羽は豚の生姜焼き定食スタイルだ。それぞれが食べ始めると、悠人から声を掛けられた。
「なつきー、ちゃんと鶏肉料理を食べているねー」
「これはハーフサイズだけどね。ハーブ焼きだからサッパリしているよ」
「……黒崎さんにラインを送らなくても構わないのか?」
「まだ会議中なんだよ。向こうからしてくれる。先に伊吹お兄ちゃんに連絡を取るよ」
「ありがとう……」
悠人が沈んでいる。山下から聞いたことを話したからだ。さすがに驚いていた。早瀬さんや黒崎に相談すると怖いという意見も一致した。伊吹でだめなら登場してもらう。しかし、伊吹に電話をかけたが出られないようだ。もう少し待とうと言っていると、折り返し電話が掛かってきた。声だけは穏やかだ。
「……もしもし。どうしたんだ?」
「忙しいのにごめんね。悠人のことで相談があるんだ。経済学部の先輩に、去年からしつこくされててさ。早瀬さんがいるから、大人しくなっていたのに。悠人の動画とか写真を隠し撮りされているんだ」
「経済学部4年の奥村楓世か。少し待て」
「うん……」
「経営学科の生徒だな。後輩に知り合いがいるから、情報を探る。手を出すな、盗撮するな、余計なことを言うなということだな?」
「うん。黒崎さん達には言えない。お兄ちゃんなら、この大学を知っているもん。マイルドな対応をしてもらえると思って……」
「そう期待するなよ?早瀨さんというラスボス登場が必要かもしれない。経過を報告する」
電話を切った後、悠人がため息をついた。女の子じゃないのにとネガティブになっている。俺から奥村に言ってもいいが、悠人達から止められている。言い過ぎるから、相手のダメージが大きいそうだ。悠人が出て行くと、相手の思うつぼだ。
「ゆうとー、お兄ちゃんに頼るのはいいことなんだ。気づかいが出来るからさ。マイルドなアドバイスをもらえるからね」
「うん。終わったらお礼を言うよ。あまり話したことがないから、話すキッカケになるといいな」
「ええー?お兄ちゃんと友達になりたいの?」
「裕理さんがリスペクトしているんだよ。最も敵にしたくない人なんだってさー」
「わあああ……」
何はともあれ報告を待つだけだ。それぞれが食事を再開させていると、森本から、視線だけを向こうのカウンターへ向けろと言われた。そこには奥村が座っていた。こっちを見る仕草をしている。距離が離れているから気づかなかった。今までもそうだったのかもしれない。俺たちが座っているのは窓際だ。周りには人がまばらの状態だ。つまりは悠人のことが目的だろう。
「奥村さんがいるね……」
「げえええっ。スマホを向けてきたよー」
「……見ているふりをしているだけか?レンズはこっちだな」
「ゆうとー、こっちに座って」
「……このままにしよう。尻尾を掴みたいだろう?」
「そうだけど。危ないし。……黒崎さんから電話だ」
ちょうど良かった。悠人の気を逸らせることができる。黒崎からの電話は、ビデオ通話だった。長めの休憩が取れたのだろう。
「……もしもし。お疲れ様」
「……いつもの薄味にいるのか?」
黒崎の姿が画面に映しだされた。珍しく明るめの色味のスーツを着ている。ネクタイは紺色のストラップで爽やかだ。夏らしくしている。着ている本人が迫力がある分、ややマイルドな印象になっている。どこかのロビーにいる様子だ。これから昼ご飯だろう。
「うん。定番の薄味だよ。鶏肉のハーブグリルも食べているよ~」
「いい子だ。わりと多めだな。悠人君たちと一緒なのか?」
「もちろん。そこは店の前?落ち着いた感じだね」
「……ああ。支社長たちと休憩だ。午後からは会議、夜は飲み会だ。合間に連絡する。遅くなるだろうから寝ておけ。親父が迎えをよこすそうだ」
「いいってば。お義父さんは仕事が……」
「15時に正門だぞ」
「はいはい……」
「そう拗ねるな。留守の間の約束だ。何かあったのか?」
「とくに……」
「怒らないから言ってくれ」
「なつきー。俺から話すよ。席を代わって」
悠人から肩を叩かれた。自分から話すと言って、画面の前に座った。そして、話が始まろうとした時、背後がザワザワしはじめた。向かいに座っている森本が、国府さんがいると呟いた。同じ剣道部の先輩だ。こっちに気づいて軽く手を振っている。そして、数人の男子学生が集まっている。何があったのかと、森本が国府さんの元へ向かった直後、ざわめきが大きくなった。
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