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31-10(夏樹視点)
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……久田さん入りますー、佐伯さんのー
……黒崎さんに吸入器をーー!
大歓声に見送られてサイドに引込んだ。不思議なことが起こっている。観客の前に立っている時は息も乱れないし、足元もヨロけていなかった。
しかし、ステージサイドに下がった後、膝から崩れ落ちるようになった。支えてくれているのは、カッコいいギタリストの yu-to だ。腱鞘炎になった右手が心配だ。
「なつきーー。俺は有言実行だぞー」
「ホントだね……、右手は……」
「平気だよ。キミのことを支える余力は残してあるもん」
「さすがだね……」
いつか悠人がバンドを立ち上げる気がする。ボーカリストとして参加したい。夢と現実がごちゃ混ぜだ。未来が見えているのか?そうだったらいいな。
ステージから観た景色は素敵な場所だった。沢山の笑顔、声援、同じ時間と空間を共有した仲間たちがいた。観客、スタッフ、ミュージシャン。楽器、機材、会場、照明。数えきれないほどだ。
みんなで手をつなぎ合ってジャンプをした後、一番最初に探した人は黒崎だ。どんなに照明が降り注いでいても、見つけることが出来た。光線銃を差し込んだ後も。
「お母さん……、泣いてた……」
「なつきーー、黒崎さんが控え室にいるから!呼んでもらっているよ」
「なつきー、お母さんか?呼んできてやる。蓮司くーん。夏樹のお母さんを呼んで!会場アナウンスで!」
「りょーーかい!」
バタバタ……。悠人がついてくれている。毛布越しに抱きしめられている。耳元では名前を呼んでくれている。
「……なつきー、がんばったね、心臓もがんばったね、えらいよ。ちゃんと休もうね。黒崎さんが来てくれるよ、お母さんも。アナウンスで呼んだよ。ここで待とうね……」
なんて優しい声だろう?熱い男が天使に化けている。いつも救われていた。七転び八起きのナツツバキだ。
今度はアナウンスが聞こえて来た。もうお客さんを外に出す時間だろうか。見送りたかったのに。俺の名前も聞こえた。
「……お呼び出し申し上げます、なつき君のお母さま、……ステージサイドにお越しください……なつき君がお待ちです……繰り返します……」
夏樹!
なつき……。
ぼんやりと顔を上げると、俺の名前を呼んでいる2人がいた。どっちへダイブしよう?そう考えた後、暗い色味のスーツへと、ヨロけながら抱きついた。お母さん、ごめんねと謝りながら。俺が飛びついたら倒れてしまうと思ったからだ。
「黒崎さーーんっ」
「ここにいる。お母さんも」
「うわあああああんっ」
「……夏樹、ここは冷えるから」
「お母さんがそう言っているぞ。立てるか?」
「……お母さんも一緒に行くから」
「黒崎さん!くろさきさんっ、うわああああんっ」
「こら、お母さんが……」
「クルクルまわって……うぇ……ひっく」
感情が高ぶっている。励ましの声、笑い声、担架は必要ないなー、顔色がいい。いいことばかりが聞こえている。すると、俺の顔写真が貼り付けられたものが見えた。母が作ったうちわだ。それで扇がれている。笑っていた。お母さんに駆けつけてもらうミュージシャンがいるだろうか?成人したのに。
それでもいい。今はそう思った。後になって恥ずかしいだろう。これが最後の泣き顔だと決めて、母の前で大泣きした。こんなことも求めておこう。
「クルクル……」
「今はだめだ」
「うわあああああんっ、結婚記念日なのにーっ」
「はいはい。後でやってやる」
ここにいるスタッフ達の笑顔も輝いている。みんなで作りあげた。拍手喝采が起きる中、毛布に包まれて目を閉じた。悠人のジャケットを掴んだままで。
……黒崎さんに吸入器をーー!
大歓声に見送られてサイドに引込んだ。不思議なことが起こっている。観客の前に立っている時は息も乱れないし、足元もヨロけていなかった。
しかし、ステージサイドに下がった後、膝から崩れ落ちるようになった。支えてくれているのは、カッコいいギタリストの yu-to だ。腱鞘炎になった右手が心配だ。
「なつきーー。俺は有言実行だぞー」
「ホントだね……、右手は……」
「平気だよ。キミのことを支える余力は残してあるもん」
「さすがだね……」
いつか悠人がバンドを立ち上げる気がする。ボーカリストとして参加したい。夢と現実がごちゃ混ぜだ。未来が見えているのか?そうだったらいいな。
ステージから観た景色は素敵な場所だった。沢山の笑顔、声援、同じ時間と空間を共有した仲間たちがいた。観客、スタッフ、ミュージシャン。楽器、機材、会場、照明。数えきれないほどだ。
みんなで手をつなぎ合ってジャンプをした後、一番最初に探した人は黒崎だ。どんなに照明が降り注いでいても、見つけることが出来た。光線銃を差し込んだ後も。
「お母さん……、泣いてた……」
「なつきーー、黒崎さんが控え室にいるから!呼んでもらっているよ」
「なつきー、お母さんか?呼んできてやる。蓮司くーん。夏樹のお母さんを呼んで!会場アナウンスで!」
「りょーーかい!」
バタバタ……。悠人がついてくれている。毛布越しに抱きしめられている。耳元では名前を呼んでくれている。
「……なつきー、がんばったね、心臓もがんばったね、えらいよ。ちゃんと休もうね。黒崎さんが来てくれるよ、お母さんも。アナウンスで呼んだよ。ここで待とうね……」
なんて優しい声だろう?熱い男が天使に化けている。いつも救われていた。七転び八起きのナツツバキだ。
今度はアナウンスが聞こえて来た。もうお客さんを外に出す時間だろうか。見送りたかったのに。俺の名前も聞こえた。
「……お呼び出し申し上げます、なつき君のお母さま、……ステージサイドにお越しください……なつき君がお待ちです……繰り返します……」
夏樹!
なつき……。
ぼんやりと顔を上げると、俺の名前を呼んでいる2人がいた。どっちへダイブしよう?そう考えた後、暗い色味のスーツへと、ヨロけながら抱きついた。お母さん、ごめんねと謝りながら。俺が飛びついたら倒れてしまうと思ったからだ。
「黒崎さーーんっ」
「ここにいる。お母さんも」
「うわあああああんっ」
「……夏樹、ここは冷えるから」
「お母さんがそう言っているぞ。立てるか?」
「……お母さんも一緒に行くから」
「黒崎さん!くろさきさんっ、うわああああんっ」
「こら、お母さんが……」
「クルクルまわって……うぇ……ひっく」
感情が高ぶっている。励ましの声、笑い声、担架は必要ないなー、顔色がいい。いいことばかりが聞こえている。すると、俺の顔写真が貼り付けられたものが見えた。母が作ったうちわだ。それで扇がれている。笑っていた。お母さんに駆けつけてもらうミュージシャンがいるだろうか?成人したのに。
それでもいい。今はそう思った。後になって恥ずかしいだろう。これが最後の泣き顔だと決めて、母の前で大泣きした。こんなことも求めておこう。
「クルクル……」
「今はだめだ」
「うわあああああんっ、結婚記念日なのにーっ」
「はいはい。後でやってやる」
ここにいるスタッフ達の笑顔も輝いている。みんなで作りあげた。拍手喝采が起きる中、毛布に包まれて目を閉じた。悠人のジャケットを掴んだままで。
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