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午前0時。
ステージと挨拶回りが終わり、会場を出てきた。季節が変わったと実感したのは、外に出た時だった。湾沿いからの風が吹き込んできて、肌寒いと思った。控え室でシャワーを浴びてきたから、身体は温まっている。髪の毛も乾かしてきた。しかし、外はコートが欲しくなるほどに寒いと思った。
「うわーーー。寒いなあ。こんなに寒かったっけ?」
「ステージで熱を使い果たしたんだろう。これを着ておけ」
「あれ?上着を持ってきてくれたんだね~」
「念のためだった」
黒崎にパーカーを着せてもらった。いつも大学で着ている、浅草で買ったやつだ。それを着るとすぐに温かくなり、気持ちがホッとした。
今日のステージが終わった後、みんなでジュースで乾杯した。打ち上げは後日になる。スタッフさん達がステージの撤収作業に入り、その間、俺達は取材を受けた。そして、来てくれた人にロビーで挨拶をした。みんなから、今日は良かったよ、頑張ってと声をかけてもらえた。
両親達はホテルに帰った。伊吹は聡太郎と一緒にこの辺りを散歩してから帰ると言っていた。二葉と朝陽は一緒に帰った。帰りは喧嘩していなくてホッとした。
そして、黒崎から聞かされたことに驚いているところだ。俺が高校三年生の時に、山岡達也から襲われたときに駆けつけてくれた女性が二葉だと聞かされた。そして、佐久弥も駆けつけてくれたことが分かった。たしかにあの日はディアドロップのライブがあった。佐久弥が休憩中に散歩していた時に、俺達に遭遇したそうだ。俺は聞いてすぐにお礼を言いに行くと、黙っていてくれと言ったのにと、二人から恐縮された。
歩いていると、悠人と早瀬さんの姿を見つけた。手を振ると、笑いながら振り替えしてくれた。クルクル回らないのか?と聞かれながら。お互いにこれから車に乗って帰る。佐久弥もさっき蔵之介さんと一緒に帰っていた。マネージャーの蓮司さんと打ち合わせをしながらだった。
「今日はクルクル回らなくて良いのか?」
「やめておくよ。俺も成長するんだ~」
「やってやる」
「いいってば」
「いきなり大人になるな」
「いいじゃん~。また代わりのことを見つけておくよ~」
黒崎の腕にすがりついた。そして、自分の方から頬にキスをした。すると、優しいキスを返してくれたこれで十分だ。
俺は成長しただろうか。これからどんなことが待っているだろうか。今日のステージがスタートになり、一年後には解散する。そして、また佐久弥とバンドを始める。その時は期間限定ではない。黒崎製菓の仕事と音楽活動が同時に出来るだなんて、去年は思ってもいなかった。
コルクボードを使っていた高校三年生の時にタイムスリップできるのなら、その時の自分に言いたい。想像を超えた未来があったんだよと。ということは、来年の自分にも、想像以上の未来が待っているのかも知れない。それを怖いと思うか?はっきり言って、怖い。それを黒崎に正直に言うと、苦笑された。
「どうした?心配になってきたのか?」
「うん。表に出る仕事を始めるなんて思っていなかったからさ。俺、もっと食べるようにするよ」
「今日は倒れたうちに入らないだろう。よく頑張った」
「うん。ありがとう」
こういう時、普段の自分なら泣いてしまうのに、不思議と涙が出なかった。きっと、水分が出て行きすぎたのだと思う。それを黒崎はこう言った。また強くなったのだと。
空を見上げると、フォーマルハウトが輝いていた。晴海さんと初めて会った夜に喧嘩になった後、お義父さんと散歩に出た。その時に空に輝いていた星だ。そのお義父さんと黒崎が関係が修復されつつあり、俺と晴海さんは気が合っている。何があるか分からない。
「来てもいない未来を不必要に怖がることはない。そうだろう?お前が悠人君に言った言葉だ」
「うん。良い未来があるといいね!」
「俺について来いと言わないのか?」
「言わないよ~。一緒に歩いて行こうね!」
黒崎の手を握った。今着ているのは、パーカーだ。さっきまではステージ衣装だった。どちらも自分で間違いない。隣には黒崎がいる。いつもの日常だ。
黒崎さん。いつまでも愛しているよ。
この言葉は胸にしまっておいた。
とても幸せだ。そう実感しながら、歩き始めた。我が家に帰るために。
now and for ever. <END>
ステージと挨拶回りが終わり、会場を出てきた。季節が変わったと実感したのは、外に出た時だった。湾沿いからの風が吹き込んできて、肌寒いと思った。控え室でシャワーを浴びてきたから、身体は温まっている。髪の毛も乾かしてきた。しかし、外はコートが欲しくなるほどに寒いと思った。
「うわーーー。寒いなあ。こんなに寒かったっけ?」
「ステージで熱を使い果たしたんだろう。これを着ておけ」
「あれ?上着を持ってきてくれたんだね~」
「念のためだった」
黒崎にパーカーを着せてもらった。いつも大学で着ている、浅草で買ったやつだ。それを着るとすぐに温かくなり、気持ちがホッとした。
今日のステージが終わった後、みんなでジュースで乾杯した。打ち上げは後日になる。スタッフさん達がステージの撤収作業に入り、その間、俺達は取材を受けた。そして、来てくれた人にロビーで挨拶をした。みんなから、今日は良かったよ、頑張ってと声をかけてもらえた。
両親達はホテルに帰った。伊吹は聡太郎と一緒にこの辺りを散歩してから帰ると言っていた。二葉と朝陽は一緒に帰った。帰りは喧嘩していなくてホッとした。
そして、黒崎から聞かされたことに驚いているところだ。俺が高校三年生の時に、山岡達也から襲われたときに駆けつけてくれた女性が二葉だと聞かされた。そして、佐久弥も駆けつけてくれたことが分かった。たしかにあの日はディアドロップのライブがあった。佐久弥が休憩中に散歩していた時に、俺達に遭遇したそうだ。俺は聞いてすぐにお礼を言いに行くと、黙っていてくれと言ったのにと、二人から恐縮された。
歩いていると、悠人と早瀬さんの姿を見つけた。手を振ると、笑いながら振り替えしてくれた。クルクル回らないのか?と聞かれながら。お互いにこれから車に乗って帰る。佐久弥もさっき蔵之介さんと一緒に帰っていた。マネージャーの蓮司さんと打ち合わせをしながらだった。
「今日はクルクル回らなくて良いのか?」
「やめておくよ。俺も成長するんだ~」
「やってやる」
「いいってば」
「いきなり大人になるな」
「いいじゃん~。また代わりのことを見つけておくよ~」
黒崎の腕にすがりついた。そして、自分の方から頬にキスをした。すると、優しいキスを返してくれたこれで十分だ。
俺は成長しただろうか。これからどんなことが待っているだろうか。今日のステージがスタートになり、一年後には解散する。そして、また佐久弥とバンドを始める。その時は期間限定ではない。黒崎製菓の仕事と音楽活動が同時に出来るだなんて、去年は思ってもいなかった。
コルクボードを使っていた高校三年生の時にタイムスリップできるのなら、その時の自分に言いたい。想像を超えた未来があったんだよと。ということは、来年の自分にも、想像以上の未来が待っているのかも知れない。それを怖いと思うか?はっきり言って、怖い。それを黒崎に正直に言うと、苦笑された。
「どうした?心配になってきたのか?」
「うん。表に出る仕事を始めるなんて思っていなかったからさ。俺、もっと食べるようにするよ」
「今日は倒れたうちに入らないだろう。よく頑張った」
「うん。ありがとう」
こういう時、普段の自分なら泣いてしまうのに、不思議と涙が出なかった。きっと、水分が出て行きすぎたのだと思う。それを黒崎はこう言った。また強くなったのだと。
空を見上げると、フォーマルハウトが輝いていた。晴海さんと初めて会った夜に喧嘩になった後、お義父さんと散歩に出た。その時に空に輝いていた星だ。そのお義父さんと黒崎が関係が修復されつつあり、俺と晴海さんは気が合っている。何があるか分からない。
「来てもいない未来を不必要に怖がることはない。そうだろう?お前が悠人君に言った言葉だ」
「うん。良い未来があるといいね!」
「俺について来いと言わないのか?」
「言わないよ~。一緒に歩いて行こうね!」
黒崎の手を握った。今着ているのは、パーカーだ。さっきまではステージ衣装だった。どちらも自分で間違いない。隣には黒崎がいる。いつもの日常だ。
黒崎さん。いつまでも愛しているよ。
この言葉は胸にしまっておいた。
とても幸せだ。そう実感しながら、歩き始めた。我が家に帰るために。
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