恋人はメリーゴーランド少年だった~永遠の誓い編

夏目奈緖

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 おじさんが聞き上手だから、どんどん話したくなる。それにおじさんの話が面白かった。突拍子もなくて、吹き出して笑った。それは、おじさんが行った近所の病院でのことだった。採血を受ける時に怖がったふりをして、お医者さんや看護師さんから、優しくされたそうだ。

「おじさん~。それって悪いことだよ」 
「そうか?夏樹君が若いから、そう思うだけだよ」 
「だめだって!どんなに年を取ってもさ~」 
「ははは」 

 気がつくと、周りにいる人達から視線を向けられていた。遠巻きに見ている人もいた。慌てて声の大きさを弱めた。 

「ごめんなさい。声が大きかったんだ……」 
「気にすることじゃないぞ」 
「でも……。俺たち、目立っている気がする」 
「私たちの組み合わせが面白いからだろう。私の方が話しこんでしまったね」 
「おじさんが面白いし、相槌を打つのが上手だからだよ。……遅いなあ?」 
「ご家族の方だね。もうすぐ来ると思うよ」 
「そうだったらいいんだけど……」
「夏樹君」 
「は、はい」 
「これから人と会ってくるから席を外すよ。最後までいるんだろう?」 
「はい、そう聞いています」 
「帰るまでに、また会えるだろう。ご家族の方を紹介してほしい」 
「もちろんです。変な奴だから、ドン引くかも……」
「……」 
「大丈夫ですか?」

 おじさんが笑った後、急に胸を抑えて咳き込み始めた。息苦しさと痛みが襲ってきているのが分かった。急いでネクタイを緩めて、シャツの襟元を開けた。そして、近くにいた人がスタッフへ声をかけて、秘書の男性を呼びに行ってもらった。俺はおじさんの背中をさすった。

「すまない。介抱が慣れているんだね」 
「子供の頃に悪かったからだよ。ちょっと待ってて。もう痛くない?……あ、吐きそう?トイレへ行こう。俺が支えるから……。間に合わないんだ!?ちょっと待って。えーーっと」 

 今にも吐きそうな体勢になっている。トイレまで間に合いそうもなかった。このまま吐くと、服が汚れてしまう。絨毯を汚すと、本人が気にしてしまうだろう。 

(ビニール袋は無いよね。どうしよう。俺が手で受け止めようか。それか……)

 とっさに思いついたのが、革靴を受け皿に吐いてもらうことだった。これしか方法が思いつかない。急いで靴を脱いけれど、もう遅かった。おじさんが嘔吐する体勢になってしまった。

 とても苦しそうだ。でも、何度も背中をさすっているうちに吐き気が収まったようだ。俺の服を汚してしまったことを気にしている。大丈夫だと何度も言い、おじさんに椅子に座ってもらった。
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