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男性から少し話をしようと言われた。助けてもらったからお礼が言いたい。お礼を言うと、彼が笑顔になった。そして、そばに立っている男性は秘書だから、気兼ねなく話をしてくれと言われた。
「高校生ぐらいに見える子が一人で待っているから気になったんだよ。沢山の人から声を掛けられて、困っていただろう?お節介とは思ったが、声を掛けさせてもらった」
「ありがとうございました。こういう場に慣れていなくて……」
「失礼がないように心がけていたのが伝わってきたよ。ご家族から教えられたのかな?」
「はい。そうするだけで、精一杯でした」
「私の話し相手になってもらえないか?ご家族の方が迎えにいらっしゃるまでの間だ」
「もちろんかまいません」
「そうか。おじさんと呼んでくれ。……村井」
「……承知しました」
秘書の男性が、一礼して立ち去った。
どうしてこんなに打ち解けられたのだろう。初めて会った相手なのに、俺は自然と話ができている。おじさんから質問されるたびに、答えを返していく会話が続いた。お互いに笑顔になるのが嬉しくて、もっと話をしたくなった。
「……退屈をしていないか?」
「いいえ。すごく面白いです。もっと質問してください」
「君の方こそ面白い子だ。そう言われたのは若い頃以来だ」
「クラスの子から、変な奴って言われたことがあります」
「失礼なことを言う子がいるんだね。腹が立たないのかな?」
「いいえ。個性的でいいと思っています。それが自分だからです」
「それが理由で疎まれることはないのかな?」
「他人から嫌われることは怖くありません。嫌いなら勝手に嫌えばいい。その代わりに、その相手を視界の隅にも入れません」
「……はっきり答えたね。どうして嫌われることが怖くないのかな?周りに合わせられなくて、弊害が出ていなかったのか?」
「人間の中身についての評価は、基準はありませんから。もちろん犯罪はいけない事だし、悪いことをしたら認めます」
「そうか。高校はどこかね?」
「私立開明高校といいます。地元の学校です」
「古い知り合いに、創立メンバーがいるよ」
「ええ?そうなんですね!」
「やっと高校生らしい表情を見せてくれたね」
「……ごめんなさい。こんな繋がりがあるって思ってなくて」
「気にしなくていい。私には孫がいない。君ぐらいの年の子と話す機会がなくて、寂しく思っている。迷惑でなければ、もう少し話し相手になってもらえるかな?名前を聞いても良いか?」
「はい!自己紹介がまだでした。中山夏樹と申します」
黒崎から名前を聞かれても答えてはいけないとは言われていない。彼がこの場にいたら、どうだろうか。俺は自然と名乗ってしまった。黒崎に叱られてしまうだろうか。でも、俺は名乗りたいと思ったから、また不思議になった。すると、おじさんが笑顔になって、指先で字を書いた。俺の名前だ。
「夏樹君か。……夏、樹という字かな?」
「そうです」
「夏の時期に生まれたのかな?」
「いいえ。4月生まれです。星座で『夏の大三角』をご存知ですか?」
「分かるよ。私は星を眺めることが好きだからね。はくちょう座のデネブ。わし座のアンタイル。こと座のベガを結んで出来るものだ」
「わあ。話が合いますね。あ、ごめんなさい」
「いいよ。続きを聞かせてくれ」
「俺のことがお腹に出来たことを知ったのが、8月だったからです。その日の夜は星が綺麗で、夏の大三角を見つけた父が『夏樹』にすると決めたんです。 兄は『伊吹』という名前です。……12月19日が予定日だったけど、24日に産まれたんです。周りの人から笑われるから、兄は嫌がっています」
「それは面白い。お兄さんの会社の名前もだが……」
おじさんが笑い声を立て始めた。 眉間に深い皺があるから怖い印象を持っていたのに、優しい顔をした人だと思った。
「お兄さんとの、2人兄弟なのか?」
「妹が一人います。3人兄妹です。『万理一空』から取った名前だと、父から聞かされました」
「仲のいい兄弟だね」
「はい。両親には感謝をしています」
「是非とも会って話がしたい。……私からも話して構わないかな?」
「もちろん。聞かせて下さい」
「気が合うね」
「はい!」
緊張の連続で疲れていたのに、こんなに楽しいことが起きるとは思わなかった。気が合う者同士には、年齢差がないのだろうか。話を合わせてくれていると思うが、それでも、いつもの自分なら、ここまで会話が続かないだろう。おじさんと話すのが楽しいと思った。
「高校生ぐらいに見える子が一人で待っているから気になったんだよ。沢山の人から声を掛けられて、困っていただろう?お節介とは思ったが、声を掛けさせてもらった」
「ありがとうございました。こういう場に慣れていなくて……」
「失礼がないように心がけていたのが伝わってきたよ。ご家族から教えられたのかな?」
「はい。そうするだけで、精一杯でした」
「私の話し相手になってもらえないか?ご家族の方が迎えにいらっしゃるまでの間だ」
「もちろんかまいません」
「そうか。おじさんと呼んでくれ。……村井」
「……承知しました」
秘書の男性が、一礼して立ち去った。
どうしてこんなに打ち解けられたのだろう。初めて会った相手なのに、俺は自然と話ができている。おじさんから質問されるたびに、答えを返していく会話が続いた。お互いに笑顔になるのが嬉しくて、もっと話をしたくなった。
「……退屈をしていないか?」
「いいえ。すごく面白いです。もっと質問してください」
「君の方こそ面白い子だ。そう言われたのは若い頃以来だ」
「クラスの子から、変な奴って言われたことがあります」
「失礼なことを言う子がいるんだね。腹が立たないのかな?」
「いいえ。個性的でいいと思っています。それが自分だからです」
「それが理由で疎まれることはないのかな?」
「他人から嫌われることは怖くありません。嫌いなら勝手に嫌えばいい。その代わりに、その相手を視界の隅にも入れません」
「……はっきり答えたね。どうして嫌われることが怖くないのかな?周りに合わせられなくて、弊害が出ていなかったのか?」
「人間の中身についての評価は、基準はありませんから。もちろん犯罪はいけない事だし、悪いことをしたら認めます」
「そうか。高校はどこかね?」
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「ええ?そうなんですね!」
「やっと高校生らしい表情を見せてくれたね」
「……ごめんなさい。こんな繋がりがあるって思ってなくて」
「気にしなくていい。私には孫がいない。君ぐらいの年の子と話す機会がなくて、寂しく思っている。迷惑でなければ、もう少し話し相手になってもらえるかな?名前を聞いても良いか?」
「はい!自己紹介がまだでした。中山夏樹と申します」
黒崎から名前を聞かれても答えてはいけないとは言われていない。彼がこの場にいたら、どうだろうか。俺は自然と名乗ってしまった。黒崎に叱られてしまうだろうか。でも、俺は名乗りたいと思ったから、また不思議になった。すると、おじさんが笑顔になって、指先で字を書いた。俺の名前だ。
「夏樹君か。……夏、樹という字かな?」
「そうです」
「夏の時期に生まれたのかな?」
「いいえ。4月生まれです。星座で『夏の大三角』をご存知ですか?」
「分かるよ。私は星を眺めることが好きだからね。はくちょう座のデネブ。わし座のアンタイル。こと座のベガを結んで出来るものだ」
「わあ。話が合いますね。あ、ごめんなさい」
「いいよ。続きを聞かせてくれ」
「俺のことがお腹に出来たことを知ったのが、8月だったからです。その日の夜は星が綺麗で、夏の大三角を見つけた父が『夏樹』にすると決めたんです。 兄は『伊吹』という名前です。……12月19日が予定日だったけど、24日に産まれたんです。周りの人から笑われるから、兄は嫌がっています」
「それは面白い。お兄さんの会社の名前もだが……」
おじさんが笑い声を立て始めた。 眉間に深い皺があるから怖い印象を持っていたのに、優しい顔をした人だと思った。
「お兄さんとの、2人兄弟なのか?」
「妹が一人います。3人兄妹です。『万理一空』から取った名前だと、父から聞かされました」
「仲のいい兄弟だね」
「はい。両親には感謝をしています」
「是非とも会って話がしたい。……私からも話して構わないかな?」
「もちろん。聞かせて下さい」
「気が合うね」
「はい!」
緊張の連続で疲れていたのに、こんなに楽しいことが起きるとは思わなかった。気が合う者同士には、年齢差がないのだろうか。話を合わせてくれていると思うが、それでも、いつもの自分なら、ここまで会話が続かないだろう。おじさんと話すのが楽しいと思った。
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