森林の星空少年~あの日のメエメエ

夏目奈緖

文字の大きさ
99 / 869

11-15

しおりを挟む
 夏樹が早瀬と久弥の記念指輪という愛の絆を形にしたものを、それはそれは大事にしているはずだ。それを否定する己の心を恥じても、溢れ出して来た。

「だめだだめだーー!十悪になるーー!」
「悠人、誤解するな。……久弥、別の指輪をプレゼントしたんだろう?」
「ああ。俺達の……ごほっ、ごほっ。クラー」

 どうしよう?久弥が抱きつくことで気持ちを伝えているなら、ごめんねという意味だろう。いくら誤解だと説明されたところで、はいそうですね。ふむふむ。気づかなかったふりが出来ない。

「優しい嘘をつかなくてもいいよ。あの子を励ます力になるなら、とっても良いことだよ」
「違うよ。デザインを覚えていたから話していた。悠人が見たものとは別だと分かった。それで話が済んだ。ゆうとー、おいで……」

 どうしよう?気持ちを抑えられなくなった。ここは素直にすがりついて泣いておこう。蔵之介さんが溜息をつき、本当の事を話してやれと、久弥に声をかけた。他に真相候補があるのか?ぱっと顔を上げて、振り返った。

「あのなー。こっちの事実の方が嫌だろう。ゆうちゃんは平気でも。クラも平気だなー?今更だからな……」
「悠人のことはフォローする。夏樹君に真相を話すことが、一番引っかかっているはずだ。……そうだろう?気にするからだよね?」
「あああ……。面白くない気分もあるんだ。真相を知ったらスッキリするよ」
「そうか……」
「ひいいいいっ。ひぇー、ふううー」

 深呼吸をして答えを待っていると、久弥が左手を差し出して来たから、とっても嫌な予感がした。そして、その勘は的中した。

 久弥が今着けている指輪こそ、大人になった後、早瀬から贈られた指輪だと知った。しかも、装着している事実を前にして、開いた口が塞がらない。おまけにコンタクトレンズまで渇いてきた。そして、夏樹に渡したのは、早瀬が気に入って、久弥が買った思い出の指輪だと知った。

「この指輪、かっこいいと言ってくれたな。お前とは趣味が合うなー。さすがは”久々コンビ”だと思った。最初から言っていたもんな。あげようかと思ったんだぞ?でもなー。ゆうちゃんが嫌がるに決まっているからな。OKが出れば……、渡そうかと」
「あああ……」

 どうしよう?耳と鼻がいいだけでなく、直観力も備わっていたのか。それを、あっさりと肯定された。こんなことを乗り越えた3人は、これからも仲良しだろう。こうして当時の思い出を語り合い、懐かしんでいる。誓いの指輪を眺めて談笑しているのは、恋愛上級者といえよう。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
鍛えられた肉体、高潔な魂―― それは選ばれし“供物”の条件。 山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。 見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。 誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。 心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

イケメンオジイついに交際したことを忘れる

彩根梨愛
BL
天然雰囲気冴えない系イケメンの高校生、綾野蒼に知らん間に彼氏が出来ていた話。

目覚ましに先輩の声を使ってたらバレた話

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
サッカー部の先輩・ハヤトの声が密かに大好きなミノル。 彼を誘い家に泊まってもらった翌朝、目覚ましが鳴った。 ……あ。 音声アラームを先輩の声にしているのがバレた。 しかもボイスレコーダーでこっそり録音していたことも白状することに。 やばい、どうしよう。

帰宅

pAp1Ko
BL
遊んでばかりいた養子の長男と実子の双子の次男たち。 双子を庇い、拐われた長男のその後のおはなし。 書きたいところだけ書いた。作者が読みたいだけです。

あの頃の僕らは、

のあ
BL
親友から逃げるように上京した健人は、幼馴染と親友が結婚したことを知り、大学時代の歪な関係に向き合う決意をするー。

ハンターがマッサージ?で堕とされちゃう話

あずき
BL
【登場人物】ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ハンター ライト(17) ???? アル(20) ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 後半のキャラ崩壊は許してください;;

処理中です...