森林の星空少年~あの日のメエメエ

夏目奈緖

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18-12

 そういえば、早瀬からの電話もラインも入っていない。同窓会を楽しんでいるのだろう。連絡が欲しいとは言ってはいけない。タイミングというものがある。こちらから、彼にラインを入れてある。ケーキ作りの失敗と、夏樹達が来てくれて、これからケーキを焼くことを。

「早瀬さんから連絡は来た?」
「まだなんだよ。晩ご飯の時間には帰ってくるって言っていたよ……」
「寂しいだろ~」
「ふむふむ。君のところは必ず連絡が入るもんね。俺達はそうでもないよ……」

 本当は連絡が無いのは珍しいぐらいだ。大人びた発言をしてみた。強がっていることは内緒である。すると、カズさんが洗面所から出てきた。さっきお饅頭の中身を解体して餡子の形状を観るということをしていたから、手がベトベトして、洗いに行っていた。そして、俺達に笑いかけてきた。なんだか嫌な予感がした。そして、カズさんが言った。バスタオルに気がついたと。

 一体、どういうことだろうか?あるのは、普通のことではないのか。使った後で洗濯せずに放置していたのだろうか。そんなわけはない。早瀬が今朝、俺のバスタオルも洗濯していたからだ。

「……洗面所にバスタオルがあったから匂いを嗅いだら、裕理君の匂いがした!」
「げえええええっ」

 この悲鳴は、バスタオル洗濯の失敗という意味ではない。ましてや、早瀬の汗の匂いとも言わない。カズさんの変態さに上げた声である。

「カズさん。うちはしっかり洗っているよーー」
「お兄ちゃん。早瀬さんのことが好きだもんねえ。匂いを嗅ぐってどういうことだよ。だめだよ!」

 変態に思われることはしてはいけませんと言って、夏樹がカズさんのことを諭した。カズさんに悪気はない。畳んだバスタオルがあったから、心が躍ったのだろう。まさか、それが目当てで洗面所に行ったのか?キッチンで手を洗うことも出来るだろう。

「カズさーーん。それが目当てだったのーー?」
「……ああ。そうだよ……」
「ああって……。お兄ちゃん……。いけません!」

 夏樹がまたカズさんのことを諭した。本音を言ってはいけません。そのようにも取れる。ここで気がついた。俺の方もいけないことを思い浮かべたことに。親友とマブダチのやり取りに疑いを向けてしまった。いけないことだ。ここはもう、スフレチーズケーキづくりを始めるしかない。そう声をかけて、夏樹と俺はキッチンにて手を洗った。そして、夏樹が俺とカズさんに声をかけてきた。

「さあ。始めるよ~」
「うん。ケーキ型にクッキングシートを敷くんだね……。もう切ってあるんだね。ありがとう。これも持って来てくれて……」
「いいんだよ。早瀬さんが帰るまでに仕上げておきたいからね。卵を卵白と卵黄に分けてよ。はい。よくできました。上手だね~」
「へへへ。これは出来るんだ。次はオーブンを190度に予熱するの?もうするの?冷めない?」
「冷めないよ。しっかり温めておきたいんだ。黒焦げにならないから大丈夫だよ」

 夏樹に促されて、オーブンの予熱を開始した。そして、ボウルにクリームチーズを入れてなめらかになるまで泡立て器で混ぜ、砂糖を加えて混ぜた。さらに、卵黄と牛乳と加え、よく混ぜた。今度はレモン汁だ。これも夏樹が用意してくれたから、さっそく、材料に加えて混ぜた。

「薄力粉をふるいながら加えてね!ふるってあるけど、またやっておくといいよ」
「ふむふむ、入れたよ。これを手早く混ぜ合わせるのかーー」

 どうしよう?あっという間に生地が出来上がっていくではないか。次はメレンゲ作りだ。夏樹に付き添われながら、別のボウルに卵白を入れ、ハンドミキサーで泡立て始めた。ふんわりするまでかき混ぜることだ。

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