森林の星空少年~あの日のメエメエ

夏目奈緖

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 黒崎製菓グループで行われた過去の運動会では、同じくホテルのペア宿泊券が商品として用意されて、ある男性社員が獲得した。同じ社内にいる恋人の男性社員を誘っていくかと思っていたら、別の男と泊まりに行ったことが恋人にバレて、社内で修羅場になったことがあるそうだ。

 それ以来、宿泊券を賞品にするのはやめておこうかという空気があるそうだが、宿泊券やレストラン招待券などは人気があり、用意することにしているそうだ。今回のことで無料券をゲットしたお見合い候補者が、羽音さん以外の男性と泊まりに行くかも知れないことは想定済みだ。黒崎製菓グループにおいて、毎回そういう事が起きているからだ。

「だめだだめだーー。裕理さん。宿泊券のプレゼントはやめておこうよーー。カップルが修羅場を迎えるジンクスになっているんだろーーー」
「それこそ、だめだだめだ。お見合いオーディションはモウモウ牧場の宣伝も兼ねている。スポンサーになってくれたんだよ。会場では牧場のソフトクリームのサービスや、牧場で出している珈琲の販売、試飲コーナーも作る」
「大きな会場でやるの?」
「ああ。ホテルの一室を借りる。大広間だ。ニューライトホテルの百合の間だよ。照明セットが組まれたステージがある部屋だ」
「ふむふむ。オーディションだもんね。華やかにしたいんだね」
「ああ。羽音さんだからな。王子様キャラにふさわしくコーディネートしたい。ああ、高野が上着を脱いだぞ。次はズボンを脱いでくれと言われている……」
「だめだだめだーー。ほお……。すらっとした足だなあ……」

 どうしよう?高野さんがズボンを脱いでいて、彼の足に見とれた。美脚である。羽音さんは昨夜寝ぼけておきながらも、しっかりと高野さんの身体を観察したのだろう。早瀬も見とれている。

「だめだだめだーー。俺以外の人を見ないでーーー」
「はははは。止めなくていいのか?ああ、店員さんに止められるか。さすがに……」
「うひぇーーー」

 どうしよう?高野さんがシャツも脱いでしまい、上下アンダーウェア姿になった。全身がすらっとしている。良い体である。そんなことを考えているうちに、羽音さんが高野さんに、全部脱いでくれと言い出したから、止めに入ることにした。

「だめです!いけません!羽音さん!」
「ああーーー、残念だ。気がつかれてしまったか。早瀬さんと話し込んでいるから、チャンスだと思ったのに……」
「気がつかないわけがありません。さあ、高野さん。服を着て下さい……」

 俺は高野さんが服を着る姿を見守った。いくら真面目だからとは言え、なんでも言うことを聞くのはいけないだろう。きっと高野さんは子供の頃から周りの大人に言うことを聞かされてきたのだろう。そんなことを考えて、胸が痛くなった。

「高野さん。かくかくしかじかなんですか?」
「ああ、僕はそういうタイプだよ。なにせ一人っ子でね……。実家ではあれこれと世話を焼かれている。両親からはああいうことをしたらいい、こんなことをしたら良いと勧められて、僕は自分の趣味という物を知らないんだ。だから、羽音さんから服を脱いでくれと言われても、抵抗しなかったんだ」
「いけません。昨日のあなたは抵抗していたじゃありませんか。あのように対応しましょう」
「羽音さんの声に操られてしまったことも理由だと思う」
「ふむふむ。王子様キャラですからね……」

 俺は高野さんにシャツを着せてやった。これは自分で選んで買った物だろうか。それを聞いてみると、お母さんと一緒に選んだ物なのだという。カタログショッピングの品だそうだ。なかなか良いと思った。

 そのカタログの名前を聞くと、最近CMをしているメーカーだった。カルテットという。20代から60代までの幅広い年代の人向けの服や小物を展開している。俺はシャツの形や縫製を確かめて、しっかりとした品だと思ったから、帰った後で、カタログサイトを見てみようと思った。
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