森林の星空少年~あの日のメエメエ

夏目奈緖

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23-10

 ここでかくかくしかじかな話をするのはやめた方がいいだろう。話題としては不適切だと思う。それに、ママがゲイだとバレてしまうだろう。しかし、あああと声を出して戸惑うしか出来ない俺は会話を成り行きを見守るしか出来なくなった。何を言っていいか分からなくなったからである。お父さんが笑っているからだ。そして、ママと月島さんの話題がエスカレートしていき、橋本さんが微笑み、早瀬がお母さんのクッションを直してあげ始めた。

「早瀬さん。どうもすみません。息子とはお店で知り合ったんですね。いつ頃なんですか?」
「去年のことです。いつだったかなあ。俺、占いの店に行くのが好きで、それで話が合ったんですよ」
「そうなんですか。私も昔はよく占いの店を利用していました。ムード満点のお店でしてね。占い師さんは女性だったので、長い爪にマニキュアをして、頭に黒いベールをかぶっていました。そして、紫色のクロスが掛かった机の上でタロットカードを使って占ってくれました」
「そうでしたか。俺が行った店でも、ムード満点なドレスを着ている人が居ましたよ」
「早瀬さんが依頼した占い師さんはどんな方だったんですか?」
「ごく普通の方でした。服装もシンプルでした。俺も、お母さんが言うみたいに、黒いベールをかぶっているイメージだったんですけどね。ははは」
「ほほほほ」
「ほっ……」

 どうやら早瀬とお母さんの話題は普通だ。うまくいっている。声が男なのはこの際気にしない方がいいだろう。そして、俺はお父さんの方を振り向いた。そして、スマホを見て、視聴者からのコメントを見た。“ママがまた始まった”“笑”と書かれている。どういうことだろうか。そして、その理由を知った。ママが、自分の男遍歴を語り始めたことを。

「パパ、実は僕ね、付き合った人が何人も居るんだ!身体の関係を結んだ人は1000人ぐらい居るかも!」
「そうなのか。それはいけないなあ。真面目にならないと……」
「でも、僕はそういうのでいいんだよ!後はね、お店の人が男のパンツの匂いを嗅ぐだけで満足するから試して見ろって言うんだけど、僕はそういうことはしたくなくてね……」
「男のパンツの匂いを嗅ぐだと?」
「そうだよ!男のパンツだよ!あ!しまった!」
「うひぇーーー」

 どうしよう?ママが本音を口にしてしまった。しかし、月島さんがフォローを入れた。それがおまじないになるから、流行っているのだと。そして、それを聞いたお父さんが納得した。

「そうなんですか。男性の下着がおまじないになるなんて、昔の話にあったなあ。女性がアパートで一人暮らしをするとき、男性物の下着も一枚一緒に干すんだっていう話です。防犯上のことです」
「なるほど。女性は危険なことが沢山ありますからね。僕は妹がいるんですが、かくかくしかじかな理由で実家に帰ってきそうでしてね……」
「なんと、ご病気ですか。うつですか……。妻も同じです。うつなんですよ。妹さんのこと、さぞかしご心配でしょう……」
「妹は一人暮らしをしようとしていますが、僕が止めたんです。女性の一人暮らし、うつ。心配が重なります……」
「そうでしょうね……。どちらにお住まいですか?」
「実家は……県です」
「ほお……」
「仕事を辞めようかと言っていましてね。そこで、こっちに呼んで、僕と一緒に暮らさないかと声を掛けています。こっちの方が環境が良いかもしれないんです。僕、霊能者の仕事もしていましてね……。妹には、こっちがいいという霊視の結果でした」
「そうなんですか!すごいことだ!自分たちも見てほしいなあ。僕も妻も、昔、よく占いの店に通っていましてね。不思議なことに興味があるんです。地縛霊がいると言われている家が近所にありましてね……」
「そうでしたか……。ここのマンションの1階の部屋でしょう?」
「実はそうなんです!すごいなあ!分かるなんて!いや、同じマンションの人に悪いから、近所と言ってしまいました。はははは……」
「はははは。見ましょうか?」
「ぜひ。親しい人なんですよ。家の中で物音がするから霊感のある人に見てもらうと地縛霊だという話でした。しかし、対処が難しくて、引っ越した方が良いということでした。しかし、彼はここを気に入っていましてね。今からご案内します。見てあげて下さい」
「もちろんです」
「ほっ……」

 月島さんの機転により、良い話題に変わった。地縛霊だなんて、男のパンツの話題よりも良いに決まっている。どうしよう?本当にそうだろうか。そして、お父さんが立ち上がり、月島さんも立ち上がった。

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