森林の星空少年~あの日のメエメエ

夏目奈緖

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 さあ、お見合いの開始である。トップバッターは遠竹さんである。リミテッドのドラムとして長年付き勝ってきた筋肉の持ちの主だ。ひょろっとした爛々さんとは違い、鍛え抜かれた身体をしている。しかし、今の季節は冬で寒いからとスーツのジャケットを着ている。それでも筋肉の付いた腕のラインが想像できるほどだ。

「ふむふむ。筋肉自慢の遠竹さんがトップバッターだね。どうぞこちらへ……」
「失礼します」

 遠竹さんが和室セットの中に入ってきた。紺色のスーツ姿を見ると、いつもとは雰囲気が違う。サラリーマンに見える。いつもはミュージシャンといった空気感があり、どこにいても目立つのだが、今は現場に溶け込んでいる。芸能人オーラの封印というわけである。

 遠竹さんがテーブルの前に座った。さっと、司会アシスタントからお茶が出された。羽音さんにも新しいお茶が用意された。そして、徳山さんが遠竹さんのプロフィールを語り始めた。

「……では、一番最初の候補者の方です。遠竹兼光さん、32歳です。リミテッドのドラムとして活躍されています。提供楽曲は、10 days with you。君との10日間であります。こちらの楽曲は映画タイトルと同じでして、彼の作品であります。ヒットソングになりまして、国内外からの新しいファンを獲得し、コンサートでは兼光コールが起こるなど、盛り上がりを見せています。ドラムのスタイルは情熱タイプ。打って叩いて打ちまくる。ほどばしる汗と盛り上がる筋肉。元は細身の身体に付いた筋肉は爽やかな男性だったイメージを変えて、より男らしい空気感に買えました。こちらに、10年前の彼の写真があります」
「ほおーーーー」

 徳山さんがパネルを取り出して、昔の遠竹さんの写真を紹介し始めた。たしかに細身である。ヤル方、ヤラレル方と言えば、ヤラレル方の人に見える。しかしながら、今はバリバリ・ヤル方に見える。羽音さんはヤル方だと聞いている。遠竹さんと同じである。

「……こちらの写真では、可愛いという反応を頂きました。ありがとうございます。今の彼は逞しい筋肉の持ち主で、昨年発売されたカレンダーでは、彼の上半身裸のステージスタイルが載っています。ファン垂涎のファとと言えましょう」
「ふむふむ。ヤル方同士でもいいんだもんね。高野さんに決まればいいだし……」

 そういうことである。俺達が静かに聞いていると、遠竹さんの趣味が語られ始めた。ロケ弁当などのグルメ好きだということである。コンサートの控え室での昼ご飯や差し入れのサンドイッチも紹介され始めた。その品の写真がパネルとして画面に出た。俺達はそばにあるモニターで確認できている。

「……遠竹さんの趣味のお弁当巡りツアーとして、是非とも今日この場で紹介したいという店の商品を持って参りました。水仙という店のタケノコ弁当です。彩りがよく、軟らかく煮たタケノコの風味の聞いた煮物が春の……」
「ふむふむ。お取り寄せしたのかーーー」

 どうしよう?また腹が鳴りそうである。すると、徳山さんに拍手が送られて、カメラが俺達を写し始めた。さあ、羽音さんとの対面である。これからお見合いであるから、釣書が交換された。それぞれの住所と本名、趣味が書かれている。
 
 彼らがペコッとお辞儀をした。すでに知っている仲であるが、今の様子は生放送中だから緊張感がある。俺も同じだ。だから、腹を鳴らしてしまって、その音が流れてはいけないと思っている。

 さっそく、早瀬が段取りよく、仲人の役を務め始めた。羽音さんのことを促し、会話をするように進めている。遠竹さんの方も姿勢を良くして、羽音さんの言葉を待っている。

「いやーーー、改まって向かい合うと恥ずかしいね。遠竹君。お久しぶりです」
「こちらこそ。今年はコンサートにお邪魔します。去年は行けなくて……」
「いいんだよ。お互いにツアーの日程が重なったからね。ところで聞きたいのは、ベッドの中のことだ。君はヤル方だろうか?」
「はい。俺はヤル方です。羽音さんもそうですよね?」
「うん。そうなんだよ。これは変えられなくてね。そういうことで、お互いに友達で居よう。はい。徳山さん、次の方をお願いします」
「うひぇーーー、もっとしっかり話したら良いのにーーー」

 どうしよう?羽音さんがサクサクとお見合いを終わらせてしまった。遠竹さんはホットしている。話を断らなくてはならないと思うと気が重かったのだろう。さっそく、次の候補者の爛々さんのことを手招きし始めた。
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