森林の星空少年~あの日のメエメエ

夏目奈緖

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 ごく。俺達の間に一瞬の沈黙が走った。カズさんが、さも聞いてくれという風な顔をしていて、俺の方は、やっぱり聞きたくないという気持ちだ。しかし、興味はわいている。そこで、少しだけ聞くことにした。

「カズさん。俺の心模様はかくかくしかじかだよ。そこで、すこーーしだけ聞きたいんだ」
「いいぞ。どの子からにしようかな……」
「初めての人は一人だよ。んん、裕理さん。どうしたの?」
「ごにょごにょ……」
「うひぇーーー!成人映画のようだーーーー!」

 どうしよう?早瀬がこんなケースが考えられるのではないかと言ってきた。それは初めての人が複数存在するパターンである。なんということか。酒池肉林パーティーでそのままの流れで、というパターンである。交際が派手ならそういうこともあるかも知れない。

「カズさん。今は真面目になったの?」
「なんのことだ?ん?複数存在するパターンだと?僕はそういうことはしない。一対一だ。どの子からにしようか迷ったのは、同時期に複数人と付き合ったからだ。どの子と初めてだったか思い出しているところだ。複数人と同時期にそういう流れが起きたから、どこからが初めての人なのか考えてもいる。厳密にいうと、近所のおじさんから下半身を触られたことが初めての相手というかも知れない」
「あああ……。大丈夫だったの?」
「ああ、母が追い払ってくれた。僕はまだたったの5歳で、母と公園に遊びに来ていた。母が近所の人と話している間、僕は一人でブランコに乗っていたんだ。そこで、声を掛けてきた男がいた。しかし、僕は知らない人と話してはいけないと言われていたから、それを守った。そしたら、その男が僕のズボンの上から下半身を触って、僕が声を上げて、母が飛んできた。そして、ベビーシッターも一緒だったから、彼女と一緒に男を追いかけた。しかし、逃げていって行方知れずだ。もちろん、警察には届け出をした」
「あああ……。心の傷になったね」
「大丈夫だったぞ。それから後で、母からこういうことを教わった。かくかくしかじかなことというのは、親密な関係にある二人が行うことだと。性教育だ。それから、子供を狙う大人がいることも習った」
「あああ……」

 どうしよう?助かったとカズさんは言っているが、心の傷になったはずだ。夜中に悪夢にうなされたこともあるかも知れない。俺だって、高校生の時に同じバンドのメンバーから襲われたことがある。それを思うと、カズさんのことが可哀想になってきた。

「カズさん。しくしく、ぐすん」
「そんなことがあったけど、僕の初めての相手とはうまくいったぞ。僕が恋人を作ったのは22歳で、社会人になった後だった。一人の子のケースを話すよ。ホテルの部屋を借りて、相手と泊まった。ホテルのディナーを楽しんで、夜景の見える高層階の部屋を取った。相手は僕と同じ年だった。別々に風呂に入って、さっぱりした身体を重ねて、かくかくしかじかだ。ある子のケースだと、彼の部屋に泊まった夜だった。相手はまだ大学生だった。定食屋で食事をした後、彼の部屋に行って、かくかくしかじかなことをした。ある子のケースでは、映画館の中で触り合った。男同士の出会いの場の映画館の中だったから、周りはそういうことをしている人が多かった。もちろん、僕達は最初からカップルだった。こうして思い出すと、ホテルの部屋の子が初めての人になる」
「ふむふむ。モテまくったんだね。その人達とはどうなったの?」
「自然消滅だ。僕が複数人と交際していると分かっても、へえーー、あ、そうという反応だった。僕は怒ってもらいたかったと分かった。そこで、僕は誰からも愛されていないと思って、孤独感を募らせた……」
「ふむふむ。決まった相手を作らないとそういうことになるんだって、大学の友達が言っていたよ」
「そうだろう。僕もそう思う。そこで、僕は開き直りと、孤独感を埋めるために、色んな人と交際した。そこで、この間のような水端君のような人が出てくるわけだ。島川社長は交際相手を求めているという噂が出て、真面目に取引をしたい仕事相手なのに、恋愛関係志望とされる」
「ふむふむ。モテているなあーー」

 どうしよう?カズさんの初めての人というのは普通のパターンだった。複数人と交際なのは予想の範囲である。その初めての人とのエピソードを知りたい。当時のカズさんの心情もである。このカレーのように甘くて辛いだろうか。
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