森林の星空少年~あの日のメエメエ

夏目奈緖

文字の大きさ
591 / 869

27-3

しおりを挟む
 父とカズさんとの挨拶が終わった。そこで、涼花さんと藍生が入ってきた。涼花さんも父と同じくジーンズを履き、Tシャツ姿だ。そして、藍生も同じ格好をしている。長くしてある髪の毛は頭の上でお団子にして、ふるふると揺れている。それを見て、目尻が下がる思いがした。

「あおいーーーー!今日の格好、よく似合っているぞーーー」
「悠人君。ありがとう。悠人君が買ってくれたお洋服を着せたの。今日にピッタリだと思って……」
「涼花さん。着せてくれてありがとう。そっかーー、俺が選ぶとこういう感じなのか。ふむふむ」

 俺は妹のファッションに気分が良くなった。なかなか似合っている。今度はお呼ばれの日のためのワンピースなどを購入したい。髪の毛を長くしている分だけ、お姫様のような格好も似合うかも知れない。ふんだんにフリルがあしらわれた服も良いだろう。

「あおいーーーー。どんなジュースを飲んだんだ?ジュースはどれだ?」
「これ」
「おおーーーー。お前は頭が良いなあ。もうほとんどの言葉を理解している。賢くて可愛いだなんて、将来はどうなるんだ?」

 ぎゅーーー。俺は藍生のことを抱きしめた。俺の同級生の中には娘が生まれた奴がいるが、俺の場合は年の離れた妹だった。なんて可愛いのだろう。父の浮気性には軽蔑していたが、こうして藍生が産まれてきてくれて、そんなことはどうでも良くなった。

「カズさん。藍生だよ。今年2歳になるんだ。音楽が好きで、ステージ脇で爆音を聞いても驚かないんだ。将来はボーカリストかギタリスト志望なんだ。父の跡を継いでもいい。へへへ……」

 どうしよう?カズさんに藍生のことを紹介しながら、自慢もした。夢は広がっているのだと。親馬鹿という言葉があるのなら、俺は妹馬鹿だ。バカって言ってもらっていい。それだけ可愛い。すると、カズさんがしゃがみ込んで、藍生に微笑みかけた。彼は子供に好かれるという習性がある。

「藍生ちゃん。こんにちは」
「こんにちは!」
「いいご挨拶だ。とても賢い子だ。久田さん、頼もしいですね」
「え、ええ!そう言って頂けますか」
「はい。可愛らしくて利発で、事務所の跡取りさんになるでしょう。悠人君が言っているとおり、音楽業も良いですね」

 カズさんがニコッと笑った。そこで、父が目尻を下げて身をよじった。娘を褒められて嬉しいらしい。涼花さんは藍生のことを椅子に座らせて、きちんと背筋を伸させて、膝の上に両手を置かせている。

「涼花さん。幼稚園を受験をさせるの?そうすることにしたの?」
「まだ決めていないのよ。達弘さんが、まだ早いって言うくせに、そうしたいだなんて言い出す日もあって……。この間、近所の幼稚園の下見に連れて行ったら、わあわあ泣いたの。だから、受験は考えられないって思っているんだけど……」
「そっかーー。泣いたのかーーー。誰に似たんだーーー?大人しいところもあるからなーー。女の子だから、そういう一面があるのは良いんだぞーーー。お淑やかなイメージだ」

 そういうことである。俺は父には厳しい目を持っている。藍生にはそうではない。もしも悪いことをしたら、全部、父のせいだということにしている。

 さて、室内にはオモチャの札束が置かれている。カズさんが入れてきた奴だ。一体どこで買ってきたのだろうか。インターネットだろうか。

「カズさん。そのオモチャの札束はどこで買ってきたの?」
「インターネットだ。ジョークグッズとして打っていた。藍生ちゃんのオモチャにいいかと思った」
「ふむふむ。お店屋さんごっこだね。使わせてもらうよ。あれ?もう出るの?」
「ええ。長谷部さんがステージの中を案内して下さるそうで、見ていくわ」
「そっか。また後でね!」
「ええ」

 涼花さんが父と藍生を連れて部屋を出て行った。俺がゆっくり休めないと思って、気を遣わせたのだろうと思った。俺も後でリハーサルに参加する。その後でヘアメイクがされて、トゲトゲのヘアスタイルに変わる。そして、そのタイミングでもう一度リハーサルが行われて、雑誌のインタビューに答える。スケジュールはパンパンに詰まっている。

「裕理さん。俺もジュースが飲みたい」
「はい。どうぞ。リンゴジュースだ」
「うん」

 俺はダラッと座り、早瀬からパックのジュースを受け取った。そして、カズさんにもソファーで休んで貰い、珈琲を飲んでもらった。そして、早瀬のことを見て何かいやらしいことを想像したらしく、鼻の下をのばしていた。そこで、ばしっと声に出してカズさんのこと叩くふりをして、妄想をやめさせた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
鍛えられた肉体、高潔な魂―― それは選ばれし“供物”の条件。 山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。 見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。 誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。 心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。

BL 男達の性事情

蔵屋
BL
 漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。 漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。  漁師の仕事は多岐にわたる。 例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。  陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、 多彩だ。  漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。  漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。  養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。  陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。  漁業の種類と言われる仕事がある。 漁師の仕事だ。  仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。  沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。  日本の漁師の多くがこの形態なのだ。  沖合(近海)漁業という仕事もある。 沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。  遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。  内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。  漁師の働き方は、さまざま。 漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。  出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。  休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。  個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。  漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。  専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。  資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。  漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。  食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。  地域との連携も必要である。 沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。  この物語の主人公は極楽翔太。18歳。 翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。  もう一人の主人公は木下英二。28歳。 地元で料理旅館を経営するオーナー。  翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。 この物語の始まりである。  この物語はフィクションです。 この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。

ハンターがマッサージ?で堕とされちゃう話

あずき
BL
【登場人物】ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ハンター ライト(17) ???? アル(20) ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 後半のキャラ崩壊は許してください;;

借金のカタに同居したら、毎日甘く溺愛されてます

なの
BL
父親の残した借金を背負い、掛け持ちバイトで食いつなぐ毎日。 そんな俺の前に現れたのは──御曹司の男。 「借金は俺が肩代わりする。その代わり、今日からお前は俺のものだ」 脅すように言ってきたくせに、実際はやたらと優しいし、甘すぎる……! 高級スイーツを買ってきたり、風邪をひけば看病してくれたり、これって本当に借金返済のはずだったよな!? 借金から始まる強制同居は、いつしか恋へと変わっていく──。 冷酷な御曹司 × 借金持ち庶民の同居生活は、溺愛だらけで逃げ場なし!? 短編小説です。サクッと読んでいただけると嬉しいです。

イケメンオジイついに交際したことを忘れる

彩根梨愛
BL
天然雰囲気冴えない系イケメンの高校生、綾野蒼に知らん間に彼氏が出来ていた話。

灰かぶりの少年

うどん
BL
大きなお屋敷に仕える一人の少年。 とても美しい美貌の持ち主だが忌み嫌われ毎日被虐的な扱いをされるのであった・・・。

処理中です...