森林の星空少年~あの日のメエメエ

夏目奈緖

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 朝陽は六槍さんのアシスタントだというから、何でも言うことを聞くしかないだろう。師匠がカラスは白いと言ったら白いのである。2人を見ていると、そういう関係に見えた。今、六槍さんが朝陽に指示を出して、カズさんの額の汗を拭いたからだ。

「朝陽君。社長の汗を汚いなんて思わないでくれて嬉しいよ」
「はい!汗の成分は……で、こういう仕組みになっていまして、汗を止めるにはこうしておくといいです。かくかくしかじかです」
「ほおーーーーー」

 さすがは医学生である。人体のことに詳しい。カズさんの額の汗を汚いと言わずに拭いてあげて、新しいタオルを取り出しているから、まだ引き続き汗を拭いてあげるのだろう。

 こうやって見ると、六槍さんは朝陽にセクハラをしていないと思った。しかし、時々歓声を上げているから、どう見たってそう感じる。かわいいーーーー、かっこいいーーー。そんな言葉である。

「あさひくーーん。かっこいいーーーー」
「社長!ピタピタヒエヒエを貼ります!」
「ほおーーーー」

 どうしよう?カズさんが暑さにふらつき始めた。そこで、朝陽が熱を取るシートをカズさんの首元と額に貼り始めた。そんな動作にいちいち六槍さんが声を上げている。ここまでアピールされたら、本人はどういう気持ちだろうか。セクハラならはっきり言った方が良い。兄貴に相談してもいいし、この場でカズさんが注意してもいい。

「あさひーー。つかぬことを聞くけど、いい?」
「いいよ。どうしたの?」
「六槍さんが歓声を上げているだろ。君に対して、可愛いとかかっこいいとか。セクハラだと思うなら、この場で言って良いと思うよ」
「あ……」
「表情が曇ったね。言えないんだろ。カズさんに注意してもらおうよ」
「だめ!今、居心地が良いから……」
「あさひーーー……」

 どうしよう?胸が痛い。朝陽の言い分としては、六槍さんは頼りになる師匠だということだ。黒崎さんから強引にカズさんに預けられた自分はプラセルで居場所がなかったが、六槍さんのおかげで会社の中で打ち解けられているそうだ。だから、少々の発言には我慢をしたいのだという。実際に身体に触られたわけでは無く、可愛いという言葉ぐらいなら大丈夫だそうだ。

「ふむふむ。でもね。朝陽。六槍さんが君のこと狙っているかも知れないんだよ」
「それは分からないよ。俺のことをからかっているだけかも知れないよ」
「いや、そんなことはないよ。だって……」

 どうしよう?その六槍さんが俺達の背後に立っていた。俺達の話を一言一句聞き漏らさないぞという感じの距離だ。ここまで聞かれたなら話が早い。彼の気持ちを聞いてみよう。

「六槍さん!朝陽のことをどう思っているんですか?」
「朝陽君のこと?可愛いなあって思っているよ。恋をしていると思ってくれても構わない」
「ほお。では、可愛いとかかっこいいとか言っている言葉は、からかっているわけではないんですね?」
「そうだよ。心からそう思っているんだ。ね、朝陽君。僕のこと、迷惑じゃないだろう?バチン!」
「うひぇーーーっ」

 どうしよう?六槍さんが朝陽の両手を握り、ウインクをした。ここで告白タイムを迎えるとは思わなかった。朝陽は女性が好きなのだと思っていたし、今もそう思っている。しかし、六槍さんから告白されてしまい、一体どうするのかという状況だ。

「あさひーー、どうするの?」
「俺、俺……」
「朝陽君。君、男もいけると思うんだ。僕で試してみて。バチン!」
「うひぇーーーっ。ハラスメントだーーーーー」

 どうしよう?俺はセクハラの現場に立っている。上司という立場を利用している六槍さんを前にして、何とか出来ないかと考えた。そこで、朝陽にははっきり断らせることにした。それにはカズさんがいいだろう。社長の方から断ってもらうといい。そんなことを考えて実行に移そうとすると、朝陽がこくっと頷いた。

「あさひーーーー?」
「俺……。男でもいいかもって……」
「だめだだめだだめだーーーーー」

 なんとか朝陽を押しとどめた。六槍さんが笑っている。もう落としたも同然ということなのか。彼の手に掛かれば、ピュアな朝陽なんて朝飯前なのだろう。
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