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祈祷札を受け取りながら、俺は少し背筋を伸ばした。木田さんの前に立つと、どうしても姿勢が良くなる。癒される雰囲気と、神主としての清らかさが同居しているからだろう。
「この札は、木の根元にある石に手を置いたとき、一緒に持っていただくと良いですよ。縁を結ぶ力が強くなりますので」
「ふむふむ。ブースト効果ですねーー」
「悠人さん、ゲームじゃありませんよ」
木田さんに軽く突っ込まれ、俺はへへへと笑って札を胸ポケットに入れた。その横で、六槍さんが自分の祈祷札を大切に手で包むように持ち、朝陽の方を何度もチラチラ見ている。
どうしよう?さっき恋磨守をプレゼントしてからというもの、六槍さんは完全に“告白前の男モード”に入ってしまったようだ。朝陽の方はというと、微笑んで、ほんのり頬を染めながら札を見つめている。あれは、“嬉しいけれど、まだ何もわかっていない人の顔”だ。天然系小悪魔とでも言おうか。
「さて。それでは、大木へ案内いたしましょう」
木田さんの声に、俺たちは一斉に顔を上げた。
「ふむふむ。いよいよだねーーー!」
「悠人君、本当に声が大きいよ……」
早瀬が苦笑する。静かな社務所に俺の声だけ響いてしまった。そして、社務所を出ると、光が落ちてきた。外に出ると、昼の柔らかな日差しが降り注いでいた。境内の奥へ向かう参道は、落ち葉が少し積もり、サクサク歩くたびに音が鳴る。さらに風が吹き、木々の枝がさわさわと揺れた。
「ほおーーー。ここから雰囲気が違うねーー」
「ええ。大木の周りは“気”が集まる場所なんです。ゆっくり歩いて、深呼吸するといいですよ」
木田さんの声がやわらかく、俺は無意識に深呼吸した。空気が澄んでいる。心の中まで洗われていくようだ。六槍さんと朝陽は、少し距離を縮めて並んで歩いている。自然と肩が寄りそうな距離だ。六槍さんは、どこか落ち着かない。歩幅を朝陽に合わせようとして、逆にぎこちなくなっている。そこで、朝陽が首をかしげた。
「六槍君……、歩きづらくない?」
「え?あ、いや……。うん、大丈夫」
六槍さんの声が裏返っている。どうしよう?こんなに分かりやすかった人だっただろうか。神社に来てからどうもおかしい。いや、俺もおかしい。カズさんの念によるものだろうか。ここに来られなくて、気持ちの上でバタバタしているのだろう。それを俺たちが影響を受けている。そういうことである。
「ふむふむ。焦りすぎている魂だねーー」
「悠人君、解説しなくていいから」
「へへへ。どうも六槍さんを見ていると落ち着かないんだーーー」
「だめだよ。こっそりと見守らないと」
早瀬に優しく止められた。すると、参道の先に、ぽつんと、一本の大木が立っていた。その姿を見た瞬間、空気が変わった。生命力に満ちた幹である。太い根が地面を抱くように広がっている。枝の隙間から落ちてくる光が、まるで祈りそのもののようだった。
「おおーーー……」
俺も、朝陽も、思わず声を漏らした。すると、木田さんが微笑んだ。
「ここは“縁の大木”と呼ばれています。この神社で最も気が強く、願いを吸い上げてくれる場所です」
「ふむふむ……。恋愛運パワーアップ!」
「悠人さん。……レベルアップみたいに言わないでください」
木田さんが苦笑した。六槍さんは、言葉もなく、ただ朝陽を見ていた。祈るより先に願いが伝わりそうな勢いだ。さっそく俺たちは大木の前に並んだ。祈祷札を胸に当て、木田さんの声に耳を澄ませる。
「では、それぞれ、心の中で願い事を……。この木は、想いを否定しません。どんな恋も、どんな縁も、まず受け入れ、整えてくれる場所です」
その言葉に、六槍さんの喉がごくりと動いた。
「……朝陽君」
「どうしたの?」
「えっと……、その……、君の未来が明るくありますように……」
ささやくように言ったが、俺には聞こえた。朝陽の幸せを祈っている言葉である。俺はジーンとした。カズさんなんて、この大木の前に来たら、なんて祈るだろう。想像するだけで罰当たりである。そして、良い言葉をかけられた朝陽は、ありがとうと言って笑った。
「六槍君も……、うまくいくといいね」
朝陽がそう言って、また屈託なく笑った。分かっていないと言えよう。しかし、その天然っぷりこそ朝陽の魅力なのだろう。六槍さんはその言葉だけで、胸を押さえ込みたくなるほど喜んでいる。大木の前の空気が、さらに柔らかく満ちていく。まるで恋の神様が、よしよし、その調子と言って、微笑んでいるようだった。
「この札は、木の根元にある石に手を置いたとき、一緒に持っていただくと良いですよ。縁を結ぶ力が強くなりますので」
「ふむふむ。ブースト効果ですねーー」
「悠人さん、ゲームじゃありませんよ」
木田さんに軽く突っ込まれ、俺はへへへと笑って札を胸ポケットに入れた。その横で、六槍さんが自分の祈祷札を大切に手で包むように持ち、朝陽の方を何度もチラチラ見ている。
どうしよう?さっき恋磨守をプレゼントしてからというもの、六槍さんは完全に“告白前の男モード”に入ってしまったようだ。朝陽の方はというと、微笑んで、ほんのり頬を染めながら札を見つめている。あれは、“嬉しいけれど、まだ何もわかっていない人の顔”だ。天然系小悪魔とでも言おうか。
「さて。それでは、大木へ案内いたしましょう」
木田さんの声に、俺たちは一斉に顔を上げた。
「ふむふむ。いよいよだねーーー!」
「悠人君、本当に声が大きいよ……」
早瀬が苦笑する。静かな社務所に俺の声だけ響いてしまった。そして、社務所を出ると、光が落ちてきた。外に出ると、昼の柔らかな日差しが降り注いでいた。境内の奥へ向かう参道は、落ち葉が少し積もり、サクサク歩くたびに音が鳴る。さらに風が吹き、木々の枝がさわさわと揺れた。
「ほおーーー。ここから雰囲気が違うねーー」
「ええ。大木の周りは“気”が集まる場所なんです。ゆっくり歩いて、深呼吸するといいですよ」
木田さんの声がやわらかく、俺は無意識に深呼吸した。空気が澄んでいる。心の中まで洗われていくようだ。六槍さんと朝陽は、少し距離を縮めて並んで歩いている。自然と肩が寄りそうな距離だ。六槍さんは、どこか落ち着かない。歩幅を朝陽に合わせようとして、逆にぎこちなくなっている。そこで、朝陽が首をかしげた。
「六槍君……、歩きづらくない?」
「え?あ、いや……。うん、大丈夫」
六槍さんの声が裏返っている。どうしよう?こんなに分かりやすかった人だっただろうか。神社に来てからどうもおかしい。いや、俺もおかしい。カズさんの念によるものだろうか。ここに来られなくて、気持ちの上でバタバタしているのだろう。それを俺たちが影響を受けている。そういうことである。
「ふむふむ。焦りすぎている魂だねーー」
「悠人君、解説しなくていいから」
「へへへ。どうも六槍さんを見ていると落ち着かないんだーーー」
「だめだよ。こっそりと見守らないと」
早瀬に優しく止められた。すると、参道の先に、ぽつんと、一本の大木が立っていた。その姿を見た瞬間、空気が変わった。生命力に満ちた幹である。太い根が地面を抱くように広がっている。枝の隙間から落ちてくる光が、まるで祈りそのもののようだった。
「おおーーー……」
俺も、朝陽も、思わず声を漏らした。すると、木田さんが微笑んだ。
「ここは“縁の大木”と呼ばれています。この神社で最も気が強く、願いを吸い上げてくれる場所です」
「ふむふむ……。恋愛運パワーアップ!」
「悠人さん。……レベルアップみたいに言わないでください」
木田さんが苦笑した。六槍さんは、言葉もなく、ただ朝陽を見ていた。祈るより先に願いが伝わりそうな勢いだ。さっそく俺たちは大木の前に並んだ。祈祷札を胸に当て、木田さんの声に耳を澄ませる。
「では、それぞれ、心の中で願い事を……。この木は、想いを否定しません。どんな恋も、どんな縁も、まず受け入れ、整えてくれる場所です」
その言葉に、六槍さんの喉がごくりと動いた。
「……朝陽君」
「どうしたの?」
「えっと……、その……、君の未来が明るくありますように……」
ささやくように言ったが、俺には聞こえた。朝陽の幸せを祈っている言葉である。俺はジーンとした。カズさんなんて、この大木の前に来たら、なんて祈るだろう。想像するだけで罰当たりである。そして、良い言葉をかけられた朝陽は、ありがとうと言って笑った。
「六槍君も……、うまくいくといいね」
朝陽がそう言って、また屈託なく笑った。分かっていないと言えよう。しかし、その天然っぷりこそ朝陽の魅力なのだろう。六槍さんはその言葉だけで、胸を押さえ込みたくなるほど喜んでいる。大木の前の空気が、さらに柔らかく満ちていく。まるで恋の神様が、よしよし、その調子と言って、微笑んでいるようだった。
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