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六槍さんがねっとりした口調で朝陽の名前を呼んだ。まるで、俺たちがいないかのようである。こんな風に堂々と口説かれたら、恥ずかしいという気が起きない。だから、黙って俺は二人を見守った。
「ねえ、朝陽君。僕ね、……君の笑顔って、特別だと思ってるんだよ」
「え?そ、そう?」
「そう。誰でも癒す笑顔じゃなくて……」
六槍さんは指先で、自分の胸元を軽く押した。
「俺を救った笑顔。……そんなの君しか持ってない」
「え、えええ……?俺、そんな力はないよ?」
「あるよ。君にはある。だから……、もう少し、僕のそばにいて」
朝陽はまたぽかんとした。頬が赤くなりかけているのに、意味が分かっていない様子で首をかしげた。
「六槍君って、……なんか今日は特別優しいね?」
「……これでも抑えてるんだけど」
「え?なにを?」
「……気づかないの、ほんとに朝陽君らしい」
六槍は苦笑しながら、朝陽の湯呑みにそっとお茶を注ぎ足した。冷たい麦茶である。その指先が、わざと軽く朝陽の手の甲に触れる。朝陽はぴくっとした。
「俺の手、冷たくない?どうしたの?」
「ううん。……ただ触れたかっただけ」
「???」
もう完全に分かっていない。テーブルの反対側で見ていた俺と早瀬は、息をのんでいた。ほぼ告白じゃないかと。ところが、本命の朝陽だけが鈍感のままだ。六槍さんは、俺たちの涙を出しそうな愛おしそうな目で朝陽を見つめていた。その視線は、まさに、ねっとり系恋愛沼と言えよう。朝陽は首をかしげたままだ。
「六槍君、なんか今日、変じゃない?」
「……変じゃないよ。ようやく“普通”になってきただけ」
「え?」
「君を、好きになった男としての“普通”」
朝陽の箸が止まった。顔が赤くなっていく。しかし、分かった風はない。
「そ、そんな……俺なんか、六槍君が“好き”とか思うわけ……」
「あるよ?」
六槍さんは迷わず断言した。逃げ道をふさぐように、優しく、しかし絶対に後へ引かない声音だ。
「ずっと好きだったよ。気づいてなかったでしょ?」
「……」
朝陽のが耳まで真っ赤になった。しkさい、だが、それでも“理解はしていない”という奇跡の天然具合で、そういう意味の“好き”かどうか分からないじゃんと、か細く言った。すると、六槍さんは、堪え切れないように微笑んだ。
「じゃあ、分かるまで……、ねっとり口説き続けるね」
「ね、ねっとりって言った!?」
「うん。俺、ねっとりしてるから」
朝陽は顔を覆って固まり、六槍さんは静かに微笑み、店内の空気は完全に熱を帯びた。すると、その時、ピリッと、また空気が揺れた。カズさんの念である。木田さんのそばで俺が笑ったから、誰か男がいるのかと警戒したのだろう。誤解である。ここにいるのは俺と早瀬だ。そして、六槍さんははチラリとも反応せず、むしろ堂々とした声で言った。
「社長には悪いけど……、俺は俺の恋を開くよ」
「え?」
「社長は朝陽君のことが心配なようだけど、僕は僕で事情がある。君のことが好きだっていう事情だよ」
「ええ?」
朝陽はさらに真っ赤になり、俺と早瀬は口を押えて静かにして、木田さんは穏やかに微笑んで言った。
「……良いですね。勢いのある恋というのは」
こうして六槍さんの“半告白”は、天然な朝陽を赤面させながらも、確実に距離を縮めていったのだった。俺はカズさんからの念を抑え込もうと、たまっているラインに返事を打ち、木田さんがくすりと笑ったそのときだった。
「朝陽君、箸……。落ちそうだよ」
六槍さんが、まるで恋人の頬に触れるみたいな距離まで顔を近づけ、朝陽の持つ箸をそっと直してやった。距離が、近い。いや近いどころか、密着の5秒前みたいな距離である。
「えっ……、ありがとう。ちょっと滑って」
「うん……、朝陽君は、なんでも丁寧に持とうとするから……。指先、いつも綺麗だよね」
声が低い。優しすぎるトーンである。そして、完全に“落としにかかる男の声”である。ねっとりした熱が言葉の中に混ざっていて、聞いてるこっちが赤面した。
「ふむふむ。六槍さん、ついにギア上げたね……」
「悠人君、実況するな」
「ふふふ」
早瀬がお茶を飲みながら微笑んだ。木田さんもである。しかし、当の朝陽はというと、相変わらずの天然ぶりである。手は普通だよと言いながら、首をかしげて六槍さんのことを見つめている。
「ねえ、朝陽君。僕ね、……君の笑顔って、特別だと思ってるんだよ」
「え?そ、そう?」
「そう。誰でも癒す笑顔じゃなくて……」
六槍さんは指先で、自分の胸元を軽く押した。
「俺を救った笑顔。……そんなの君しか持ってない」
「え、えええ……?俺、そんな力はないよ?」
「あるよ。君にはある。だから……、もう少し、僕のそばにいて」
朝陽はまたぽかんとした。頬が赤くなりかけているのに、意味が分かっていない様子で首をかしげた。
「六槍君って、……なんか今日は特別優しいね?」
「……これでも抑えてるんだけど」
「え?なにを?」
「……気づかないの、ほんとに朝陽君らしい」
六槍は苦笑しながら、朝陽の湯呑みにそっとお茶を注ぎ足した。冷たい麦茶である。その指先が、わざと軽く朝陽の手の甲に触れる。朝陽はぴくっとした。
「俺の手、冷たくない?どうしたの?」
「ううん。……ただ触れたかっただけ」
「???」
もう完全に分かっていない。テーブルの反対側で見ていた俺と早瀬は、息をのんでいた。ほぼ告白じゃないかと。ところが、本命の朝陽だけが鈍感のままだ。六槍さんは、俺たちの涙を出しそうな愛おしそうな目で朝陽を見つめていた。その視線は、まさに、ねっとり系恋愛沼と言えよう。朝陽は首をかしげたままだ。
「六槍君、なんか今日、変じゃない?」
「……変じゃないよ。ようやく“普通”になってきただけ」
「え?」
「君を、好きになった男としての“普通”」
朝陽の箸が止まった。顔が赤くなっていく。しかし、分かった風はない。
「そ、そんな……俺なんか、六槍君が“好き”とか思うわけ……」
「あるよ?」
六槍さんは迷わず断言した。逃げ道をふさぐように、優しく、しかし絶対に後へ引かない声音だ。
「ずっと好きだったよ。気づいてなかったでしょ?」
「……」
朝陽のが耳まで真っ赤になった。しkさい、だが、それでも“理解はしていない”という奇跡の天然具合で、そういう意味の“好き”かどうか分からないじゃんと、か細く言った。すると、六槍さんは、堪え切れないように微笑んだ。
「じゃあ、分かるまで……、ねっとり口説き続けるね」
「ね、ねっとりって言った!?」
「うん。俺、ねっとりしてるから」
朝陽は顔を覆って固まり、六槍さんは静かに微笑み、店内の空気は完全に熱を帯びた。すると、その時、ピリッと、また空気が揺れた。カズさんの念である。木田さんのそばで俺が笑ったから、誰か男がいるのかと警戒したのだろう。誤解である。ここにいるのは俺と早瀬だ。そして、六槍さんははチラリとも反応せず、むしろ堂々とした声で言った。
「社長には悪いけど……、俺は俺の恋を開くよ」
「え?」
「社長は朝陽君のことが心配なようだけど、僕は僕で事情がある。君のことが好きだっていう事情だよ」
「ええ?」
朝陽はさらに真っ赤になり、俺と早瀬は口を押えて静かにして、木田さんは穏やかに微笑んで言った。
「……良いですね。勢いのある恋というのは」
こうして六槍さんの“半告白”は、天然な朝陽を赤面させながらも、確実に距離を縮めていったのだった。俺はカズさんからの念を抑え込もうと、たまっているラインに返事を打ち、木田さんがくすりと笑ったそのときだった。
「朝陽君、箸……。落ちそうだよ」
六槍さんが、まるで恋人の頬に触れるみたいな距離まで顔を近づけ、朝陽の持つ箸をそっと直してやった。距離が、近い。いや近いどころか、密着の5秒前みたいな距離である。
「えっ……、ありがとう。ちょっと滑って」
「うん……、朝陽君は、なんでも丁寧に持とうとするから……。指先、いつも綺麗だよね」
声が低い。優しすぎるトーンである。そして、完全に“落としにかかる男の声”である。ねっとりした熱が言葉の中に混ざっていて、聞いてるこっちが赤面した。
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