森林の星空少年~あの日のメエメエ

夏目奈緖

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 さて、こういう場合はどう対処したらよいのだろうか。今まではカズさんだけだと思っていたが、宇宙人という種族がついているのだから、対応を変えないといけないだろう。カズさんのことでは夏樹から事情を聴き、宇宙人関連の本を5冊ほど読んである。宇宙人によるウォークイン現象を取り扱った本である。まさにカズさんの状況に似ていたし、ヨーク達がそう呼んでいるのだから、迷わず選んだ。

 それらの本によると、地球人の身体に入り込んでいる宇宙人は悪いことを考えていて恐ろしいという意見と、経験のために来ているという意見があった。カズさんの場合は後者である。アルデバラン星にいたときには、今と同じく会社のトップとして働いていたが、幼稚園の先生の免許を取りたくなり、それには修行が必要とされており、この度、地球が選ばれたそうだ。

 イケイケの格好をして、いい男を狩っている。そんな人が先生だなんてよいのだろうか。俺はツッコミをしたかったが、確かにカズさんは優しいから、そういう職業もよいのではないかと思った。

「ふむふむ。今日の任務は怪しまれることに重点を置いているんだねーーー」
「助けてくれ!ヨークが僕の男性遍歴をすべて知っていると言って、修行をさせるというんだ。半年間、誰にも声をかけてはならないし、デートをしてもいけないというんだ。その通りにさせられてしまう!ウーリが24時間の体制で僕の身体に滞在して、コントロールするらしい!僕の楽しみなのに!来週の会食では、北島君という36歳の若手アパレルメーカー社長と会うんだ!いい男なんだ!それを先延ばしにしようと、六槍君と打ち合わせまでしているんだ!」
「ふむふむ。あなたの欲望を制御してくれるなら、いい宇宙人なんじゃないのかな?」

 そういうことである。しかし、全く気が付かなかった。カズさんにウォークインしていたというのに、影も形もなかったのだから。霊感が特に強い人には察知されることもあったそうだ。例えば、月島さんはすでにヨーク達と話ができたそうで、俺たちには内緒にしておくということで、今まで黙っていたそうだ。幽体離脱ボディーになって自由に動き回れる状態を霊現象とはいえなかったらしい。

「さあ、カズさん。気を取り直して、中に入ろうよ」
「あ、ああ。そうだな」

 俺はカズさんの手を引いた。後ろには早瀬たちが付いてきた。休日の光景である。カズさんはヨーク達の計画によって、俺たちに合流して、夏樹へのプレゼント選びに参加するつもりだったらしい。
 
 店内に入ると、冷房がほどよく効いていた。俺たちはまずアクセサリー売り場へ向かった。夏樹にはシンプルなネックレスがいいか、それとも実用的なものか。悩みながら歩いていると、カズさんがふっと真顔になった。

「悠人君」
「なに?」
「誰かを大切にするっていうのは、プレゼントの値段じゃない。気持ちだ」

 急に重い。ウーリでもヨークでもない、融合カズさんの核心の顔である。

「ふむふむ。分かっているよーー」

 俺は答えた。そうだ。形じゃない。気持ちだと。すると、そのとき、早瀬が笑った。

「でも、奇抜すぎるデザインは却下だよね」
「ふむふむ。そうだよね。カズさんがデザインしたネックレスは派手だもんね。スタッズがいくつもついていて、ステージ用って感じで、普段使いとはまた違う感じだったよね。おや?」

 すると、カズさんが高野さんを見て、急にそわそわし始めた。ここにもいい男がいたことに、やっと気が付いたのか。初対面ではない。何度も会っている。高野さんは物静かでありながらも爽やかな笑顔が印象的な人だから、カズさんの好みだろう。そして、案の定、高野さんのことを頭の先からつま先までじろじろと眺め始めた。

「高野君。今日もいい男だ」
「ありがとうございます。一貴社長も今日はキマっていますね。シルバーグレーのジャケット姿で、よくお似合いです」
「本当にそう思うのか?これは海外のショーを見に行く用のものだ。この街には溶け込めないと思っていた。でも、君が言うのなら、着てきてよかった」
「はい。どこからでも目立ちますから、ここに社長がいると分かりますよ」
「そうか!」

 ニコッと、カズさんが笑った。そして、機嫌を直して、アクセサリーのショーケースを眺め始めた。このデパートにも、たしか、プラセルのブランドが入っていたはずだ。カズさんも、店を見て回れてよかっただろう。

「あ、これがいいかも」

 俺は一つのネックレスに目を留めた。派手すぎず、けれど芯のあるデザインだ。夏樹が笑う顔が浮かぶ。そこで、春の光がガラス越しに差し込んだ。宇宙人だの人格交代だの騒がしいが、こうしてカズさんと一緒に歩いている時間は、どこまでも普通の休日だった。俺はそっと、そのネックレスを店員に見せてもらうことにした。
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