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それからきっかり10分後のことである。店の入口がふわりと開き、視線が一斉にそちらへ向いた。先に入ってきたのは、明るい色味のジャケットを羽織ったユリウスさんだった。その後ろに、静かな佇まいの月島さんがいる。対照的すぎる二人である。
「裕理!」
俺たちのことを見つけた瞬間、ユリウスさんの顔がぱあっと輝いた。そして、一直線に向かってくる。
「うわ、来た」
早瀬が小声でつぶやいた次の瞬間、ユリウスさんは彼の前に立ち、ためらいなく抱きついた。
「会いたかった!」
「ちょ、やめろ」
ユリウスさんが早瀬に頬ずりをした。すりすりと。さらに、ちゅと頬にキスまでしたのである。
「おい!」
早瀬が本気で嫌がっている。だが、ユリウスさんは満面の笑みだ。
「なに照れてるんだ。弟だろう?」
「公衆の面前だぞ!」
「愛情表現だ」
堂々と言い切る。店内の視線が集まっているが、本人は気にしない。月島さんは一歩後ろで、やれやれといった穏やかな笑みを浮かべている。
「お騒がせしてすみません」
低く落ち着いた声である。こちらに軽く会釈をした。さすが常識人である。そう思ったのも束の間、ユリウスさんの視線が、ふと横へ滑った。保木さんに目が止まった。
「……」
一秒。二秒。その時間を置いた後、胸に手を当てる仕草をした。そして、爽やかな笑顔を浮かべて、挨拶を始めたのである。声のトーンが一段上がっている。
「ユリウス・バーテスルです。裕理の兄です」
立ち姿が妙に華やかだ。保木さんが慌てて立ち上がる。
「は、はじめまして……」
すると、次の瞬間、ユリウスさんは保木さんの手を取った。
「素敵な方ですね」
そして、ちゅっと、手の甲にキスをした。これがユリウスさんの癖である。まるでカズさんのように、気に入った男に出会うと、こんなことをするのである。保木さんは完全に固まっている。そこで、早瀬が即座にユリウスさんの襟元を引っ張った。
「なんで初対面でそうなるんだ」
「癖だ」
「直せ」
早瀬が呆れ顔になった。すると、カズさんが腕を組み、感心したように頷いた。
「僕と同じ匂いがするね」
「嬉しくない共通点だ」
ユリウスさんの返事に、俺は頭を抱えた。保木さんは真っ赤だ。どう反応していいかわからない顔で立ち尽くしている。そこで、静かに一歩前へ出たのが高野さんだった。
「ユリウスさん、保木さんは今日大変だったんです。少し休ませてあげてください」
やわらかい声と穏やかな視線だ。空気がすっと落ち着く。ユリウスさんが、はっとして手を離した。
「それは失礼した」
素直に引くあたり、根は悪くない。保木さんが高野さんを見た。その瞬間、ほんのり頬が赤く染まった。
「……ありがとうございます」
小さな声だ。お互いに視線が合って、すぐ逸らした。すると、高野さんはにこりと笑った。
「どういたしまして」
「ふむふむ」
俺は内心で目を見開いた。さっきまで水端さんに守られていた保木さんが、今度は高野さんに視線を向けている。そこで、水端さんが微妙に固まった。カズさんがひそひそ声で言った。
「新しい三角関係かな?」
「やめろよーー」
俺は小声で返した。だが確かに、保木さんの視線は、明らかに高野さんに吸い寄せられている。高野さんも、いつもより少しだけ柔らかい表情だ。
どうしよう?もしかして、カップル成立だろうか。保木さんが高野さんに守られるようにして後ろに庇われている。高野さんには羽音さんがいるのだが、友達同士といった感じであり、咲には進まない二人のような気がしている。だから、今日は運命なのかもしれない。
「裕理!」
俺たちのことを見つけた瞬間、ユリウスさんの顔がぱあっと輝いた。そして、一直線に向かってくる。
「うわ、来た」
早瀬が小声でつぶやいた次の瞬間、ユリウスさんは彼の前に立ち、ためらいなく抱きついた。
「会いたかった!」
「ちょ、やめろ」
ユリウスさんが早瀬に頬ずりをした。すりすりと。さらに、ちゅと頬にキスまでしたのである。
「おい!」
早瀬が本気で嫌がっている。だが、ユリウスさんは満面の笑みだ。
「なに照れてるんだ。弟だろう?」
「公衆の面前だぞ!」
「愛情表現だ」
堂々と言い切る。店内の視線が集まっているが、本人は気にしない。月島さんは一歩後ろで、やれやれといった穏やかな笑みを浮かべている。
「お騒がせしてすみません」
低く落ち着いた声である。こちらに軽く会釈をした。さすが常識人である。そう思ったのも束の間、ユリウスさんの視線が、ふと横へ滑った。保木さんに目が止まった。
「……」
一秒。二秒。その時間を置いた後、胸に手を当てる仕草をした。そして、爽やかな笑顔を浮かべて、挨拶を始めたのである。声のトーンが一段上がっている。
「ユリウス・バーテスルです。裕理の兄です」
立ち姿が妙に華やかだ。保木さんが慌てて立ち上がる。
「は、はじめまして……」
すると、次の瞬間、ユリウスさんは保木さんの手を取った。
「素敵な方ですね」
そして、ちゅっと、手の甲にキスをした。これがユリウスさんの癖である。まるでカズさんのように、気に入った男に出会うと、こんなことをするのである。保木さんは完全に固まっている。そこで、早瀬が即座にユリウスさんの襟元を引っ張った。
「なんで初対面でそうなるんだ」
「癖だ」
「直せ」
早瀬が呆れ顔になった。すると、カズさんが腕を組み、感心したように頷いた。
「僕と同じ匂いがするね」
「嬉しくない共通点だ」
ユリウスさんの返事に、俺は頭を抱えた。保木さんは真っ赤だ。どう反応していいかわからない顔で立ち尽くしている。そこで、静かに一歩前へ出たのが高野さんだった。
「ユリウスさん、保木さんは今日大変だったんです。少し休ませてあげてください」
やわらかい声と穏やかな視線だ。空気がすっと落ち着く。ユリウスさんが、はっとして手を離した。
「それは失礼した」
素直に引くあたり、根は悪くない。保木さんが高野さんを見た。その瞬間、ほんのり頬が赤く染まった。
「……ありがとうございます」
小さな声だ。お互いに視線が合って、すぐ逸らした。すると、高野さんはにこりと笑った。
「どういたしまして」
「ふむふむ」
俺は内心で目を見開いた。さっきまで水端さんに守られていた保木さんが、今度は高野さんに視線を向けている。そこで、水端さんが微妙に固まった。カズさんがひそひそ声で言った。
「新しい三角関係かな?」
「やめろよーー」
俺は小声で返した。だが確かに、保木さんの視線は、明らかに高野さんに吸い寄せられている。高野さんも、いつもより少しだけ柔らかい表情だ。
どうしよう?もしかして、カップル成立だろうか。保木さんが高野さんに守られるようにして後ろに庇われている。高野さんには羽音さんがいるのだが、友達同士といった感じであり、咲には進まない二人のような気がしている。だから、今日は運命なのかもしれない。
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