海のそばの音楽少年~あの日のキミ

夏目奈緖

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 ガーー、ザーー。

 タクシーに乗って帰っているところだ。途中で渋滞が起きていた。対向車線はスムーズに通り過ぎているから、こっちで何か起きたのだろう。

「事故があったのかあ?」
「いや、流れているからな」
「……お急ぎですよね?少々遠回りになりますが、迂回しましょうか?」
「いえ、すぐに流れるでしょう」

 ほんの数分で、こっちの車線がスムーズに流れ始めた。どうして分かったのだろう?向こうまで見えないのに。

「どうして分かったの?」
「運転を長くしているからだよ」
「俺も運転してみたいよ」
「やめておいた方がいい。俺が運転できる。……金曜日に食事に行かないか?夏樹君と出かける予定なのは知っているけど」
「いいよ、行こう。夕方には帰って来るし」
 
 金曜日は夏樹と誕生日プレゼントを買いに行く予定だ。早瀬は来月7日、黒崎さんは10日が誕生日だ。ちょうどいいから、一緒に行くことにした。しかし、早瀬には詳しいことを言っていない。大学が休講だから、温泉施設と買い物に行くとだけ伝えている。

「裕理さんの昇進祝いがあるよね?11月30日だよね?」
「ああ。そうだ。金曜日に行きたい店があるんだ。食事の前に寄りたい」
「うん、いいよ。何を買うの?」
「身に着けるものだ。それしか言えない」
「気になるよー」
「行けば分かる」
「あ……」

 頭を抱き寄せられて、早瀬の肩にもたれ掛かった。ふと、車酔いをしていないことに気づいた。短時間でも酔っていたのに、早瀬の運転ではそうならない。黒崎社長の車でも、このタクシーでも酔っていない。自分の変化を感じた。
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