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ダイニングテーブルのそばへ行くと、グラタン以外にも美味しそうな匂いが漂っていた。玉ねぎスープ、野菜のマリネ、ささ身を煮込んだものが並んでいる。あっさりとした料理は、今の自分が食べたいと思っているものだった。
カタ……。
椅子に座った。早瀬が来るまでソワソワして待っていると、わざと来てもらえなかった。何度目かの催促で、やっと来てくれた。意地悪なのか面白い人なのか、分からなくなる。
「いただきまーす」
「いただきます」
「はふーっ、おいひい……」
「……カボチャグラタン、自信作だ。いつもよりクリーミーだろう」
「うん。どうして?ミルクの味も濃厚だよ。何か変えた?」
「生クリームを変えたし、他にも細かいところで手を加えた」
「こだわりのグラタンだね。俺も作れるようになるよ。最終目標はビーフシチューだよ」
「何年先になるやら」
「20年先かも?」
「追いつかれないように腕を磨くとするか」
「うん……」
なに気なく嬉しいことを言われた。ずっと一緒にいてもらえるということだ。照れくさい空気が漂ってきたところで、早瀬がいじめっ子の顔になった。
「悠人君の味噌汁は美味しいよ。ワカメ増量、ネギも大きめで」
「いじめっ子になってるよ?そんなにマズい?」
「マジで美味しい。自信を持て。写真にも残してある。成長の証をアルバムにしている」
「やめろよーっ」
「ワカメがふやけていた時は嬉しかった。硬かったからなあ」
「褒めてないじゃん」
「褒めているよ。カボチャが付いている。じっとしていろ」
「ひいいいっ」
口元を舐められた。びっくりして声をあげると、もっとやってやると言い返されて、頬を両手で固定されてしまった。そして、近づいて来た顔が傾いて、口元に触れた。さらに舐められるのを覚悟していると、下唇に軽く噛みつかれた。
「げえええっ」
「美味しそうなものがあった」
「もうっ。風邪がうつるだろ?」
「はははーー。うつせば早く治るよ」
「ああ言えば、こう言う!」
「たまには口合戦に勝ってみろ。けっこう強くなってきたぞ?」
「うんっ」
かぼちゃグラタンを食べて落ち着いた。何を話そうかと思い浮かべた後、ディベートの授業の結果を話すことにした。最近は大学のことを話題を出していない。そういう時間が持てなかったからだ。
「あのさ。ディベートの授業があったんだけど。高評価をもらったよ」
「すごいじゃないか。喧嘩になる生徒がいるらしいな?」
「うん。減ってきたけどね。夏樹がイジメるから、誰も相手になりたがらないんだ。だから俺が相手になってる」
「イジメないだろう?淡々としているからか?」
「さすが、よく分かるね。あの子は相手がどんな反応をしても、流されないんだ。押し通すことはしてないし、主張も変えない。ずっと前なんか、相手が嫌なことを言ったんだよ。いつも冷静で上から目線だな。ムカつくって。夏樹、なんて答えたと思う?」
「……だからどうしたか?」
「うん。……そういう時間だろ。嫌ならやめろよで終わり。……本当に夏樹が言ったんだよ。人嫌いだったから、こうういう事が言えるってさ。カッコイいい!」
「そうやって、人のことを素直に認められる君もすごいよ。カッコいい男だ」
「へへへ……」
やっといい時間になった。どうも最近調子が悪い。大人としてどうだとかいう、ネガティブが発動している。深く考えなくてもいいのにと思いながら、野菜のマリネを食べた。
カタ……。
椅子に座った。早瀬が来るまでソワソワして待っていると、わざと来てもらえなかった。何度目かの催促で、やっと来てくれた。意地悪なのか面白い人なのか、分からなくなる。
「いただきまーす」
「いただきます」
「はふーっ、おいひい……」
「……カボチャグラタン、自信作だ。いつもよりクリーミーだろう」
「うん。どうして?ミルクの味も濃厚だよ。何か変えた?」
「生クリームを変えたし、他にも細かいところで手を加えた」
「こだわりのグラタンだね。俺も作れるようになるよ。最終目標はビーフシチューだよ」
「何年先になるやら」
「20年先かも?」
「追いつかれないように腕を磨くとするか」
「うん……」
なに気なく嬉しいことを言われた。ずっと一緒にいてもらえるということだ。照れくさい空気が漂ってきたところで、早瀬がいじめっ子の顔になった。
「悠人君の味噌汁は美味しいよ。ワカメ増量、ネギも大きめで」
「いじめっ子になってるよ?そんなにマズい?」
「マジで美味しい。自信を持て。写真にも残してある。成長の証をアルバムにしている」
「やめろよーっ」
「ワカメがふやけていた時は嬉しかった。硬かったからなあ」
「褒めてないじゃん」
「褒めているよ。カボチャが付いている。じっとしていろ」
「ひいいいっ」
口元を舐められた。びっくりして声をあげると、もっとやってやると言い返されて、頬を両手で固定されてしまった。そして、近づいて来た顔が傾いて、口元に触れた。さらに舐められるのを覚悟していると、下唇に軽く噛みつかれた。
「げえええっ」
「美味しそうなものがあった」
「もうっ。風邪がうつるだろ?」
「はははーー。うつせば早く治るよ」
「ああ言えば、こう言う!」
「たまには口合戦に勝ってみろ。けっこう強くなってきたぞ?」
「うんっ」
かぼちゃグラタンを食べて落ち着いた。何を話そうかと思い浮かべた後、ディベートの授業の結果を話すことにした。最近は大学のことを話題を出していない。そういう時間が持てなかったからだ。
「あのさ。ディベートの授業があったんだけど。高評価をもらったよ」
「すごいじゃないか。喧嘩になる生徒がいるらしいな?」
「うん。減ってきたけどね。夏樹がイジメるから、誰も相手になりたがらないんだ。だから俺が相手になってる」
「イジメないだろう?淡々としているからか?」
「さすが、よく分かるね。あの子は相手がどんな反応をしても、流されないんだ。押し通すことはしてないし、主張も変えない。ずっと前なんか、相手が嫌なことを言ったんだよ。いつも冷静で上から目線だな。ムカつくって。夏樹、なんて答えたと思う?」
「……だからどうしたか?」
「うん。……そういう時間だろ。嫌ならやめろよで終わり。……本当に夏樹が言ったんだよ。人嫌いだったから、こうういう事が言えるってさ。カッコイいい!」
「そうやって、人のことを素直に認められる君もすごいよ。カッコいい男だ」
「へへへ……」
やっといい時間になった。どうも最近調子が悪い。大人としてどうだとかいう、ネガティブが発動している。深く考えなくてもいいのにと思いながら、野菜のマリネを食べた。
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